大好きな舞台です。2006年に田畑智子×石原さとみVer.と、
2009年に鈴木杏×高畑充希Ver.でも観ています。それ以前も
3年ごとにコンスタントに再演をしていたのに、最近はパッタリ
再演が途絶えているなあ・・と思っていた矢先。
名古屋公演を期待していましたが、無さそうなので遠征決定です。

奇跡の人「奇跡の人」天王洲銀河劇場 A列
12:30開演、15:45終演
演出:森新太郎
出演:木南晴夏、高畑充希、馬渕英俚可、白石隼也、平田敦子、北川勝博、青山伊津美、梅沢昌代、立川三貴、上地春奈、鈴木崇乃、染谷麻衣、畑山菜摘、宝井ひなの/山田メリノ(Wキャスト)
【あらすじ】
1882年、アメリカ南部のアラバマ州。元軍人のアーサー・ケラー(立川三貴)と、その後妻ケート(馬渕英俚可)の子・ヘレン(高畑充希)は、一歳半のときに熱病がもとで聴力と視力を失ってしまう。5年後、甘やかされて育ち、わがまま放題にふるまうヘレンに手を焼くケラー家に、20歳の家庭教師アニー・サリヴァン(木南晴夏)がやってくる。受け入れようとしないヘレンに、アニーは服従を迫る。それは二人の長い闘いの始まりだった。


今までは鈴木裕美さんの演出。今回は森新太郎さん。
観るまでは森さんが「奇跡の人」の演出?というのがピンと来なくて。

注意書き
今回は最前列のセンターよりもやや下手側。
今までは上手に“井戸”がありましたが、今回は下手。
ということで、こんな注意書きなんですね。






本当にいろんな意味で「全然違う舞台」になっていました。

まず、セットが全然違う。
今までは2階建てのセットだったのですが、ドアのたくさんついた
壁に囲まれたただの部屋で下手には井戸があるだけ。
今までは、サリバン先生がパーキンス盲学校で送った生活と
そこの生徒たちとの別れに、結構時間が割かれていたのですが
(内容が削られていた訳では無いけど)割とさらっと過ぎていきます。
まずここで一発泣いていたんだけどな、私(笑)。

あと、今までは本物の犬(ゴールデンレトリバー)が出てきていた
のですが、今回は犬のパペットでした。
でもこれが本当に、本当にすごかった。プロが動かすとこんなに凄いの?!
自宅でゴールデンレトリバーを飼っているので、動きは見慣れていますが
そんな私が観ても、生きているように思えるほどのリアル感。
そうそう、こういう時にはこういう動きをするのよ!がドンピシャで
当然表情は固定なのに、犬に表情があるかのように思える。
パペットだという事を忘れて見入ってました。
(本物は可愛いんだけど、「ちゃんとおりこうにしてるかな」って心配になっちゃって。)

でも、ヘレンの我が儘っぷりは相変わらず。彼女の動きは
動物的ですらあります。
食事でのサリバン先生との格闘シーンでは、思わず客席から
笑いが起きたりするほどで。まさに「ガラスの仮面」の世界です(笑)。
でもヘレンはちゃんと反応してるんですよね。母親が居ないと気付く瞬間、
不安げになったり、涙があふれてきたり。
高畑さんは前回拝見した時も凄いな・・と思いましたが、相変わらず
ヘレンになりきっている感じがします。
実際は「見える」し「聞こえる」訳だから、周りの芝居に全く反応を
しないでおく、というのは難しい事だと思いますもの。
最期の「WATER」と言うシーン、茫然として手に持っている水差しを 
思わず落としてしまった時に、客席から「あっ!」という声が聞こえて
来たんですが、あまりにリアルに見えたから思わず声が出てしまった
という事なんだろうな、と。

また森さんの演出だからか、“指文字” も細かかったなあ・・。
サリバン先生がヘレンの手のひらに「指文字」を作ってパンと当てると
ヘレンは少しだけ指を動かして指の形を確認するんです、毎回。
それで気づいたんですよね「そうだよね、見えないんだから」って。
でも、サリバン先生も、母親もそれはやらない。「見える」んだから。 

でも今回一番良かったのは、ヘレンの母親を演じた馬渕さん。
ヘレンの事を心配したり、当惑する様子は当然なんですが、
時に見せる芯の強さが、とても良かった。
いつも目を真っ赤にして、耐えているいでたちも痛々しくて。
元々好きな女優さんですが、母親役もお似合いになりますね。
何度もこの母親にウルウルさせられてしまいました。

以前観てこれはケラー家それぞれの成長物語だと思ったし
今回もその気持ちに変わりはないのですが、すごく「変わった」
という印象を受けた理由は、サリバン先生の描き方の違いでしょうね。
決して奉仕の気持ちが無いとは言わないですけど、
「ヘレンが〜出来るようになって欲しい」というよりは
「ヘレンに言葉に意味がある事を教えたい」というスタンス・・
って言うんでしょうか。主語が「自分」っていうか。
それが最後のシーンでやっとヘレンを愛しいと思えたんだと
思うんですよね。
どうも、サリバン先生が「無理をしている」という印象を受けたのは、
演出のせいなのか、役者さんのせいなのかは分かりません。(多分、後者。)

今回、演劇的に面白い演出だなあ、と思う所も多々あって、
演出家の違いを楽しませてもらいました。
今回は当時の女性の社会的地位やアメリカにおける南部・北部の地域特性
そんなものも描こうとしているように思え、ちょっと考えすぎかなあ
という印象も受けましたけどね。
今までの作品は無条件に泣けたけど、今回は考えさせられる・・
という違いでしょうか。

でも、いずれにしても好きな作品です。
色んな演出が観れるのも、舞台の醍醐味だと思いますので良かったな。
今後も再演を繰り返してほしい1本です。