「ラ・マンチャの男」は今回で2度目です。
1度は名古屋で1ヶ月間のロングラン公演をしていた時。
まだまだ観劇なんか趣味にしていない頃で、「ゴールデンウィークには
なにも予定は無いので、舞台でも観てみようか」ぐらいの感覚でした。
その年に(別の舞台がきっかけですが)観劇にはまり、今に至る・・と。
あの頃のように漫然と観るのと、今ではどう違って観えるのだろうという
のも楽しみでした。

ラ・マンチャの男「ラ・マンチャの男」
帝国劇場 V列
13:00開演、15:45終演(セレモニー含)
演出:松本幸四郎  脚本:デール・ワッサーマン
出演:松本幸四郎、松たか子、駒田一、松本紀保、石鍋多加史、荒井洸子、祖父江進、福井貴一、上條恒彦
【あらすじ】 
16世紀の末、スペイン・セビリアの牢獄。作家・ミゲール・デ・セルバンテス(松本幸四郎)は教会を侮辱した罪で投獄される。泥棒や人殺しの罪をおった囚人達は新入りのセルバンテスをこづきまわす。騒ぎをききつけた牢名主(上條恒彦)は、牢獄内で裁判をやろうと言い出す。セルバンテスは自分が書いた「ドン・キホーテ」の脚本を、牢獄内で即興劇として演じ申し開きをすることを思い立つ。他の囚人たちに役をふりわけ、その物語に巻き込んでいく。


しかし、何といっても今日は幸四郎さんのお誕生日でもあり
1200回目の公演でもありますから、「どの席か」は問題ではなく
「観に行ければどこでもいい」。まあ実際にS席は取れなかったので
最後列から2列目という後方席からの観劇となりました。
でも、いいの。後ろだからこそ、染五郎さん御家族が会場に入ったり
出て行かれる所がガン観できましたから♪

幸四郎さんって、こういう方だったっけ?!
いやいや、前にも拝見した事があるんですけどね、気づいていなかった。
もしかしたら小さな劇場や映像で観ると、違う印象を受けるかもしれない
と思いますが、ドン・キホーテ(アロソン・キハーナ)の年齢や社会的な
地位などを考えたら、とてもピッタリくるゆったりした話し方、落ち着いた
立ち居振る舞いが本当にしっくり来るんですよ。
この役は若者より、歳をとるごとに味が出てくるんだなあ・・と実感。
でもキュートなところも随所にあって、サンチョが忠実に仕えるのは
何かちょっと分かる気がしました。

あと、以前拝見した時よりも松たか子さんが凄い迫力になってた!
前も歌が下手なわけじゃなかったけど、そんなに感動するほどでは
なかったんです。
というか、お上品さが抜けていないような感じだったので、アルドンサ
という役自体がしっくりきていなかったというか。
けどね、今回はすごく迫力があったんですよ。
松さんのアルドンサは迫力と痛々しさとか哀しさを備えた女性に
なっていてすごく良かったです。

紀保さんのアントニアは彼女のプライベートと重なるような部分もあって
(結婚を控えた女性って所がね。正確には“披露宴を控えた”だけど。)
会場も少し笑いが起きたりしたけど、舞台人としては好きな女優さん
なので、もっと拝見したいですね。

「一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生に、ただ折り合いを
つけてしまって、あるべき姿のために戦わないことだ。」

前も聞いたはずのセリフですが、今回はとても心に残りました。
キハーナ、というかドン・キホーテはセルバンテスの“こうありたい”
という理想なんでしょうね。
幸四郎さんご自身も、きっとこういうセリフに励まされて、この1200回
という舞台を迎えられたのではないかしら・・
等と、私も感慨にふけってしまったのでした。

以前もあんな感じのセットだったのかしら(記憶が曖昧)、名鉄ホールで。
大きな舞台だから、とてもあの階段が映えていました。
改めて拝見して、ちょっとこの「ラ・マンチャの男」は毛色が違う作品
なのかな、と思いました。
同じ作品でも随分受ける印象が変わっていてビックリ。
作品自体というよりも、観る私側の問題なのかしら?と思いますけど。