東京で1泊して、午前は特別にやりたい事も観たいものも無く
(厳密にいうと“無い”ではなく、時間が足りない)
ホテルのチェックアウト時間を延長してもらって、ぐだ〜っとして
軽い買い物をしてから、三軒茶屋へ。

トロイラス3「トロイラスとクレシダ」世田谷パブリックシアター C列(最前列)
13:30開演、16:35終演
原作:ウィリアム・シェイクスピア   演出:鵜山仁
出演:浦井健治、ソニン、岡本健一、渡辺徹、今井朋彦、横田栄司、鵜澤秀行、斎藤志郎、高橋克明、櫻井章喜、石橋徹郎、鍛治直人、松岡依都美、荘田由紀、吉野実紗、木津誠之、神野崇、内藤裕志、宮澤和之、廣田高志、若松泰弘、植田真介、浅野雅博、小林勝也、吉田栄作、江守徹
【あらすじ】
 トロイの王子パリスが、ギリシアの美女ヘレネを奪ったために起こったトロイ戦争も既に7年。トロイの末っ子の王子トロイラスは神官カルカスの娘クレシダに恋い焦がれている。クレシダの叔父パンダロスの仲介で、トロイラスはクレシダと変わらぬ愛を誓い合い、ともに一夜を過ごす。しかし、クレシダの父カルカスは捕虜交換を希望したため、クレシダはギリシアに渡ることになる。ギリシアに入ったトロイラスは、なんと、そこで恋人クレシダがギリシアの将軍ディオメデスの求愛を受け入れるのを目撃してショックを受ける。両軍の戦いは休戦を挟んで再開されるが、トロイラスはクレシダの裏切りに絶望し怒りに任せて激しく戦う。やがて、日が落ちて、戦いは終わるが、武装を解いたヘクターはギリシアのアキレスに惨殺されてしまう。
※フライヤーは3種ありますが一番好きなパターンでアップ(笑)。



「トロイラスとクレシダ」 は以前蜷川版で観たことがありますが
何故これが“悲劇”に分類されるのかよく分かりませんでした。
「問題劇」と分類されることもあるようですが、この分類については
概ね主人公が死ぬ“悲劇”でもハッピーエンドになる“喜劇”でもない
作品を指す事が多いようですから、そう言われれば少し納得・・かな。 

「舞台が客席と地続きになる」と聞いていたので、椅子も取っ払って
「Kファウスト」の時みたいな感じになるのかな?と思っていたのですが
普通に舞台も椅子もありました(笑)。
でも舞台の下で演技をする事が多く、最前列のセンターブロック
だった私は色んな局面で、目のやり場に困ったり、ドキドキしたよ(笑)。

感想は追記にて。


 
 
舞台はすり鉢状になっており、下手側は階段になっています。
壁に見えるほど急な階段です。その“すり鉢”の底は丸い舞台。
八百屋舞台であり、かつ下手側が低くなっています。

登場シーンではその下手の上からトロイラス(浦井健治)が登場。
舞台中央で口上を述べていた小林勝也さんの近くに鎧を投げ出し、
階段を降りてきます。なんか不思議な降り方してくるな・・と
思ったのですが、階段のステップ幅が狭いため、がに股状態
というか、バレエのようになっちゃったようですね。

まあ、序盤のトロイラスの幼い事といったら・・(笑)。
確かにくだらない(といったら失礼だが、原因は女なので)理由で
始まって、7年以上続いて緊張感もなくなってきている戦争だから
「何のために戦っているのか」と不毛な感覚に襲われるのは
普通の感覚だと思うし、現代の若者であっても似たような所が
あるんじゃないかな。 トロイ側はカーキの衣装で、衣装そのものは
現代的です。

私は浦井君ファンですから、最前列でもう眼福の連続♪
本当に目の前な訳ですよ。クレシダが ディオメデスに口説かれている
様子を覗き見ているシーンなんか、クレシダから貰った白の手袋を
ギュッと握りしめたり、手の中でもてあそんだり・・と舞台の下で
ソワソワしていて、それが本当に目の前なんですよね。
何度も目の前を行き来するし、手を伸ばせば触れる距離だし(笑)。
クレシダとのラブシーンも目の前で、キャー♪ってもんですよ。
男らしいラブシーンというより、少女マンガのに描かれるラブシーンかな。
そう言えば、思わずトロイラスがクレシダの胸を触っちゃうシーンでは
客席から「あっ!」って声が上がってましたね。

この舞台の情報が発表になった時は、クレシダ役を誰が演じるのか
分からなかったのですが、ソニンちゃんで良かったと思います。
これはトロイラスよりもクレシダ次第の作品、と言う思えるので。
実は自分もトロイラスが好きだったのに素直になれない所や
計算高い大人を演じようとしても出来ない幼さや、結ばれて幸せの
お花畑状態の時、ディオメデスのアプローチに心が揺れる様子・・
悪女・・とは言い切れないんじゃないか、というのがソニンちゃん演じる
クレシダの印象でした。ここが蜷川版と大きく違うかな。
ただ生きることに貪欲だという事と、何よりもまだ若いからこそ、というか。

トロイラスを観ていると、「青春の1ページ」という印象を受けるな。
若いからこそ全力で愛して、自分の愛にもかかわらず相手から
同等の愛が返ってこない事を“裏切り”と受け止め、全力で怒り、
その怒り故に自暴自棄とも思える戦いに挑む。
クレシダからの白手袋を捨てた時にトロイラスは、闘いに意味を
見出し、少し大人に成長たというか。序盤に出てきたフワフワした
理想はあるけど、ちょっと“構ってちゃん”な面影は無くなっています。

鉄製の剣を使っているそうなので(新感線は竹らしいですよね)
重さを感じる殺陣です、振り回されると迫力がありました。
そう言えば、浦井君の殺陣を観る機会ってあまり無かったかも。
ラストにあの立ち廻りは体力的に大変何だろうと思うけど
「後に引けない」感が良く出ていました。
最近「まるで別人」という役を演じることが多いなあ、浦井君。

個性豊かなギリシャの皆様は迷彩柄のお洋服。
誰が凄いって、アキレスを演じた横田栄治さんでしょう(笑)。
濃いキャラも当然ですが、2度目に登場した時の衣装は、
1列目で観てると、目のやり場に困るんですよ・・・・(笑)。
(蜷川版の時のアキレスも“ひまわり”だけだったので、あれも
1列目だったので、どう反応していいか困りましたがね(爆)。)
蜷川版ではヘクターを演じていらっしゃる訳ですが、私の中では
もう完全にアキレス>ヘクターです(笑)。

今回密かに楽しみにしていたのが吉田栄作さんや渡辺徹さん。
(渡辺徹さんは以前拝見していたようだが、殆ど覚えていない)
吉田栄作さんはいわゆる“モデル出身のトレンディ俳優”の
イメージが強かったけど、実直で誠実なヘクターはピッタリ。
渡辺徹さんは、バラエティで拝見することが多かったけど、やはり
とうか、さすが文学座の方ですね、と唸っちゃう安定感がありました。

今回の舞台を観て、改めて蜷川版の録画を観たのですが、
同じ戯曲なので台詞は基本的には同じです。
前回はあまり“悲劇”の印象がなかったのですが、今回は
ヘクターが殺され、形勢不利なギリシャとの争いに身を投じていく
姿に、悲劇を感じたりしました。クレシダとのことが無ければ
出陣を強く主張する事もなかったでしょうから。
同じ作品でも受ける印象は本当に変わるものですね・・と思いました。 
以前よりはこの作品への苦手感が払拭された気がします。