12月に帝劇で一度観た舞台なのに、平日に仕事を休んで梅田まで
観に来たのは、単に大千秋楽だったというだけではなく、今公演で
井上芳雄氏がヴォルフガングを卒業する、つまり井上ヴォルフガング
の大千秋楽でもあったため。
ホタルイカならば、行きたくなるというものでしょう(笑)。

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「モーツァルト!」梅田芸術劇場 メインホール 6列(3列目)
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ   音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞:小池修一郎
出演:井上芳雄、花總まり、平野綾、春野寿美礼、山口祐一郎、市村正親 ほか

【あらすじ】 
幼き頃より“神童”と謳われたヴォルフガング・モーツァルト(井上芳雄 Wキャスト)は、過大な期待を寄せる父のレオポルト(市村正親)や姉ナンネール(花總まり)、彼の才能の独占を図るザルツブルクの領主であるコロレド大司教(山口祐一郎)らに囲まれ、本当の自分と周囲のイメージとの差に戸惑っていた。そんな折、ヴァルトシュテッテン男爵夫人(春野寿美礼)の援助を得て、故郷ザルツブルクを飛び出し、音楽の都・ウィーンで成功を収めるヴォルフガング。コンスタンツェ(平野 綾)との愛を育み、全てを手にしたかに見えたが、ヴォルフガングの行動は、周囲から理解されず、逆に心が遠ざかる結果となる。全ては“音楽の才能=アマデ”に支配される運命にあることに、ヴォルフガングは気付き始めるのだった・・・。

M!
今回は“大看板”は無かったので、こちらをパチリ。
前回とはコンスタンツェ以外は違うキャストになりました。

私は2005年に「モーツァルト!」を井上Ver.で観ています。
その頃はまだ舞台を観はじめた頃で、観劇歴の長い友人から

・井上芳雄という俳優は“王子様”である
・東京藝術大学の声楽科出身でとても歌が上手い
・今、中日劇場でミュージカルに出ているので観ておくべき!

と勧められたため、よく分からないまま一般発売でチケットを買い求め
18列目の上手端っこで観劇した事をとてもよく覚えています。
「井上さんの回で土日のどこかで観たい」と劇場窓口のお姉さんに
相談したら1階ではここが1席ぐらいしか残っていなかったんです。
チケットがそんなに売れている事にも驚きました。
ナンネールが高橋由美子さん、コンスタンツェが島袋寛子さん
大塚ちひろさんでしたね。(コンスタンツェは完全に私の記憶違いでした)

その時、実際に観て間違いなく歌はお上手だと思ったのですが、
何となく雰囲気も歌い方も“優等生”なイメージが拭えなくて、
奔放なヴォルフガングという役はWキャストの中川晃教君の方が
良かったのではないか?とずーっと思っていました。
ただ、中川君はその後ヴォルフガングを先に卒業してしまったので
確認する術がなかったのですが。

あれから10年近く経って、今また井上ヴォルフガングを観たら
自分はどう感じるんだろう?というのも今回楽しみでした。





結論から言うと、とても良かったです。帝劇で観た回よりも心に響いた。

前半については、山崎君の方が年齢的にピッタリくる気がしますし
「モーツァルト!」という作品で考えるとキレイにパッケージになっているのが
山崎Ver.かなあ、と思いますが、主役が際立っていて、主役が全体を
引っ張って行っている、というのが井上Ver.という印象です。
異論ある方もいらっしゃるかもしれませんが、私の印象なのであしからず。

まず序盤の「僕こそ音楽」がこちらにもビシビシくるんです。凄い迫力で
早速圧倒されちゃいました。
あと、アマデとの空気感が山崎Ver.とは違うなあと思います。
山崎ヴォルフガングはアマデと仲が良く、じゃれあっているように思える
のに対して、井上ヴォルフガングは“つかず離れず”と言う距離感が
あるようにも感じますね。
好みの問題でしょうが、ここは井上Ver.の雰囲気の方が好きだな。

次に印象深かったのは父親が死んだ後の嘆きのシーン。
嘆いたり苦悩するのはやっぱり井上君の方が一枚上かなって感じ。
観ていても痛々しくって。だからこそ「空から降る金」の歌詞が
観ているほうにド〜ンと響いてきたのだとも思いますね。
その前の、父親に皇帝陛下に演奏を観てもらった事に対して
褒めてもらえると思ったのに・・・というシーンも私的には結構
印象深かったので、より嘆きが伝わってきたとも思います。

