“観れたら嬉しいな”を集めた遠征の中では、一番「観たい!」度の
高かったのはこの作品ですね。

花形歌舞伎「明治座 五月花形歌舞伎」明治座14列
11:00開演、14:50終演
一、矢の根 
二、男の花道
出演:市川猿之助、片岡愛之助、市川中車、市川右近 他







4月にも中日劇場で似たような座組みの花形歌舞伎を観ましたが、
それでも観たかったのは、演目が「男の花道」だったから。
2010年に御園座で観て、面白くて忘れられなくて。
(だからその後福助さんVerでも観に行ったぐらい)
後から知ったのですが、この2010年の公演が初演だったのですね。

のぼり
 
主に「男の花道」の感想ですが、追記にて。


 
 
【矢の根】
これは先日京都でも観た演目です。
演目としては別に変わらないのですが、今回の曽我五郎は
市川右近丈。やっぱり豪胆な印象がある役者さんがやると、
ピリっとするというか、見応えがありますねぇ。
大根があんなに印象的には観えなかったからな、前回は。
何が違うのかな(笑)。


【男の花道】
面白かった!もう大満足!
キャストが誰であっても上演されたらまた観たいなあ、と思っていたし
あわよくば、また猿之助さんで観たいものだと思っていたので 
今回はもう大喜びですよ。 玄碩役を中車さんが演じられるとあっては
益々見たいじゃないですか!

それがなかなか前方席が取れず、結局14列目。
でも下手の通路近くの席というのだけは譲れなかった!
この演目ならば。下手の通路を猿之助さんが通ると知っていたし、
後方席ならクライマックスで臨場感があるから、まあいいかとも思ったし。

久しぶりに観たことになりますが、やはり猿之助さんが素晴らしかった!
インタビューにも書かれていますが、登場のシーンはすごく印象的。
とにかく所作が美しくて見惚れてしまいます。
その一方で歌右衛門が玄碩の治療を受け入れ、膝をポンと叩き、
ぐいっと顔をあげて目を見開く姿には、歌右衛門の覚悟が感じられて
本当に良かったなあ。

そして、手術後に包帯を外し目を開くシーン。
視力が戻ってきた・・と言う事と、それに伴う心情の変化が、
歌右衛門の表情の変化で、とってもよく伝わってくる。
なんかこっちまでジーンとしちゃってねぇ。(本当に最近涙腺が緩い・・)

初演で一番印象に残っているシーンと言ったら、旅立つ玄碩を一座が
頭を下げて見送るシーンなんですけど、今回はたまたま座席の
位置関係上、自分の方を向いて頭を下げているような状態になった
ものだから、またまたすごく印象に残っちゃいました。
 
全体に 演出は同じなんでしょうけど、猿之助さんがすごく
パワーアップしたなあ・・と思わずにはいられない。
特に観客に玄碩の元に行く赦しを乞う口上なんて、すごい迫力で、
思わずその口上に拍手しちゃっているお客も居たりしましたし。
「男の花道」を観ている私達観客がどんどん巻き込まれていって、
歌右衛門の舞台を観ている観客になっていくような一体感が
前回より遙かにあったと思います。 
あと、最後に“老松”踊るシーンがあったのですが、素敵だった!
初めて、心から日本舞踊が素敵だと思ったかもしれない(笑)。

前回と違う所と言えば、玄碩を中車さんが演じている所かな。
腕はあるのに無骨で世渡り下手・・っていうのは、イメージしやすいし
想像通り見応えがありました。
でも前回(段四郎丈)とはイメージが違いましたね、随分。
段四郎丈の玄碩は、真面目で堅物で、融通がつかないタイプだからこそ
窮地に追い込まれてしまった・・仕方ない、という感じがしましたが、
中車さんは真面目で堅物なのは変わらないのだけど、ちょっとお調子者、
短絡的なところがあって、コミカルになっているというか、「仕方ない人ねぇ」
と思わせるような玄碩になっていたように思います。
前回は笑いがあそこまで起きていなかったように思いますもの。

最近は歌舞伎も宇宙人が出てきたり、ワンピースが出てきたり・・と
新作が流行のようですが(笑)、私としてはそっち方面に行くよりは
古典じゃないなら、こういう作品がもっと脚光を浴びるといいのに・・
と思ったりします。
いずれにしても、2度観てもやっぱり大好きだ!と思ったので、また
上演されたら、きっと観ます(笑)。←再演希望。

途中の「四段目の由良助じゃあるまいし」ってセリフが普通に理解
できるようになったなあ・・等と感慨深かったりもしたりしたのでした(笑)。