この作品は、蜷川演出で観たことがあります。
あまり気分のいい戯曲ではないので(笑)、萬斎さん版の初演は
パスしたのですが、今回は中越さんが出るという事で、興味が出て
観に行くことにしておりました。

藪原検校「藪原検校」世田谷パブリックシアター A列
18:30開演、21:40終演
作:井上ひさし   演出:栗山民也
出演:野村萬斎、中越典子、山西惇、大鷹明良、酒向芳、春海四方、明星真由美、家塚敦子、山薫、辻萬長、千葉伸彦(ギター奏者)
【あらすじ】
盲目で生まれた杉の市は、盗みや脅しは当たり前、ついには人を殺めてしまう。殺し殺してまた殺し、その手を血に塗れさせ、悪の限りを尽くしながら、己の身と金の力を頼りに、江戸の盲人の最高位である検校にまで登りつめる。東北の地から江戸へと流れてきた少年は、運命の大きな流れに流される―。二代目藪原検校の、その悪行三昧、闇の世界の一代記。



蜷川版で杉の市を演じたのは古田新太さんでした。
古田さんの杉の市は何となく想像がつくのですが、萬斎さんには
そんな悪人イメージが無いため、どんな感じになるんだろう?と
興味はあったのですよね。





 
当たり前ですが、戯曲は以前観た蜷川版と同じなので、観ながら
「ああそうそう、そういうお話でした」と思い出すことも多かったですし、
感嘆する所もやはり同じと言えば同じでしたね。

まずは盲大夫を演じた山西惇さんの素晴らしさ!
というか、この役を演じる方は相当な技量が無いと無理ですよね
という事がよく分かりました。
特に山西さんの場合は、「頑張ってる」感が無いんです。
台詞を発する、というのではなく“語っている”感が強い。
何となく地頭の良さを感じる役だな、と思ったりします。
ギターの方とおにぎりを食べるシーンは何ともホッコリしておりまして
「今日は山陽新幹線開通ですね、ノドグロが食べたいですね」
なんておっしゃっていました(笑)。
 
以前は古田さんで拝見した杉の市は野村萬斎さん。
萬斎さんが生まれついての大悪党?!というのが何とも想像が
つかなかったのですけど、これが古田さんとはまた違うのですが
しっかり杉の市でした。(←こんな表現しかできないのが哀しい・・)
確かにどちらも「どうしようもない悪人」なんだけど、どうもタイプが
違うというか。古田さんは街のチンピラだった男がヤクザになった・・
というような感じで、萬斎さんは不良が暴力団の幹部になった・・
って感じかな(笑)。うーん、同じようでいてかなり違うような・・。
当然、藪原検校での杉の市と言えば“早物語”が有名なんですが
これがまた古田さんとは全然違ってて・・。
古田さんも凄くて、汗だくになっていたのが印象的なのですが
萬斎さんの場合はどこか余裕を感じさせられて、現代的なネタも
含まれていて、何度クスクス笑ったか(笑)。
 
で、断然にこちらの方が好き♪というのが、中越典子さん。
元々全く興味のない女優さんだったのですが、舞台を観るごとに
興味が増し、今では大好きで、今回も中越さんが出るので観たいなと
思ったと言っても過言ではありません。
色っぽさ、艶っぽさ、儚そうでいて実は生命力のあるお市。
特にラストシーンでの中越さんの美しさはあの笛の音と相まって
すごくインパクトが強く記憶に残っています。

蜷川版と栗山版。演出が違う事によって受ける印象が違う所もあれば
全く印象が変わらない所もある(そこは井上ひさしさんの意思が
強く作用している所なんだと思いますが)。
演者の違いだけでなく、演出家の違いも面白いなあと思いました。

ただ・・(笑)。
以前この話を観たときにはあまり話の内容が好意的に受け取れなくて
それは私がまだ舞台を観慣れていなくて、理解できないから来るものだ
と思っていたのですが、今回見てもやはり同じ印象をうけまして・・。
きっと、あまりこの戯曲が好きじゃないんだろうな。
・・・・今さらそんな発見・・・(爆)。