新国立劇場は通し券を買うことが普通になってきたので、
一つずつの演目についてはあまり深く考えていないのですが
これはきっと通し券を買わなくても、観に行っただろうなー
と思える1本です。

東海道四谷怪談
「東海道四谷怪談」新国立劇場中劇場9列(4列目)
13:00開演、16:10終演
原作:鶴屋南北   演出森新太郎
出演:内野聖陽、秋山菜津子、平岳大、山本亨、大鷹明良、木下浩之、有薗芳記、木村靖司、下総源太朗、陳内将、谷山知宏、酒向芳、北川勝博、采澤靖起、今國雅彦、稲葉俊一、わっしょい後藤、森野憲一、頼田昂治、花王おさむ、小野武彦
【あらすじ】
塩冶の浪人、民谷伊右衛門は自分の過去の悪行のために離縁させられていた女房、岩との復縁を舅の四谷左門に迫り、それが叶わぬとみるや、浅草裏田圃で辻斬りに見せかけ惨殺する。知らずに嘆く岩に伊右衛門は仇討ちを誓い、それに乗じて復縁する。民谷の家に戻ったが、産後の肥立ちが悪く床に伏すことが多い岩を、伊右衛門は疎ましく思い始めていた。そんななか、伊右衛門の隣家の伊藤喜兵衛から贈られた妙薬を飲んだ岩は相貌が崩れ悶え苦しみ、放置してあった短刀に刺さり死ぬ。隣家のお梅が伊右衛門に懸想し、その思いを叶えようとした祖父の企みだった。伊右衛門は家宝の薬を盗んだとして奉公人、小仏小平も殺し、岩、小平の死骸を戸板の表裏に打ち付け川に流す。やがて、二人の怨念は伊右衛門を襲い、苦しめる。 



キャストの中でも、秋山さんがお岩を演じるというのが
イメージにピッタリだと思ったし(少しエキセントリックに
なりすぎちゃうかな?なんて思いもしましたが)、そんな
秋山さんが観たかったのですよね。
でもこの作品、よく考えたら女優さんは一人だけ。
女の役も男性が演じるようです。

いつもは舞台模型が展示してあるのに、今回はどこを探しても
見つからず。何でだろう?という疑問は舞台を観たら納得です。

感想は追記にて。



 
今回はミュージカルじゃないのですが、オケピがあった(笑)。
厳密にいうと、オケピの空間が“川”として使われていたんですね。
へー、そんな使い方があるのか、と少し驚きました。
舞台装置は殆どなく、こりゃ舞台模型も無いですよね。

お目当てだった秋山さんのお岩は、思っていたほどエキセントリック
ではなかったです。蚊帳を持ち去ろうとする伊右衛門にすがって、
はがれた爪を見つめるシーンは本当に弱々しい。
自分の顔を鏡で見るのを嫌がる女心も、痛々しいし。
だからこそ、お歯黒を塗るシーンが怖い事、怖い事。 
死んだあとは殆どセリフを話す事は無かったけど、追い詰める
お岩の表情は、さすが秋山さん!と思いました。
ほんと、すごい落差のある役でございます。

そして、内野さんの伊右衛門。
色悪と言えばこの役を指してよく使われるような気がします。
ただねぇ・・私はあまりこの伊右衛門には色気を感じなくて。
だから私的にはあまり“色悪”という言葉はピンとこない・・・。
強欲で、自己中心的な短絡男・・という感じかな、言葉にすると。
色気を感じるかどうかは私の好みかもしれないのですけどね。

ただ岩が伊右衛門とよりを戻したのは、父親の仇討という目的
があってのこと、としか感じられない。
伊右衛門は今でいうDV夫でしょうが、女が逃げないのは
そのDV夫に対する“想い”があるからのはず。でもこの二人には
仇討や「体調が悪く一人では生きられない」という実利意外に
「憎いけど離れられない」のようなエモーショナルな部分が
感じられないのが、少し肩すかし。
お梅は意味もなくヤンキーに憧れるお嬢さまの域を出ない
感じだけど、そのヤンキーのどの部分に惚れたのかがなんか
ぼんやりしちゃってる感じだし。
これは内野さん云々ではなく、演出的なものに起因している
ような気もしなくはないのですが。

墨のようなものを壁にぶちまけて、それが血を連想させたり
するのですが、どうやらあれは水のようなもので、塗れると色が変わる
素材を壁として使っていて、照明を上手く使っていたようです。
時間の経過と共に滴った水滴が渇いて消えていきましたから。
でも、時間の経過と共に乾いて消えかかっていくのに、完全には
消えない状態が、伊右衛門の仕業とオーバーラップしていました。

あ、山本亨さん、久しぶりに拝見したけど、良かったです。

歌舞伎じゃないけど、言葉は歌舞伎のまま、秋山さん以外は
全員男性キャストで女役も男性が演じるというスタイル。
なんか・・・歌舞伎の定義って何なんだろう?と分からなく
なってしまいました。
最期の立ち廻りや、紙吹雪のシーンも串田さん演出の歌舞伎、
とりわけ「三人吉三」と重なって見えてしまうのですよね。

面白かったのですけど、これなら、普通の歌舞伎で観たいな
と思った1本でもありました。