観ようか、パスしようか、少し悩んだのですが
久しぶりの生瀬さんの舞台が観たいな、と思いまして。
映画「太陽と月に背いて」は観ていないので、少し不安だったのですが。

皆既食_0001「 『皆既食〜Total Eclipse〜」シアターコクーン P列
19:00開演、21:55終演
作:クリストファー・ハンプトン   演出:蜷川幸雄
出演:岡田将生、生瀬勝久、中越典子、立石涼子、土井睦月子、外山誠二、冨岡弘、清家栄一、妹尾正文、堀文明、下総源太朗、野口和彦、加茂さくら、辻萬長、他
【あらすじ】
19世紀フランスを代表する天才詩人、アルチュール・ランボーとポール・ヴェルレーヌの軌跡。物語は、若く才気あふれるランボーと、その才能をいち早く見出したヴェルレーヌとの運命的な出会いから始まる。突如現れた自由奔放なランボーに心揺さぶられながらも、美しい若妻への執着や、厳格な義父母の干渉も断ち切れないヴェルレーヌ。パリ、ブリュッセル、ロンドン…。2年間に渡る放浪と闘争の日々、その果てに来る別離と破滅、そして各々の孤独な最期が描かれる。



大量の蝋燭の灯りが使われていました。
お席は結構後ろだったのですが、だからこそ蝋燭の幻想的な
明かりが楽しめたとも思います。



 


ヴェルレーヌもランボーも名前ぐらいは知っていましたが
詩には興味がないし、その程度の知識しかなくて。
フランス学科出身なのに、お恥ずかしい・・・。

しかし、このランボーとヴェルレーヌのキャスティングの勝ち、
という気がしますね、この作品は。

ランボーを演じた岡田将生クンはドラマや映画等で何度か
拝見した事がありますが、特に何の印象も無く・・・。
(普通にイケメンで普通に演技ができる・・って言う感じ?)
なので、失礼ながら今回も特に期待はしておりませんでした。 
・・・が、すごく良かったです、ランボーという役にピッタリ。
舞台で拝見したら、岡田君が美男子で驚いちゃいまして。
美男子だったランボーにビジュアル面で説得力が増します。
あの歩き方、本来の岡田君もああいう歩き方なのかどうかは
存じませんが、イメージ通りなんですよね。
もっと言えば、彼が纏っている 雰囲気がイメージ通りというか。
自由で、何ものにも縛られない感じ。
観ている私ですらイラっとする程の勝手気ままぶり、
自分に自信があり、自尊心の塊で扱いづらい芸術家そのもの
といった風情でした。

そして、ヴェルレーヌを演じた生瀬さんも良かったな。
最初は「えええ、こんなオジサンが?」って思いましたが(失礼!)
自然に思えてくるのは、さすがです。
ここで描かれるヴェルレーヌはとことんダメダメちゃんで
下卑た欲望の権化です。
詩人だけど、俗っぽく、自分の欲求に流されるばかりで
目の前の事しか考えられない。
プライドばかり高くて思い通りにならない事、我慢することが
出来ず、酔ってはDVに走ったりする。
けど、そんなヴェルレーヌだからこそ、ランボーの言いなりに
なったのも頷けるんですよね。

中越さんも楽しみにしていたのですが、出番が少なくて残念。
というか、この二人以外の出番は皆少なかった。
けど三角関係のライバルが男とか、プライド傷つくよなあ・・・。

キャンドルの明かりが印象的と書いたけど、その炎の揺らぎが
2人の関係にも思えて、更に幻想的に思える演出でした。
場面転換の際にはメイドの扮装をしたスタッフが炎を消す・・
というのも、全体の雰囲気が壊れなくて良かったですね。

ランボーがヴェルレーヌを堕落させたのか、その逆なのか
2人が揃ったからこそ、堕落したのかは分からないけど、少なくとも
ランボーは先の事を考えたから、そんなヴェルレーヌとの
別れを決めて前に進み始めた。
その違いが二人の晩年の違いを象徴的に表していました。
2人の関係はたった2年なんですよね・・・
なんか、もっと長い期間を描いた作品のようにも感じました。
落ちぶれても、ランボーの作品は大切にし続けたヴェルレーヌ。
その様子に少し救われた気もします。

キャストもイメージ通りで、思った以上に楽しめた1本でした。
岡田君、またタイプの違う舞台に出てみてほしいですね。