5月初旬の遠征は追加で実施したものですが、今回は元々
企画していたものです(笑)。

海の夫人「海の夫人」新国立劇場小劇場 C4列(4列目)
13:00開演、16:00終演
作:ヘンリック・イプセン   演出:宮田慶子
出演:麻実れい、村田雄浩、大石継太、眞島秀和、橋本淳、横堀悦夫、太田緑ロランス、山薫
【あらすじ】 
北部ノルウェーのフィヨルドにのぞむ小さな町。灯台守の娘エリーダは、初老の医師ヴァンゲルと結婚し、先妻の二人の娘ボレッテとヒルデとともに穏やかに暮らしていた。エリーダには、かつて結婚の約束を交わしていた船乗りの恋人がいた。恋人との関係が途絶え、生活が保証されたヴァンゲルの後妻となり愛される日々を過ごしてきたが、生まれたばかりの息子を亡くし、ここ数年は精神が不安定で空虚な生活を過ごしている。毎日海で泳いでばかりいるエリーダを近所の人々は、「海の夫人」と呼んでいた。そんな中、突然かつての恋人が現れ、一緒にここを出ていこうと言われるエリーダ。自分の意志で結婚したわけでなく、ずっと自由へのあこがれを胸に秘めていたエリーダは、海と同じ引力を持つその男の登場で心揺れるが......。 


この話そのものに惹かれた、と言うよりは新国立のこのシリーズに
興味があった、という方が正しいと思います。
麻美さんがイプセンの作品に出るって、それだけでもなんか惹かれる
ものはありますけど(笑)。

舞台模型
これが今回の舞台模型。
何だかスノーボードの競技場みたいな感じです。色は真っ白。
ちなみにいうと、キャストの皆さんは殆どが白色(あるいはアイボリー)
の衣装でした。

感想は追記にて




 
イプセンは「人形の家」しか観た事は無いので、これで2本目。
つまり、イプセンを良く知っている訳ではないのに、印象に残って
いるのは、前に観たその舞台がとても良かったから。
同じ作家でも、こんなに雰囲気が違うんだなあ、と改めて思いました。

他の方も書かれていましたが、海の音などのSEは無いのですが
潮騒が聞こえてきそうな気がしました。
何から生まれてくるものなんでしょうね、あの“海感”は(笑)。 

フィヨルドの街に住む一家がこの作品の舞台。
医師のヴァンゲルが父(村田雄浩)で、後妻がエリーダ(麻美れい)
前妻の娘がポレッテ(太田緑ロランス)、とヒルデ(山薫)。
なんか全員がよそよそしい。険悪・・とかではないんですが。
夫は妻に遠慮し、娘は新しい母を拒絶する程ではないものの
馴染めておらず、妻は誰にも心を開いていない。 

エリーダは他に好きな人が居たのに、ヴァンゲルと結婚した事に
負い目を感じているようで、しかもヴァンゲルとの子供を亡くしていて
夫の誠実さをありがたいとは思いながら、素直になれないのかも
しれないし、あるいは負担に思っている。
子供たちも微妙にそれを感じ取っていて距離感が掴めないのだと思う。
そんな孤高で容易に人を寄せ付けない感じは、さすが麻美さん、
と言う気がしますね。

そんなエリーダに一生懸命に働きかけるのに、なかなか効果が無く
昔を知る教師のアーンホルム(大石継太)には素直になれているのを
恨めしくおもっているような様子が、なんか気の毒でね。
あんなに必死で、そこまで想ってもらってるのに!と思うぐらいなんだけど、
結局は「何をしてあげるか」「何を言ってあげるのか」ではなく、エリーダに
「どう向き合うのか」が大切だったのね・・。
そういう意味では、ヴェルデはきちんとエリーダを理解していなかった
と言う事になりますが。
そして、そのスイッチさえきちんと入れば、エリーダの納得感も出て
自然と子供たちとの距離感が縮まっていく。人間関係って、結局は
繋がっているんだなあ・・と思うと興味深いですよね。

麻美さん以外のキャストの皆さんも個性的で。
ロランスちゃんが本当にキレイでうっとり・・なんですが、お姉さんらしい
しっかりした所もあったけど、自分の事に対しては天然でコミカルで。
「ああ、そういう手段で街を出ますか・・」と少し呆れる流れなのに、
まあ、アリかもねーと思わせるのは(時代背景もあるけど)あの二人
(大石さんとロランスさん)だからかも。
大石さんはコミカルさと誠実さと、気弱さと大胆さがいいバランスで
感じられて良かったです。

妹のヒルデは更に印象的。一瞬、平岩紙ちゃん?と思ったけど
もっと若い方なんですね。小生意気で、口が達者で、ズケズケして
いる、困った妹なんだけど、実は誰よりも母親の愛情に飢えていた・・
というのが良かったですね。

そして、エリーダの過去の恋人役を演じたのが眞島秀和さん。
他の方が白っぽい衣装だったのに、この人だけは真っ黒。
全てを飲みこんでしまうような、夜の海のようなイメージの人でした。
凄い威圧感。振り返ると出演時間はとても短いしセリフも少ないのに、
インパクトが大きいったら!この舞台の最後のシーンの開放感は
この方の前のシーンがあればこそ、だと思いました。

新国立ならでは、でしょうね。こういう舞台が観られるのは。
すごく得意な作品、とは言えませんでしたが(笑)、でも新国立には
今後もこういう作品をどんどん上演して欲しいです。