友人とランチをした後向かったのはRED/THEATER。
昨年から観はじめたイキウメの公演を観るのが目的です。
(そのために1泊したんだもんね〜)
補助席も出ていましたし、席は満席の様子。(元々小さな劇場ですが)
 

プランクトンの踊り場「プランクトンの踊り場」赤坂RED/THEATER
6列目、13:05開演、15:05終演
脚本・演出:前川知大 
出演:浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、窪田道聡、安井順平、大窪人衛

【あらすじ】
東京から1時間ほどの場所にある金輪町。要は夫に嫌気が差して、実家のある金輪町に戻り、1ヶ月が経つ。離婚しか考えていなかった彼女だが、夫の滋が一向に会いに来ないことに腹を立てていた。ある日、要は町で滋らしき男の後姿を見つけ後を追う。そこで再開したのは荷物も財布も何も持たず、自分の住所すら知らない“滋”だった。




ふと気づいたのですが、前回観た時も同じBGMが開演前に
流れていたような・・・。新感線のJudas Priestみたいなもの?(笑)
今回は上手端の席ですが、小さな劇場だし観やすいわ、壁に
もたれて観られるわ、で、なかなか良席でございます♪



固定のセットは殆ど無く、背景に大きな回転扉があるだけ。
キャストが場面転換の際に椅子や机を並べ替える事で、
いろいろなシーンを表現していきます。うん、こういうの大好き♪
 

舞台が明るくなると、“ある場所”に縄をかけて、ご神体のように
する3人。でも会話の内容からこの石は造園業者から買ったもので
別に何かを祭っている訳ではないが、いわく付きの場所らしい。

その場所は「念じた、イメージした“情報”が実体を持って作り出される」
という不思議な場所。
「ここにシュークリームが入っている」と思い込んで袋を開ければ
シュークリームが入っている。「このジュースは冷えている」と信じて
受け取れば、信じた人にとっては“冷たいジュース”となる。
でもそれは“イメージ”でしかないので、どんなに食べても、栄養は
摂取できる訳ではない。
 

作られているのが“モノ”であれば良かったのに、「人がそこに居る」
と信じて話しかけたりすると、「その人」が現れてしまう。
つまり2人目。でもそれはオリジナルのコピーというわけではなくて
“作り出した人”が持つ記憶だけを抜き取った、分身のようなもの。
オリジナルと、2人目の記憶をあわせると、一人になるっていう事。

すげー発想ですよね、これ。

ドッペルゲンガー
の話かと思ったら、もっとぶっ飛んでた(笑)。
途中で頭がこんがらがりそうになってしまって。
「ここに居る貴方は、私が“こうあってほしい”と願った姿。
つまり、この人は私の願望なんだ」というくだり。
でもまたそこがウマイな、とも思うんです。
自分が作り出した「2人目」を通して、気づいていなかった
自分の気持ちに気づかされる。

だから、“オリジナルの滋”“二人目の滋”の印象は全く違う。
(3人目は短すぎて良く分からん)本来は同じ人なのにね。
それだけ人は多面性があると言う事なのか、相手によって
同じ人でも受ける印象が変わるものだと言いたいのか。

自分の記憶しかない夫と、自分の記憶が抜け落ちてしまった夫。
私は、自分を知らない夫が「貴方の事は知らないが、好きになる」
と言われたら、きっと許してしまうのかな、と思ったのです。
でも違った。というか、むしろ逆だったのが新鮮。
自分の事を知らない夫を見て、あんな風に愕然とするなんて。

一方で、とても“今風”な所もあるんですよね。
不必要な情報だけを持った「3人目」を人為的に作り出して、
その「3人目」を“消去”することで、記憶を調整しようとしたりする。
この発想は、昔の作家さんだったら、絶対に出てこない。

でもその“消去”の仕方については、意外な展開をみせるんですが。

安井さんのキャラがとにかくツボで、不気味なのか、面白いのか
頼りがいがあるのか無いのか、つかみ所が無い。
でもまたそれが、すごくいい感じ。

今回もまた、摩訶不思議で、でも“心”の部分は残っていて、そして
ハッピーエンド。2時間とは思えない充実感。そして低料金(笑)。
役者さんも皆さんお上手だし、とても満足できました。
ちょっとムリして1泊してでも観に行った甲斐は十分ありました。

イキウメは今後も観続けていきたいな〜。

ただ!芝居の中で「ドッペルゲンガー」が“誰でも知っている現象”
みたいな扱われ方をしていますが、あれはどうだろう(笑)?
なかなか知らない人の方が多いんじゃないのか??
(私は「そういうの、あった気がする」ぐらいに知っていた程度)