コクーンで“盲導犬”を観た後、一緒に観たKさんと代官山へ。
そこでお茶して、名古屋から来た友人と合流です。
そして3人で向かったのは、三軒茶屋。
今回東横線の駅が新しくなって初めて利用しましたが、
駅がJR側からは遠くなりましたねぇ・・。

ドレッサー「ドレッサー」世田谷パブリックシアター1列目
19:00開演

作:ロナルド・ハーウッド  演出:三谷幸喜
出演:橋爪功、大泉洋、秋山菜津子、平岩紙、梶原善、銀粉蝶、浅野和之、本多遼、長友郁真

【あらすじ】
第2次世界大戦下の英国。とあるシェイクスピア劇団の楽屋では、「サー」と呼ばれる老座長(橋爪功)が、折からの空襲と戦時下の心労で心神喪失気味…。座長夫人(秋山菜津子)やベテラン舞台監督(銀粉蝶)が公演中止を主張する中、長年「サー」に献身的に仕えてきた付き人・ノーマン(大泉洋)は、今夜の演目「リア王」を何とか開幕させようと奮闘するのだが…。


SISカンパニーの舞台は基本的にどれも面白そうなんですが
このキャストだもの、そりゃ観たいです。
そしてこの作品を書かれたのはロナルド・ハーウッド。同氏の
テイキングサイド〜ヒトラーに翻弄された指揮者が裁かれる日〜
も面白かったですし、「三谷さんが脚本を書いていない」という点に
惹かれまして(笑)。
決して三谷さんの脚本が嫌いと言う訳じゃないのですが、
作品に波があって、ここ数年は私的ハズレ・・というか、私的には
“アタリではない”作品の確立が高かったのですが
(「おのれナポレオン」は久々に私的“アタリ”でした)
彼の演出で“ハズレた”と思う事はあまりないのですよね。
世の中には三谷シンパが多いので、こういう事を書くと反感を
買いそうですが(笑)。

私は脚本家としてよりも、演出家としての三谷さんのほうが
好きなのかもしれないなあ、と最近思ったりしています。
 

これ、代官山で食べたケーキです♪
ゆずのケーキ 








「ル・コルドンブルー」のカフェで頂いた、ゆずのケーキ。
基本はチョコレートのムースなんですが、ほんのり柚子の香り♪

原作のロナルド・ハーウッド氏自身が有名なシェイクスピア俳優の
付き人(ドレッサー)をしていた事があるそうで、その頃の経験が
この作品のベースにあるんだろうな、というのは想像に難くありません。
演劇好きな私から見れば、こういうバックステージものって題材として
面白いですしね。

役者は何名も居ますが、基本的には座長と、付き人・衣装係
(ドレッサー)の二人で進行していくお話です。
ある日、街中で奇行を起こして病院に担ぎ込まれた座長(橋爪功)。
劇場に戻っては来たものの、あの言動はどこからどう見ても
かなり重度のうつ状態。もうそれが痛々しいほどリアルで、
メンタルヘルスについて勉強していた事のある私にとっては
観るのが辛くなるほどで。それだけ橋爪さんが凄いんですよ。
でも舞台衣装に着替えていくと、視線も態度も言動も、
纏う雰囲気すらまったく変わってしまう。
劇団を背負うという責任だけでなく、戦争という非常時が座長の
心をすり減らしていったであろう様子が痛々しい。
そんな中でも「満員御礼ですよ」という言葉には反応したり・・
と言う所に、演劇人の本能を見た気もします。

長年の付き合いで、座長の事を知り抜いているし、座長からも
信頼されているという自負のあるノーマンは初見の大泉さん。
これだけ舞台を観ていても、今まで機会が無くてやっと拝見。
(ベッジ・パードンはチケットは取っていたものの、諸事情で断念していたのでした)
観客の心をつかむ能力や、飄々とした雰囲気は天才的ですね。
ただこれが良いのか悪いのかは微妙・・と思ったりもする。
確かに長台詞も素晴らしいし、セリフの“間”も素晴らしいけど
「ノーマンを演じている大泉洋」に見えてしまって。
まったく不満はないのだけど、意外性は無かったかなあ。
でも2幕の最後はとても良かったです。最前列だったので
ベッドに寄りかかって見上げた目からツーっと涙が流れていた
のが見えました。

これ、原作からかなり三谷さんが手を加えてしまっているそうで、
三谷版「ドレッサー」になっているようですね。
原作では座長がとにかく“嫌な奴”だそうだけど、この作品では
かわいらしいというか、キュートだったりするので、既に作品の
方向としては全く違っちゃっているというか。
とはいえ、オリジナルを観た訳でも、オリジナルのファンという
訳でも無いので、そこに対しての意見はないのですが・・・・。

ただ、座長がキュートだったがゆえに、ノーマンの座長に対する
気持ちが分かりづらいという側面はあったかも?
あんなに尽くしたのに、感謝の一言もない、食事をごちそうして
くれた事も無い。それに対する怒りなのか、そうは言いながら
あの座長の可愛らしさに「仕方ない」と愛おしく思ったり
「尽くす相手が居なくなって寂しい」という虚無感を感じているのか
あるいは敢えてそうしていて、全部含まれるのか・・・。
前半は怒り、そののち虚無感、って感じでしょうか。
オリジナルを観ていないのでわかりませんが、ノーマンだけでなく
奥さんなど彼の近くに居た人にも何も書き残さなかった座長。
「言わなくても、本当に理解している人には分かる、伝わる」
という日本的な情緒が感じられました。

2幕の前半は少し冗長なんでは?とか、梶原さんや浅野さん、
秋山さんの使い方がぜいたくすぎませんか(笑)?
(というかイマイチ彼らの良さが活きていない)とか思う所は
ありますけど、充実した舞台だったと思います。
出番は多くは無くても、他の役者さん達も皆さん素敵でしたし。
紙ちゃんの可愛らしさと、したたかな感じも良かったなあ。

この舞台を観て橋爪さんの「リア王」が観てみたくなっちゃいました。
今回のキャストの皆さん、実力のある方ばかりだから、
このメンバーで「リア王」出来ちゃうような気がするんですけど。

リア王・・橋爪さん、コーディリア・・紙ちゃん、
ゴネリルとリーガン・・秋山さんと銀粉蝶さん、ケント伯・・浅野さん
エドマンド・・善ちゃん、エドガー・・大泉さん(イメージ違う?)

どうかしら。割とイケてる感じがするんだけど(笑)。