たぶん、遠征してまでは観なかったと思うのですが
(というか、名古屋でもどうしようか迷ったぐらいなので)
せっかくなので・・とチケット取っておりました。

紫式部ダイアリー「紫式部ダイアリー The Authoresses」
名鉄ホール 4列  19:00開演、20:45終演

作・演出:作・演出:三谷幸喜
出演:長澤まさみ 斉藤由貴

【あらすじ】

とある女流新人文学賞の選考会。審査員は「源氏物語」で、一躍注目を集め、若手女流作家として飛ぶ鳥を落とす勢いの紫式部と「枕草子」が大ベストセラーとなり、エッセイストとして確固たる地位を築いた清少納言。賞の対象となっているのは、和泉式部の「和泉式部日記」。紫式部は、この新しい形の作品を激賛し、清少納言は、薄っぺらいエセ文学と切り捨てる。早速、議論は白熱。清少納言にとって「和泉式部日記」を認めることは、紫式部本人を認めることになり、また紫式部にとっても、それは同様。共に絶対に負けられない戦いであった。かくして選考会は、「和泉式部日記」を巡る文学論から、いつしか、紫式部と清少納言の、作家としての、そして女としての、人生を賭けたプライドのぶつかり合いが始まろうとしていた・・・


19時開演は本当にありがたい。
昨日までの繁忙ぶりからは想像がつかないほど、あっさりと
会社を出られて、拍子抜けでした。
満席状態なんて殆ど見ない名鉄ホールですが、三谷作品だからか
キャストが有名な二人だからか、ほぼ満席状態でした、平日なのに。
すごいな〜。




歴史上実在した人物を調べ上げ、仮説を立てて話を作り上げる・・。

実際に紫式部は“紫式部日記”で清少納言をコキおろしていたり
和泉式部を文才はあるけど男好き、みたいに表現していたらしい。
清少納言は紫式部の御主人の事を悪く書いていたらしいです。 
そんな二人が同時代、しかも“現代”に居たとしたら・・・という仮説に
基づいて、三谷さんのオリジナルも加えて書かれた作品。
「コンフィダント」等と同じ手法ですが、この辺りは、さすが三谷さん
という感じです。

この二人が文学賞の審査員を務めることになり、前泊したホテルの
ラウンジで初めて二人きりでお酒を飲む・・という設定です。
バーテンダー役の人は居ますが、基本的には二人芝居。
バーカウンターが時折、盆に乗って裏表が入れ替わりますが、
それ以外はセットチェンジもありません。
三谷さんですもんね、やっぱりワンシチュエーションものですよね。

清少納言を演じたのは斉藤由貴さん。
プライドや競争心は人並み、もしかしたらそれ以上あるのに
自分自身の感情をストレートに表せない。日本人らしいというか
良くない意味で“大人”というか。
斉藤由貴さんのちょっととぼけた雰囲気や話し方がとても
この役に合っていたと思います。

それに対して、時に傍若無人だけど、あけっぴろげでストレート
勢いもある紫式部が長澤まさみさん。 
長澤さんは以前、一度拝見しており、何てスタイルのいい子なんだ
という事と、思い切りのいい演技をする子だなあ、と思っていました。
それが“演技”なのか、演技というより彼女の元々持つものなのかは
1本観ただけでは分からなかったのですが、多分・・・後者かな(笑)。
ただこの役にはピッタリ。アテ書きならでは、ですね。
熱演されていたのは十分伝わってきました。
 
一世を風靡し、名前も売れた清少納言が、最近売れている紫式部に
その才能を認めながらも嫉妬する。
美人で、才能もあって、なんでも持ってる・・って。
でも紫式部には彼女なりの悩みや葛藤があり、清少納言を羨ましく
思っていた事が発覚する。また傍若無人で怖いものナシなのかと
思いきや、和泉式部の台頭を恐れてもいる事が分かる。
最初は牽制しあいながら話していたのに、いろいろと衝突して
最期には本音で語り合うようになる・・・。
・・・どこかで観たり、読んだりした感じで目新しさはないかな。
面白いんですけどね。

紫式部に振り回されていた清少納言が、その振り回されている
シチュエーションを楽しむようになるのは観ていてホッコリします。
まさに“姐さん”になっていく感じ(笑)。

「1000年後の読者に向かって書きなさい。
 美人かどうかなんて、1000年後には関係なくなっている。
 貴女はその時には居ないけど、貴女の書いたものは残る。」

という台詞は良かったですね。
そう考えると、作家の仕事って凄いんだなあ・・と思います。 

“紫式部日記”ならぬ“紫式部ダイアリー”。
あの紫式部の事だから、敢えてパスワードが伝わるように、
バーテンと会話していたんじゃないかと思うんですよね。
あのPCで書かれていた事は、私たちには明かされなかったけど
紫式部から清少納言宛のメッセージ的なものか、口にするのは
照れてしまうような事が書かれていたのではないかな・・なんて
思ったりして。

お隣の二人連れの笑いの沸点が低すぎて、大したことのないシーンでも
「え?そこまで笑いますか?」という感じで笑われていて、ちょっと
その二人にひきましたが(笑)、楽しく拝見しました。
ほんと、地方公演ありがとうございます<(_ _)>