去年「わたしを離さないで」を観て、すごく気に入り原作まで読みました。
その作者であるカズオ・イシグロ氏原作の舞台と言う事なので
短編というものが得意ではないのですが、観に来ようと決めていました。

夜想曲集「夜想曲集」天王洲銀河劇場 C列
原作:カズオ・イシグロ(「Nocturnes」) 演出:小川絵梨子
出演:東出昌大、安田成美、近藤芳正、渚あき、入来茉里、長谷川寧、中嶋しゅう
【あらすじ】 

ヴェネツィア、アメリカ、イタリア。三つの都市のあるホテルで交差する、音楽と人生の物語。

『老歌手』

旧共産圏出身のヤン(東出昌大)はヴェネツィアの広場で観光客相手に演奏をしていて、亡き母が大ファンだった往年の歌手、トニー・ガードナー(中嶋しゅう)を見つける。トニーは妻のリンディ(安田成美)を連れて旅行中で、今夜ゴンドラから妻にセレナーデを歌う計画なのだという。その伴奏にギタリストを探していると聞き、ヤンは喜んでその役を買って出るが―。 

『夜想曲』

実力はあるのに売れないサックス奏者のスティーブン(近藤芳正)は、妻に逃げられ、人生のどん底に。妻の再婚相手の男から慰謝料代わりに勧められた整形手術を半ばやけっぱちで受ける。ビバリーヒルズのホテルで療養中、ホテルの隣人が有名なセレブリティ、リンディ・ガードナーだと知らされる。才能もないのになぜか有名であり続けるリンディを毛嫌いしていたスティーブンだったが、ある口論をきっかけに彼女の本当の姿を知り― 

『チェリスト』

旧共産圏の故郷を出て間もない頃、イタリアで音楽家になる夢を追いかけていたヤンは、アメリカ人女性、エロイーズ(渚あき)から、演奏が間違っていると指摘される。彼女は高名な音楽家であると名乗り、ヤンに個人教授を申し出る。最初は怒りと戸惑いで半信半疑だった彼も、彼女のレッスンを受けるうち、真の音楽に近付いている実感を持ち始めていた。そんな折、ヤンは彼女が長年抱えてきた大きな秘密と対峙し―




「わたしを離さないで」のイメージで行ったので、ちょっと肩すかし
って言う感じも無きにしもあらず・・ですが、簡単な感想は追記にて。



 
原作「夜想曲集」は5編から成るのだそうですが、そのうち3作が
舞台化したという事になります。
「老歌手」に出てくるリンディが「夜想曲」と「チェリスト」に、
ヤンが「チェリスト」に出てきて、短編ではありますが、全体に
緩やかにつながっているような作品になっていました。

何ていうか・・・ファンタジーって感じがします、全体に。
一見普通の設定なんだけど、フワフワしているというか。
多分、登場人物がぶっ飛んでいて現実味が持てないのかな。

カムバックするために、若い妻を持ちたい、だから愛しているのに
妻と離婚しようとしているガードナー。
顔がイケメンになれば売れると言われて(それが逃げた妻への未練
だったとしても)手術を受けちゃうスティーブン。
11歳の頃から「自分の才能を汚されたくない」と教師を拒否し
その頃から一度もチェロを弾いていないのに「私は大家です」と
チェリストに偉そうに教えちゃうエロイーズ。

でも、個人的に一番印象に残っているのは、安田成美さん演じる
リンディ。すごく良かった。
すごく人間臭いし共感できるところがあったりするのね。
歌も演技も出来ないリンディはどんなに努力しても、才能がある人には
決して敵わないし自分がその事を誰よりもよく分かってる。
でも才能がある人は「何でも自分が貰わないと気が済まない」
「ただ頑張りだけで上を目指す人が居ることが分からない」。

でも彼女はひたすら自分のできる方法でのし上がってきた。
それがあの天真爛漫さ=生命力に現れていると思うし、
カワイイのよねー、なんかこの人が人気を得たのも分かる気がする。
最期に新たなパートナーを見つけたらしい所から彼女の
強さが分かるし、でもガードナーの曲をリクエストしていたりする
様子に少しホッとさせられたりもして。
全体にモノトーンの衣装が多い中、リンディの華やかなドレスは
とても目を引きました、スタイルもいいよね〜。

スティーブンを演じた近藤さんも良かったですね、さすがです。
プライドの高さと、気の弱さのアンバランスさと、リンディとの
出会いによってそのバランスが変わっていくあたりとか。

そしてヤンを演じた東出君は・・・誠実そうな方でした。
でもアクも華も無いので、舞台俳優としてはどうなんだろう?と
失礼ながら思ってしまいました。なんか・・ミュージシャンぽくないし。
演じるヤンという役がそういうキャラクターだったから、
そう見えただかけかもしれませんが。

切なさもあったし、上手く3作リンクされてはいたのですが、
思いのほか心に残らなかったのは、私が短編が苦手だから
かもしれません。ちょっと期待過多だったかな。