これはキャスト的にも2013年公演「音のいない世界で」と
同じシリーズ的な位置付けの作品ですよね。松たか子さんも2014年の
もっと泣いてよフラッパー」以来で楽しみにしていました。
キャッチは「未来のおとなと、かつての子供たちへ」

かがみのかなたはたなかのなかに「かがみのかなたはたなかのなかに」新国立劇場小劇場
C1列(4列目) 11時開演、12時30分終演
作・演出: 長塚圭史    振付: 近藤良平
出演:近藤良平、首藤康之、長塚圭史、松たか子
【あらすじ】
夏。兵隊さんのタナカと、鏡のむこうのカナタは、おたがいの孤独に同情し、さみしさをなぐさめあう。ある日タナカは、鏡の向こうのケイコにひとめぼれ。つられてカナタもケイコに恋をする。向こうでカナタがケイコに近づくと、タナカはこちらでコイケに近づいてしまう。コイケは鏡にうつったケイコ。コイケはケイコとは比べものにならない。ケイコを取りあうふたり。それがだんだんうれしくなるケイコ。鏡をはさんで、タナカとカナタ、ケイコとコイケは行ったり来たり・・・・・・。はたして4人はどうなってしまうのでしょう?



11時開演って、歌舞伎並み(笑)。
でも子持ちの友人曰く、11時と15時開演は子供にいい時間とか。
お昼寝の時間を避けているので、集中して観られるんだそうです。
前回は子供は殆どいなかったけど、今回は前3列はすべて子供連れ、
それ以外の列にも子供連れがいて、なかなか賑やかな感じでした。

階段テーブル













劇場内もかわいいんです。「か」「が」「み」とか言いながら階段を
ぴょんぴょんしている子供も居たりして、微笑ましい♪

舞台模型
これが今回の舞台模型です。





舞台下手にはダニングテーブルがあり、上手にはラジカセの
置かれた(ダブルデッキのカセットテープだよ!)棚。
そして中央には鉢植えの置かれた「窓」があります。

開演前の注意を係の方がされるのですが、今回は上手下手と1人ずつ。
(新国立はいつも1人だったと思う)
ゆっくりと、まるでユニゾンのように注意事項を声を揃えて説明します。
途中でそれまでピタリとあっていた声が乱れるのですが、どうやらこれ
故意にそうしているのではないか。(別の日も同様だったという話と、
その後の舞台の内容からそう推察されます)
それまでは堅苦しく説明していたのに、最後だけ「楽しんで行ってね♪」
と砕けた話し方になって、思わず子供たちからも笑い声がおきます。 
退場時も左右で離れているけど、まるで行進のように足運びが揃っている。
“ 兵隊さん”たちが続々と客席を歩きはじめますが、いずれも2人ずつ
シンメトリーな動きをしているのがポイントかな。

まず言えるのはこれは首藤さんと近藤さんという、身体能力の高い方が
演じているから成り立っていると言っても過言ではない作品。
照明が点いていない時は分かりませんでしたが、中央の窓を境に
舞台の奥には、手前と全く同じセットが置かれています。
そう、鏡に映ったように。
だから、手前にいるタナカ(首藤康之)と、奥に居るカナタ(近藤良平)は
全くシンメトリーな動きをするんですが、簡単な動きじゃなくてもピタリ
と合っていてすごい。
だからこそ、ふとしたはずみにカナタが田中とは違う変則的な動きを
すると子供たちが笑っちゃうんですよね。
(それにしても首藤さんの動きはスキがなくて美しい・・・。)

ただもっと面白いのが、ケイコ(松たか子)の相手がコイケ(長塚圭史)
だという事ですね。長塚さんがピンクのドレスで髭面なのにロングヘア。
めっちゃキモい。キモくて笑える(笑)。
綺麗なケイコの真逆です。性格も内気で謙虚なケイコとは真逆で
自信家で恋愛にも積極的。
タナカもカナタもケイコとお付き合いがしたいのに、コイケがついて
まわっていて、その動きの中にもケイコとコイケの真逆さが表現
されていて面白かったですねぇ、良く考えてあるなと思う。

松さん、久しぶりに拝見しますが相変わらずの透明感。
テレビで拝見する限りでは少しお顔がふっくらされた印象でしたが
決してそんな事はありませんででした。
赤色のゴムを引っ張って、本当はケイコが手を放して相手の所で
パチンとなるはずのシーンが、近藤さんがうっかり手を放してしまった為
松さんの手元にびろ〜んと残ってしまい、「もうやだっ!」と
猫パンチ状態で投げつけているのが可愛かった(笑)。

でも、ケイコとコイケは二人で一つな、人の表と裏を表している
だけなんだなって気がついてきました。
そう思ったのは、3人が結託してコイケを海に沈めた後のケイコが
徐々に変わってくるのが分かってから。
謙虚で大人しかったのに、ナイフを渡して決闘させ、勝った方と
お付き合いをする・・とけしかけたり、「私が要らないの?」と迫ったり。
以前のケイコだったら「私なんか・・」って言うはずだもの。
自分の嫌だと思う部分も含めて“自分”なんだよねーって思ったり。

ケイコの事を「二人で分けよう」っていうのもグロいというか
シュールなんですよね。そうまでして手に入れたケイコも、
出航となれば振り向きもせず置いて出かけてしまうのも
なんだか・・。こういうのは、さすが(?)長塚さん、
って言う感じもします。

前回の作品も面白くない訳ではないのだけど、いろんなものを
詰め込みすぎて、複雑になっちゃった・・って言う印象があったので
“動き”という所を大切にした今回の舞台は、子供も楽しめて
いたようだし、私たちも楽しめる舞台になっていました。
また何年か後でもいいので、このシリーズの舞台が観られると
いいなあ、なんて思いますね。