チケットを取るか取るまいか悩みまくったこの公演ですが、
実は結構楽しみだったのです♪ なんかいい予感がするというか。

船に乗れ交響劇「船に乗れ!」千秋楽 東急シアターオーブ19列
13:00開演、16:10終演
原作:藤谷治  脚本:鈴木哲也 演出・作詞:菅野こうめい
出演:山崎育三郎、福井晶一、小川真奈、平方元基、谷口ゆうな、松岡卓弥、加藤雅美、 入野自由、輝馬、前山剛久、木内健人、西岡優妃、吉田萌美、金沢映子、加藤虎ノ介、田中麗奈、木の実ナナ、小野武彦、東邦音楽大学管弦楽団

【あらすじ】
裕福な音楽一家に生まれた津島サトルは、幼い頃からチェロを学び、芸高を受験するも失敗。不本意ながらも新生学園大学附属高校音楽科に進む。
大好きな哲学書を読み漁り、ヴァイオリン専攻の南枝里子に恋をする。しかしドイツへの短期留学をきっかけに、二人の仲に亀裂が入ってしまう。そして、帰国したサトルには、受け入れ難い真実が待っていた…。


狙っていたわけではなく、ここでしか行けなかったのですが千秋楽でした。
出掛ける前日公式HPを見たら「山崎育三郎ハイタッチ&お見送り会」が
急遽開催される事になったとのこと。・・・これ、行けるじゃん私。
トークショーも基本的にはチケットが売れづらい日に開催されるものなので
土日狙いの私はまずこういったイベントに遭遇する事が無くて。

終演後、千秋楽のご挨拶などもあった後、2階ホワイエへ・・・。
出口に近いお席だったので、かなり先頭集団に入る事が出来ました。
2階ホワイエ
人・人・人・・・(笑)。みんな大人しく待ってます。男性も混じってました。
ここで待つ事10分〜15分ぐらい。育三郎君がTシャツ姿で登場!
(ちょうどバーカウンターの前あたり)
制服姿が良かったのにな〜なんて思いながらも、順番にハイタッチ♪
握手よりは回転が速いですよね(笑)。

ちゃんと一人ずつ顔を見て「ありがとうございます」って言ってくれたよ(笑)
至近距離で見てもイケメンでした(爆)。
育三郎君の大ファンって訳じゃないけど、テンション上がります♪ 
先頭集団だったので、ハイタッチ開始後5分ぐらいで順番が回ってきて
待つ時間が短くて済んだのも助かりました。
だって、この行列は1階まで続いており、最後まで到達する迄はとても
待てないスケジュールだったので。(次は観劇の為に池袋へ移動)

ま、そんな嬉しい出来事もありましたが、舞台の感想は追記にて。
あんなにチケット取るのに迷ったけど、結論から言うと「取って良かった」。
とても文学的な香りのする作品で、かなり気に入った1本です。
興味のあるかたはこちら↓。




舞台上には白い交差した通路のようなものがあり、オーケストラがスタンバイ。
今回はオケピではなくて、オケはステージ上なんですね。
開演の合図はブザーでも鐘の音でもなく、チャイムの音です。
“伴奏”というよりは、オケ自体も裏のキャストというような位置づけ。

キャストが楽器を演奏するシーンでは、オケの人がそのキャストの分身を
演じるように、演奏を受け持ちます。
“交響劇”と言うだけあって、劇中にはクラッシク音楽も多く使われますが
単純に楽器の演奏ではなく、クラッシックの音楽に歌詞が乗せられていて
それもまた自然でした。
育三郎クン自身が音楽一家の出身かどうかは存じ上げませんが、
サトルと同じように音大付属高校に進学、副科ではピアノを専攻する等
(サトルがピアノを弾くシーンは育三郎クン自身が弾いていました)
主人公のサトルと非常に重なる部分も多い作品だっただろうなあ・・と思います。


45歳のサトル(福井晶一)が肩にかけた楽器を床に置きながら
「30年以上ぶりにチェロを手にした」、と語り始めます。
孤独のようなものを纏わせた福井さん。歌も素敵ですがセリフの声も
通って本当に素敵。そして回想シーンが始まります。

