これは上演が決まった時から楽しみだった1本です。
観劇歴の浅い私はオンシアター自由劇場をリアルタイムでは
観た事が無いのですが、「上海バンスキング」が面白かったし
CDまで買っちゃってますから、当然期待するでしょ♪

もっと泣いてよフラッパー「もっと泣いてよフラッパー」シアターコクーン8列目
18:30開演、21:55終演
作・演出・美術・衣裳:串田和美 音楽監督・編曲:ダージリン(佐橋佳幸/Dr.kyOn) 

出演:松たか子、松尾スズキ、秋山菜津子、りょう、大東駿介、鈴木蘭々、太田緑ロランス、大森博史、真那胡敬二、小西康久、酒向芳、内田紳一郎、片岡正二郎、串田和美、片岡亀蔵、石丸幹二 ほか 
【あらすじ】
1920年代の空想のシカゴで繰り広げられる、音楽、頽廃の香りが漂うフラッパー達の蠱惑的な唄と踊り、夢のように展開していく色鮮やかな場面、そしてほのかに苦い後味・・・。クラブの踊り子、落ち目のギャング、八百長ボクサー、異国の皇太子らそれぞれの恋物語をキャバレーショウのように散りばめる。



キャストもすごく素敵。
松たか子さんを拝見するのは久しぶりで楽しみだし、
何となく「十二夜」を思い出させる顔ぶれで。
今回音楽を担当されるのは、松さんのご主人なんですね。

ちなみに「フラッパー」とは、ひな鳥が羽を羽ばたかせて(flap)
飛び立つ訓練をしている様子を意味し、そこから転じて
未成熟な若い女性を表すスラングとなったとか。

具体的にはひざ丈の短いスカート、ショートヘアのボブカット、
ジャズ音楽などを好み、濃いメイクアップで強い酒を飲み・・・
以前までの女性に求められてきた規範に縛られない自由で
積極的に生きる女性・・・・って所かと。(wikipediaによると。)

“はすっぱ”という言葉が使われたりもするようですが、
舞台を観て、もっと生命力に溢れたイメージを持ちました。



まるでおもちゃ箱のような、おとぎ話のような舞台でした。
バンドが良いですよね。「ラ・リベルテ」のバンド。
串田さんも、石丸さんも参加されていましたが、お二人とも
ガチで演奏がお上手ですからね。とにかくみなさん楽しそうでしたし。

ただ、ネズミの話が延々と続いたりしたときには
「・・・・私は何の舞台を観に来たんだ?」
と思わず思ってしまったり。
そういう“何でもアリ感”を楽しむ作品なんだろう、とは思いますが
あまり得意じゃない構成でした、はい。

かといって、苦手な舞台だったか?と言われるとそうでもなく・・。
単純に華やかで観ていて楽しい。
フラッパー達の衣装もカラフルで可愛い(松さん、着替えは6回とか)。
そして、登場人物にリアリティが無いのも面白い。

まず松尾スズキ演じるギャングのアスピリン。(セリフ嚙みすぎ。)
ちっとも怖く無いし(笑)。嘘みたいに簡単に死んじゃう。
やっと一目ぼれしたフラポー(鈴木蘭々)に告白されたのに。
そして、フラポーの元婚約者だった新聞記者のベンジャミンを
演じるのは石丸幹二さんで、ミュージカルスターをデフォルメした
KYな歌い方がまたウソくさくていいアクセントに(笑)。

やっと幸せになれる相手を見つけて店を出たキリー(りょう)
なのに、たまたま反政府デモの行列に並んじゃって連行され
ギャング時代の罪で相手は投獄、また店に舞い戻って来る。

コミ帝国の皇太子(片岡亀蔵)から好意を寄せられ、
いつもは相手にしなかったのに、自殺されて自分の気持ちに
気づくサラ(秋山菜津子)。
この皇太子の浮世離れした人の良さもまたポイント高し。

ジル(松たか子)も恋人のボクサーのクリンチ・チャーリー
(大東駿介)がイカサマはしない、と臨んだ試合で死んで
しまったらしい。その後、二人で逃げる約束だったのに。

そんな、上手くいかない事ばかりの人が「なんとかなるさ」とでも
言わんばかりに、明るく「もっと泣いてよフラッパー」と歌う。
そんなジルの手には、クリンチ・チャーリーが愛用していた
ライターが。
とにかく耳に残るメロディラインに、松さんの透き通る歌声、
そして華やかな衣装。切ないシーンなのに、湿っぽくない。
むしろ生命力を感じる程でした。
辛い事があっても、やっぱり生きていかなきゃいけないのよ、
と言っているかのようにも感じます。

最後の1曲で「ああ、観て良かった」と思わせるような
そんな力のあるエンディングでしたねー。

松さんも素晴らしかったですが、秋山菜津子さんも衣装も
雰囲気もピッタリで良かったです。(ネズミ姿には驚いたけど!)
ロランスちゃんも頑張ってたし、悪くはないのだけど、
まだ少し印象に残る程ではないのよね、もう一息。


この日は、井上芳雄君が観に来ていました。
開演前、一度席に着き、ロビーに出ようと歩いていて、
ふと顔をあげたら前に井上王子が座っているのに気づき、
思わず「うおっ」と声を出してしまいそうでした(笑)。
いやー、普段着姿の芳雄王子はとても爽やかでカッコ良かった!
この舞台を観に来た満足感が2割増しになりましたよ(笑)。