19時開演はありがたいのだけど、やっぱり平日は厳しいよ・・
残業を全て投げ打って、今日で閉館前最期の演劇公演となる 
名鉄ホールに向かいました。

正しい教室「正しい教室」名鉄ホール2列
19:00開演、20:50終演
作・演出:蓬莱竜太
出演:井上芳雄、鈴木砂羽、前田亜季、高橋努、岩瀬亮、有川マコト、小島聖、近藤正臣
【あらすじ】
舞台はとある地方都市。かつての同級生たちが、同窓会を行おうとしていた。事故で自分の子どもを亡くしてしまった、かつてのマドンナ的存在の女を励ますためだ。
ところがその会に呼んでもいない担任の教師が現れる。生徒たちから嫌われていた教師の登場に凍りつく同窓会。しかし、何故か教師は招待状を持っていた。誰が何故、この先生を招待したのか。それぞれの想いが交錯していく中で、行き場のない鬱屈した想いが暴発するとき…スリリングで滑稽な人間模様の果てに現れるものはいったいなんだろうか―。 


元々蓬莱竜太さんの作品は好きですし、井上芳雄氏が出なくても
私にとっては魅力的なキャストだったので、観に行っていたと思いますが、
そこに芳雄リーダーが出るとなれば、より観てみたくなります(笑)。

ミュージカル以外の作品でも井上芳雄君を観た事はありますが、
思い返すと「ロマンス」やら「組曲虐殺」「イーハトーボの劇列車」と
全てこまつ座作品でした。だから多少なりとも歌があって、完全な
台詞劇は今回が初めてだったようです。 (映像では「ハムレット」
「負傷者16人」は観ていますが。) 

私が蓬莱さんの作品に持つイメージと言うのは、キャストは概ね
心に傷を負って、卑屈な面を抱えて成長し、途中で感情が爆発。
一部、暴力的だったり、めちゃくちゃな事を言うジャイアン系の人が居る
のだけど、実はやる事とは裏腹に、真っ当な考えを持っている・・
って言う感じなんですよね。もちろん、これに当てはまらない作品も
ありましたけれども。
そういう意味では、この作品はそのセオリーに当てはまると思います。

ダラダラした感想は追記にて。


 
舞台のセットは小学校の教室の様子。開演前から子供たちが遊ぶ
声が響いていて壁には「希望」と書かかれた習字が貼り出されています。
暗転すると、スマホで保護者と思しき人と話す菊池(井上芳雄)。
みんなが“希望”と書く中、ひとり“絶望”と書く児童の親と話していたらしく
ポケットから出して読み直す手紙も、どうやら関係がありそう。

そして、一人、また一人と集まってくる同級生たちと、それぞれの
関係性、現在の状況などは何気ない会話を通して知ることが出来ます。
菊池は小学生のころから真面目な優等生の委員長で、明るかった
小西(鈴木砂羽)の事が好きだった。今回の同窓会を仕切った背景には
そんな気持ちが見え隠れ。
地元で現実に追われて暮らす漆原(小島聖)はその頃付き合っていた
同級生との再会を密かに楽しみにしていたようだったり・・・。
この辺りはまだ明るい雰囲気も漂っていたのだけど、会話の中に
何度か出てくる「寺井先生」。この単語が出てくるたびに場の空気が
“キュッ”となる。
そして、実際に「寺井先生」が現われて固まる面々。

まあこの寺井先生(近藤正臣)が圧巻でした。凄い迫力。
頭を下げた元教え子を張り飛ばした時には、びっくりしましたよ。
言う事もやる事も滅茶苦茶だもん。
本気で憎たらしかったり、呆れたりしながら観ていました。

でも・・・・

全員に平等に接する事が無理なんだから、出来る振りはしない。
生徒同士のラブレターを貼り出したのは、実は他の生徒だった。
プールを強要したのは、小西が苦手な事を避ける生徒だったから。

あれ。言っている事、真っ当じゃないか。
ここで「正しい教室」の“正しい”の部分について考え始める事に。

小西は何故水が怖いのに、池のある公園で子供と遊んでいたのか。
何故、寺坂を落とし穴に落とそうという作戦がある事や、その作戦に
加担した児童の名前が書かれた場所を本人が知っていたのか
そして、菊池が持っていた手紙の内容は。。。

たぶん、小西は子どもの死に関して責任を感じるからこそ、“真実”が
“思い出せない”のだろうし、菊池も「嫌われる事」を恐れており、かつ
「いい先生」になりたい、と思うからこそ、八方美人になってしまい
その結果が、「絶望」の習字なんだと思うと、どれも、人のもつ“弱さ”
から引き起こされたもので、痛々しくて、ちょっと責められない感じ。
程度の差こそあれ、そういう面は誰でも持っていそうだもの。

そして、暴君のように思えた寺坂先生が実は認知症であることが
判明し、菊池から「座って下さい」「(カレーを)食べてください」と
言われ、それに従う様子を見て、改めて時の流れを感じたりして。
小学生から、現代に戻ってきた・・と言う感覚。

落とし穴から救出された後、一番に心配したのは生徒の事だったと
冷静に思い出させたのも、皆で、まるで給食を思い出すように食べる
カレーを作ってきたのも不知火光(高橋務)だったのだけど、その
不知火だけは、他の人のように後ろ暗いところがなかった、というのも
なんか面白いですね。

井上君、なんか違和感が・・と思ったら、「正面を向く」事が殆ど
なかったからそう感じたんですね。そりゃこういう舞台では当然ですが(笑)
最近はミュージカルで拝見する事が続いておりましたので。
弱さ故にずる賢く、姑息なかつての優等生が責められ、逃げ場を
失っていくという情けない役が、なかなか新鮮でした。
でも、スタイルがいいんですよねぇ・・本当に。

小島聖さんは大好きな俳優さんですが、こういう強がった役も
お似合いになりますね。
鈴木砂羽さんは、出てきたときの「どよーん」とした雰囲気が
あまりにも出来すぎてて、ギャグみたいで笑えましたが、「分からない」
「思い出せない」と言うシーンは観ていて痛々しいほどでした。

で、有川さん・・・さすがです(笑)。大好きです。
高橋さんもシェイクスピアとかのイメージが強い方ですが現代劇も
いいですねぇ。タムカプセルに「シェフになる」と書いた、それが
叶っていたのは不知火だけ・・でも本人はそれに気づいていなかった、
というのは好きなエピソードです。

こういう作品が名古屋で観られて嬉しかったな。


名鉄ホールもこれで閉館。
ホール内のアナログ時計のカチコチいう音がうるさいから、と上演中に
時計を止められたりとか、ありえないエピソードを持つ劇場(笑)。
舞台が高すぎ&最前列が舞台に近すぎるから前方席は常に
見上げなきゃいけないし、足元や舞台奥が全く見えないという
観づらさMAXの劇場。
ケチくさく座席を詰め込みすぎて、シートピッチは狭いわ1列目の端は
極端に足元が狭いわ、という残念な劇場でもありました。

でも、ホールの数が少ない名古屋にあっては貴重な存在だったんですよ。
無くなってしまうのは、やはり寂しいですね。