音楽一家で裕福な家庭に育ったサトル(山崎育三郎)。
自分の意思というより「ウチにはチェロ弾きが居ないから、やらせたらどうだ」
という祖父の一言でチェロをはじめたものの、国立の藝術大学付属高校の
受験に失敗。祖父の経営する“三流”の音大付属高校に不本意ながら
入学する・・という春へ時は飛びます。

自分は本当はこんな場所にいるような人間じゃない、という根拠の無い
自信と過度の自意識を持っていたサトルが、高校生活を送る中で
そんな中にも一目おくべき仲間が居る、とか好きな同級生が出来て
「それなりに楽しめる」ようになっていくという過程が自然でした。
一方で音楽学校に来るような生徒だからこそ持つ競争心や自他を順位づけ
するような習慣、将来に持つ夢の大きさ、与えられるチャンスの不平等さや
恋愛感情よりも優先してしまうライバル心、というのが新鮮に感じます。


育三郎クンはビジュアルや歌はスイートな方ですが、StarSで色々と
拝見するにつけ、実は結構冷静だったり、男っぽい骨のある人なんだ、
と思っていたので、こういう“苦悩する”とか“理屈っぽい”役も非常に良かった。
「何で人を殺してはいけないんですか」
サトルが授業中に言い出すシーンは、育三郎自身がそう思ってるの?
と感じる程でした。「セリフのある舞台」で拝見するのは多分初めてですが、
セリフの部分も全く違和感が無くてよかったです。


そして密かに不安だった育三郎クンの歌。
もちろん、お上手なのは間違いないのですが、先日レミゼを観たとき
甘ったるく歌うマリウスに正直、抵抗感を感じてしまっていたのですよね。
でも今回はそういった印象もなく、素直に聞くことが出来ました。
あれは“マリウス仕様”だった、ってことなのかなあ?


そして45歳のサトルを演じた福井さん。
福井さんの回想シーンがメインなので、あくまでストーリーテラー。
高校生のサトルを見守りますが、思わず「やめろ!」と過去の自分を
止めようとするシーンがあります。つまり、サトルの後悔ですね。
誰にも学生時代に「ああすればよかった」と思う事や、人を傷つけた事の
1つや2つはあるでしょうから、観ていてほろ苦いシーンでもあります。
45歳のサトルをみて、高校生のサトルの今後を想像するのも面白かったな。
本当に才能が無かったの?チェロを本当に止めたいと思ったの?
止めたことで後悔しなかった?どうやって音楽の無い生活に折り合い
をつけて大人になったの?と想像が尽きません。

元教師の金窪がサトルに言う「船に乗れ!」から始まるセリフは
なかなか心に響きました。

人生という海に、船に乗って漕ぎださなければならない
船酔いもするだろうが、いつかは船酔いも治まるだろう。
でもそれは海の波が止まったからではない。
人生にはいろんなことが立て続けに起こるだろうが、一旦はそれに
飲み込まれても、立ち直る事ができるようになるのだから。
そして、人生はそれの繰り返しなのだから・・って感じかな。

モラトリアム世代がアイデンティティを確立していく過程を、
ロールバックして見る作品。
青春モノだけど、爽やかさよりも、ヒリヒリしたり、ほろ苦さを感じる。
それが“文学的”という印象に繋がっているのでしょう。

でも別に重苦しいだけでもなかったんですよ。
後半で3年生だけのミニコンサートの練習シーンで、谷口ゆうなちゃんが
出した声が大きすぎたらしく、隣にいた平方君が耳を押さえていて
思わず会場に(笑)が・・♪(ゆうなちゃん、いい味出してて良かった♪)
また平方君も大声出し返してたりして、笑わせてくれました。
ゆうなちゃんと、育三郎君のやり取りも微笑ましかったし、キャストの
仲の良さが高校生の同級生という雰囲気にも活かされていましたね。

いや〜、やっぱり「観てみたいな」という気持ちに素直に従ってよかった!
という1本でございました。