昨日の仕事の疲れが抜けず、朝早く出掛けて行きたい場所があった
のだけど、頭痛薬を飲んで二度寝をしてしまい、チェックアウト時間
ギリギリにホテルを飛び出すことになりました、情けない・・・。

三人姉妹KERA meets CHEKHOV Vol.2/4
「三人姉妹」シアターコクーン XB列(二列目)
13時開演、15時45分終演 
作:アントン・チェーホフ  上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:余貴美子、宮沢りえ、蒼井優・山崎一、神野三鈴、段田安則、堤 真一、今井朋彦、近藤公園、遠山俊也、猪俣三四郎、塚本幸男、福井裕子、赤堀雅秋
【あらすじ】 
「将軍」であった亡き父の最後の赴任地で暮らすオーリガ(余貴美子)、マーシャ(宮沢りえ)、 イリーナ(蒼井優)の三姉妹と、その兄弟アンドレイ(赤堀雅秋)らのプローゾロフ家。故郷モスクワから 遠く離れた田舎町での暮らしは、平穏だが退屈で寂しく、姉妹たちはモスクワでの日々を懐かしむばかり。彼女たちは、家族で唯一の男性であるアンドレイの出世を願い、皆でモスクワに帰ることを夢に見ている。一家の屋敷には、軍医チェブトゥイキン(段田安則)、陸軍大尉のソリョーヌイ(今井朋彦)、陸軍中尉のトゥーゼンバフ男爵(近藤公園)や町に駐屯する軍人たちがサロンのように頻繁に集っていた。次女マーシャの夫・クルイギン(山崎一)、後にアンドレイの妻となるナターシャ(神野三鈴)らを含め、それぞれが心に満たされぬ想いを抱きながらも日々を生きているのだ。そんな中、亡き父の部下で陸軍中佐のヴェルシーニン(堤真一)が赴任してきた。中佐が運んできたモスクワの香りに、気持ちが華やぐ姉妹たち・・・。 そして、一家を巡る人間模様が動き出した。 



チェーホフに造詣が深いケラさんが 演出をするこのシリーズ。
かもめ」も良かったので、この作品もぜひ観たいと思っていました。
それにしても、これはドリームうキャストでしょう?っていう豪華さ。
(あ、私にとって、ですが。)
余貴美子さんは大好きな女優さんですが、今まで舞台で拝見する
機会がなく、舞台は出られない方なのかと思っていたので、彼女が
観られるだけでも嬉しかったですし。







 
書籍としてチェーホフの「三人姉妹」は読んだことがありませんが、多分
原作のイメージは損なわれていないんじゃないだろうか・・と思う作品。

まず、“3人姉妹” を演じた女優3名の“違い”が面白いんです。
衣装やメイク等のビジュアルはもちろん、台詞や、他の人のセリフを
聞いている時の反応、台詞がない時の仕草、全てが計算されている
というか、それぞれの個性に基づいているというのがよく分かる。
真面目で冷静で自分の感情を抑えがちな長女、自分の感情に素直で
情熱的な次女、夢見がちな末っ子。
「祈りと怪物〜ウィルヴィルの三姉妹〜」を書いていた時にケラさんが
「“三人姉妹”みたいな作品」とおっしゃっていた意味がよく分かります。
本当にこの3人がハマリ役でしてね、ハマる役者さんをキャスティングした
キャスティング力が凄いのか、3人の演技力が凄いのか、ケラさんの
演出が凄いのか・・?まあ・・全部なんだとは思いますが、それ程
イメージにピッタリだったのですよ。
 
またこの3人の個性が際立っているのは、それ以外の人たちもまた
凄く良かったからこそ、なんだと思います。
ナターシャはガチで怖いというか腹が立つし、アンドレイには別の意味で
とてつもなく腹が立つし(笑)。
神野さんの演じる「こわい女」は掛け値なしに怖い・・というのは既に
知っていますけど、赤堀さんのダメダメっぷりがあんなに違和感がない
というのは新たな発見でした。

「モスクワに戻る」という夢がありながらも、現実に流され、そして
「こんなはずじゃなかった」と思いつつ、手の届く日常に妥協していく人々。
納得がいかないまでも、夢と現実に折り合いをつける様子は
ドラマチックなハッピーエンドではないのだけど、妙に惹きつけられる。
それが「生活していく」と言う事なのだろうし、程度の差こそあれ、
観ている私たちにも心当たりがあったりするのだから。

仕事を辞めてゆっくりしたいオルガは校長先生に就任、仕事に追われ
マーシャは愛したヴェルシーニンの赴任地が変わり、離れ離れになり、
愛していないとはいえ、イリーナと結婚直前だった男爵は殺されて
途方に暮れた時、「生きていくのよ」と涙を流しながらも真っ直ぐ前を
見据える3人。その姿にとてつもない逞しさと生命力を感じて、励まされ
「前に進まなければ、何も始まらないのよ」と言われている
ようにも感じたのでした。
あれはあれでハッピーエンドだったんだよね、きっと。

余貴美子さんは想像通り素敵でした。もっと舞台で拝見したいなあ。
宮沢さん、蒼井さんはどちらかと言うと苦手な女優さんなのですが
今回はいずれも良かったですねぇ。
特にまるで喪服のような黒のドレスを常に着ている宮沢さんは
とても象徴的で、かつ美しくて目を奪われました。
そして、山崎一さんも切なくてよかったなあ。
もちろん、堤さんや今井さん、段田さんなど敢えて言うまでもなく(笑)。

文句のないキャスティング、「かもめ」の時と同様、映像などを使ったりせず
真っ向勝負のチェーホフだったと思います。
エンディングの音楽がスタイリッシュだったのが、ケラさんらしいな、と
思ったぐらいかな。
やっぱりいいなあ、このシリーズ。
こういう作品を観られたからこそ、チェーホフの作品を好んで観たいと
思えるようになったと思います。
このシリーズの残りの作品も楽しみに待ちます!