この作品、キャストも魅力的でしたが一番魅力的だったのは
脚本家の古沢良太さん。
舞台作品は「キサラギ」ぐらいしか拝見した事がありませんが、
「ALWAYS三丁目の夕日」、「外事警察」、「探偵はBARにいる」は
いずれも面白かったし、私は観ていないけど「リーガル・ハイ」も
評判良かったですから。

趣味の部屋「趣味の部屋」日本特殊陶業市民会館2列目
19時開演、21時20分終演
脚本:古沢良太   演出:行定勲
出演:中井貴一、戸次重幸、原幹恵、川平慈英、白井晃
【あらすじ】
内科医・天野は、多趣味が高じて患者にも趣味を持つことを勧め、気兼ねなくそれぞれの趣味が楽しめる男たちの“趣味の部屋”を用意する。そこへメンバーの1人が行方不明になったと婦警が聞き込みにやって来たところから話は動き出す・・・。



18:30開演だと勘違いし、仕事を終えて猛ダッシュで駆け付けると
まだ開場前。開演は19時でした(爆)。
まあ、間違いには違いないけど、この逆パターンじゃなくて良かった。

これは中井貴一さんが古沢さんに自ら脚本を依頼して実現した
作品なんだそうで。評判も良い舞台なので楽しみにしていました。

当日は、何だかチケットの発券トラブルか何かがあったようで
(髑髏城の七人の初日を思い出した・・)席の番号が、20番の隣が
突然34番になっていたりするし(上から紙が貼ってあった)
係の人が大勢いて、席の案内をしていたりして、何だか不穏な
雰囲気。結局何があったのか詳細は分かりませんでしたが、
無事定刻で開演。お席は2階席も含めてほぼ埋まっていたようです。


どうやらワンシチュエーションものの舞台のようですが、舞台上には
下手に大きな本棚があり本が沢山並んでおり、上手にはガンプラが
並び、床にはガンプラの箱が積み上げられています。
ははあ・・・“読書”と“ガンプラ”が趣味の人の話なのかな?
その中で、どうしても目を引く1体のガンプラ。
私の気のせいなのかな?と思ったけど、スポットライトも当たっている
ようだし、何か意味があるのかしら・・・・・と思っていると、開演。
(→これが結構意味があったりしたのよね♪)

どうやらこの部屋は、男たちが自分の趣味を楽しむための所で、
古書好き、料理好き、ガンプラ好きが集まっているらしい。
ただ1名は趣味と言えるものが無くて、もがいているらしい事が
皆の会話の中で分かってきます。
のんびりした雰囲気で、笑いも沢山ある中で突然湧いて出てくる
“殺人”やら犯人捜し。

何なんだ、この唐突感は?
婦警が一人で聞き込みに来たりなんかする?
等と小さな疑問は数多くあれど、誰が犯人なんだ?を考えるのに
夢中になって、細かいことは気にならなくなってきます。
「こういうのって、怪しくなさそうな人が一番怪しいって言うし」
と思っていたら、もれなく全員に容疑がかかり、そして全員が無実
だと主張しあう事に。でもどの人の“言い訳”もそれなりに論理的で
嘘くさくない。「もしかして・・・」と思うと、話は思わぬ展開へ。
誰かを追い詰める時には照明を落として“わざとらしいほど”の
不気味感を演出しています。
でもこれ中井さんの演技の素晴らしさもあって成り立っていますよね、
二つの人格が本当に存在するかのような感じでしたもん。
ていうか、結構マジで怖かったし。

「ああ、面白かったな。PARCOでよくある感じの舞台だな」と思って
いたんですが、一同が部屋を出て、部屋の電気が消された時に、
ふと気づいたんです。
「大阪では“フライング拍手”が起きたって聞いたぞ。」
それって、この場面?て事はこれはエンディングじゃないの?
なんて思っていたら、舞台上に戻ってくるキャスト達。
(名古屋ではフライング拍手はありませんでした)

それで、最後のどんでん返しの種明かしがある訳ですが、本当に
良くできた脚本です。
私が冒頭に感じた唐突さも、婦警の事も、その他もろもろの細かい
ことは、みんな意味があって、最後にきちんと1つの線に繋がる。
こういう伏線がカチっとハマる時って気持ちいいです。
そして最後の最後の中井さんの不気味なセリフもまたスパイスが
効いていて良かった〜♪

役者のみなさんも達者な方ばかりなので、安心して楽しめて。
白井さんのガンダム好きは「マジでガンダム好きですか?」と思うほど。
それにしてもガンダムのセリフで客席盛り上がり過ぎ(笑)。
なに、みんなすぐにガンダムのセリフって分かったりするの?
慈英さんのウザい感じもいい塩梅だし、戸次さんもよく笑わせて
くれました♪ 
私自身、今は割と多趣味な方なのですが、過去には全く趣味の無い
頃もありまして、戸次さんの「何か打ち込める趣味が欲しい」というのも
あながちオーバーじゃないって思うんですよね。
大昔に付き合っていた男も、趣味が全くなくて「なんとかしたい」
ってよく言ってましたから。(と言う割に何も行動しないヤツだったが)
今の“リア充”自慢の世の中に対するちょっとした嫌味のような
気にもなったりしました。

終わった後に素直に「面白かった〜♪」と言える舞台で、平日の
仕事の後に観に来たことをすっかり忘れさせてくれました。
カーテンコールでは、中井さんから簡単なご挨拶が。
今回の公演で、名古屋が初めて2階席のある会場だったそうです。
「見えちゃいけないものが見えないか心配だった」
なんておっしゃっていましたけど、「大丈夫でした」とのこと。
いやー、面白かったです♪
「キサラギ」みたいに映画化しても面白いかもしれませんね〜。