あと、演出の小池先生にも挨拶の時に「ラブシーンが上手くなった」と
言われていましたが、うんうん、分かるよ。
一人で部屋で待っていたコンスタンツェを見つめ、さっと自分の上着を
脱ぎ捨て、不意にコンスタンツェを抱え上げるのは、流行の「壁ドン」で
ドキリさせられる感覚に近い気がする(笑)。
山崎クンは元々“男”を感じる部分が多いので、全体にラブシーンは
ドキドキものなんですが、今回は意表を突かれた〜。

コンスタンツェは前回と同じ平野綾さん。
やっぱりこの役に彼女は合っていると思う。
悪妻度が低いというか、バカっぽいんだけど、とにかく健気なんだよね〜。
ラストシーンなんて全身全霊で歌っているという姿が、コンスタンツェの
心情と重なって見えて不覚にも彼女で泣かされそうだった(笑)。
カーテンコールの挨拶ではあの話し方なんでやっぱり笑われてて
「やっぱり笑われた・・・」って言ってました。井上君に
「ギャップがいいんだよ」ってフォローしてもらっていましたが。

2005年に観たときの事はうっすら覚えている程度だし、まだブログを
始める前だから記録も無いんだけど、明らかに印象は変わった気がします
もちろん、いい意味で。すっかりこの作品が好きになりました。
あと今回、二人のヴォルフガングを見比べられたのも面白かったです。
解釈というか演じ方はやはり違う部分もありますから。


千秋楽らしく、ちょいちょい小芝居があったりもしました。
コロレド大司教が・・とか、シカネーダーとのやり取りが楽しそうだったり。

いつもなら千秋楽のカーテンコールの映像がすぐに東宝からYoutubeに
アップされるけど今現在アップされていないようですね。
今回はDVDの特典に入るからかな。なので、少しだけ書いておきます。
サプライズゲストは初演のコンスタンツェを演じた西田ひかるさん。
客席で「うわ、派手な上着を着た人だな」と思ったら、西田さんでした(笑)。

順番にご挨拶があるのは東京千秋楽と同じですが、特に市村さんの
ご挨拶はウルっときました。
自分は病気になったけど、早期発見で舞台に戻れたのは
まだ演劇の神様に好かれているのかな、と思ったという事、
12年前から井上君を観てきたけど、成長したなと思う事。
そして、劇中で父親が息子・ヴォルフガングの才能を伸ばしてやろうと
思うのと同じような気持ちで、井上君の才能を伸ばそう、天才を
傷つけちゃいけないと思って演じてきたことなどを話してくれました。

井上君のご挨拶も良かったです。
やらずに済むなら楽をしたいタイプだけど、この役は力いっぱいやらないと 
演じられない。それをやり通せたことが自信にもつながるという事や
ヴォルフガングと自分自身を重ねたお話をしてくれていました。
偶然かもしれませんが、市村さん井上君両氏とも役に自分を
投影して演じられていたんだなあ、と思うと感無量。

そして、今回ラストと言う事に関して。
「一番最後、白い羽をアマデから受け取って死ぬシーンでは自分は
どういう気持ちになるんだろう?とずっと思っていた。
ラスト近く、レクイエムを作曲しているシーンあたりから、この作品の
過去のいろんな場面がそれこそ走馬灯のように思い出されて、
本当に死んじゃうみたいだなって思ったけど(笑)、不思議だった」
という事とか
「いつも千秋楽というのは、とっ散らかっちゃって・・という事が多いけど
今回は最初からとても楽しかった」
というお話もされていて、この作品に対する思い入れや充実ぶりが
伺えるようなご挨拶でした。


最期は幕外にアマデと一緒に出てきてくれてアマデの「おおきに!」
という挨拶と「めっちゃ好きやねん!」という井上君の挨拶でラスト。
井上君のご挨拶で、自分の置かれている環境で頑張らないとね・・
なんて思っちゃったりしました。

この作品はまたいつか上演されるでしょうが、その際もタイミングが
合えば積極的に観ていきたいな、と思う作品になりました。