東銀座から駆け付けた池袋で観た2本目はこちら。
情報を知った時から観たかったんですよねー。

おのれナポレオン「おのれナポレオン」東京芸術劇場プレイハウス
14:00開演
作・演出:三谷幸喜
出演:野田秀樹、天海祐希、山本耕史、浅利陽介、今井朋彦、内野聖陽

【あらすじ】
ナポレオン・ボナパルト・・。 天才か、狂人か? 神か 悪魔か? 高潔な英雄か 人格破綻者か?…その存在のあまりの大きさゆえに、その人間性のあまりの幼さゆえに、あがめられ、畏れられ、愛され、憎まれた男、ナポレオン。 幽閉の地、大西洋の絶海の孤島セント・ヘレナ島での最期は、病死とも暗殺とも伝えられ、その死はいまだに謎に包まれている。 「おのれナポレオン」と殺意を胸に抱く者たち、「ナポレオンの名誉 L’honneur de Napoleon」をかけてその企てに立ち向かう者たち。そしてナポレオン自身が仕掛ける一世一代のたくらみとは…。



三谷さんの作品、平均した面白さがあるのは間違いないのですが、
正直ここのところ、私的に「これは!」と思う作品とは出会えてなくて。
なのに、チケットだけは取りづらいわで、もう三谷作品を追いかける
のは止めようかな・・と思っていたところでした。
実際にパスした作品もありましたし。
ちょっとキャスティングに癖もありますしね・・・。

それが野田さんが他人の書いた作品に純粋に俳優として出演する!?
天海姐さんもご出演だし、何気に好きな今井さんもご出演♪
話題先行なタレントの出演もない。・・・・それは観に行かねば。

まあ、この公演を観たいと思う人は私の他にも大勢いるという事は
容易に想像が出来たので、最初から平日狙いです。
(それでもハズれたりしたが)
今回仕事を休んでまで平日にやって来たのは、この舞台のため
と言っても過言ではありません。


劇場では古田新太さんをお見かけしました。目立ちますね(笑)。
古田さんの隣のお席の方も業界の方っぽかったのですが、横顔しか
拝見できなかったので、どなたなのかまでは分かりませんでした、残念。



久しぶりに「さすが三谷さん!」と言える作品でした。面白かった。
フランス学科出身で、かつフランス革命に興味があったので、
ナポレオンについては書籍等を読んである程度は知っていたので
私自身がテーマに馴染みやすかったのもありますけど。
言葉遊びの野田さんを意識してかの「おのれナポレオン」と発音が
似た「L’honneur de Napoleon(ナポレオンの名誉)」を
上手くひっかけたタイトルにも、座布団3枚!です。

三谷作品の特徴でもありますが、作品に出てくる登場人物は基本的に
実在の人物であり、出てくるエピソードは(通説も含まれますが)
ノンフィクションなんですよね。それを三谷さんの視点とアイデアを
上手く潜りこませて、一つの話にまとめるというのが、本当にうまく
噛み合い、面白いサスペンスとして成り立っていました。
ヒ素による暗殺疑惑については有名な話ですが、それ以外にも
ベートーベンとナポレオンの関係、セントヘレナ島に随行した
シャルル・トリスタン・ド・モントロンに財産を残したこと、そしてそれを
彼は使い果たしてしまった事、主治医の医療ミス疑い、ハドソン・ロウが
ナポレオンを“将軍”と呼び続け愚弄したことなど、よく調べてあるなあ
と思ってしまいました。
ただモントロンの奥さんのエピソードに関しては三谷さんの創作
かもしれませんね、そこは分かりませんでした。

ナポレオンの死後20年経ち、その死因を調べている人が、主治医
だったアントンマルキ(今井明彦)を訪ねると、ナポレオンの最後を
看取ったモントロン(山本耕史)を訪ねるように言われる。
ナポレオンの愛人だったアルヴィーヌ(天海祐希)を訪ね、そして
イギリス軍から派遣された将軍ハドソン・ロウ(内野聖陽)と訪ね
歩き、それぞれから当時の話を聞かされ、それを繋ぎあわせる
ことにより、ナポレオンの晩年と、その人となりを観客も一緒に
イメージを膨らませる。
お風呂好き、短気、負けず嫌いでプライドが高く、自己愛が強い。
戦術に長けて、先を読む力があり、実は冷静な目を持つ。
最初はナポレオンを野田さんが?と思ったのだけど、これがまた
ピッタリに思えてくるから凄い。

最後に訪ねたマルシャン(浅利陽介)の告白から、ナポレオンの
死因が今まで話していた「病死」か「暗殺」ではなく“第3の選択肢”
だった事、そして、その“第3の選択肢”に至るまでの過程が全て
仕組まれたものであったことが分かった時には、思わず膝を打つ
思いでした。三谷さん、こういう作品が観たかったのよーって(笑)。
それまで“ダメダメちゃん”オーラ全開だったナポレオンが急に
不気味で大きな存在に思えて来るんですよね。

天海さん、内野さん、山本さん等、他の舞台ならばそれぞれが
主役を務めるような方を贅沢に脇役に使っているのだけど、
皆さん個性が活きていて良かったですねえ。
天海さんのコメディっぽいやり取りも笑えます。「(背が)大きい!」と
野田さんに言われ「小さいのは向こうよ」って笑えるし(笑)。
天海さんは野田さんの舞台に出たのが一つのターニングポイント
だった、と言う話をされていたので、今回は感慨深かったでしょうね。
そして舞台上の華には目を奪われます。 山本君の軽い感じやら、
内野さんの情けない小者ぶりも良かったですね。
それにしても今井さんの声は素敵です♪

チケットが簡単には手に入りませんが、これならばリピ観したかった
なあ、と久しぶりに思う作品でした。
ライブビューイングに観に行くほどではないけど(笑)。
でも、DVDになったら買ってもいいな。
これでまたしばらく、三谷さんの作品を観よう!というモチベーションが
上がった1本となりました。