上野で午前中過ごして、向かったのは三軒茶屋です。

グッドバイKERA・MAP #006「グッドバイ」世田谷パブリックシアター
F列(5列目) 13:00開演、16:10終演
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:仲村トオル、小池栄子、水野美紀、夏帆、門脇麦、町田マリー、緒川たまき、萩原聖人、池谷のぶえ、野間口徹、山崎一

【あらすじ】 
田舎に妻子を残し単身東京に暮らす男・田島周二は、雑誌編集者という体裁の裏で闇商売でしこたま儲け、 はたまた何人もの愛人を抱えているという不埒な男。 しかし一転、妻子を呼び寄せ闇商売から足を洗い、真面目に生きようと愛人たちと別れる決心をする。田島が愛人と別れるため手を組む美女・キヌ子、彼の多くの愛人たち、そして彼らを取り巻く人々をKERAが新たな視点で描き出す。
 

この話が太宰治の未完の作品がベースになっている事は
2013年に北村想さん版が上演されたので知っていました。
その際はスケジュールやらキャスト的な好みやらがあって
観には行っておりません。ただ後日映像で観る機会があって
それを観たんですが・・あまり好みの作品ではなかったんですよね。
 
だから今回、正直あまり乗り気ではなく、行くかどうか随分悩みました。
とはいえ、今回はケラさんが脚本を書かれるということなので
どんな感じに変わるのだろうか、という興味が勝ったという感じ。
感想は追記にて。


クロックムッシュ
世田谷パブリックシアターに行くと、どうしても食べちゃうのよね
焼きたてのクロックムッシュ。
友の会でチケットを頂いているのでコーヒーは無料だし、この
クロックムッシュも200円なのに満足感高いのですよ。
そう言えば最近は“焼きたてスコーン”をあまり見かけないような・・。 
 

 
 
以前観た「グッドバイ」とは全く別の話でした。
設定ですら違う部分が多くて、いったどこまでが太宰の作品なんだろう?
と思ったらこんなサイトがあり、太宰の原作部分が読めました。

太宰の原作がある部分は限りなく原作に忠実なのに驚きました。
とすると、北村想さんバージョンはかなりアレンジされているという事か。
原作は水原ケイ子(挿絵画家)の家を訪問するシーンで終わって
いたので、そこからがKERAさんのオリジナルって事なんですね。

ウェルメイドな喜劇を個性のある俳優が上手く演じていて、とても
面白かったです。KERAさんらしい毒っ気が少ない、という評もあり
そこも納得できるのですが、それを差し引いても凄く面白かった。
元々“喜劇”とか“コメディ”というジャンルはあまり得意ではない
のですが、本当によく笑いましたから。
今回もKERAさんらしいスタイリッシュな映像も素敵でした。

KERAさんの脚本/演出も素晴らしいのですが、俳優陣が良かった!
個性が強い役者さんが多すぎて、門脇麦さん、夏帆さんの印象が
薄くなっちゃってますけど、それはもう仕方ない。
ナイロン100℃もですが、KERAさんは女性の描き方や女優さんの
キャスティングがお上手だと思います。

まず何と言っても小池栄子さんでしょう!
小池さんは何本も拝見していますが、ガッカリさせられた事が無い。
原作でもキヌ子は「鴉声」となっていたので、終始ダミ声でしたね。
ガラっぱちで、ダミ声で、品が無くて、大食漢で、金にがめつくて
でも情に厚い所があって、本当に愛すべきキャラクターです。
あの思い切りの良い演技もですが、掛け合いの間がいいんですよね。

そして池谷のぶえさんですね。
事前にかなり「振り切れた演技」をされているらしい、という話は
目にしていたのですが、彼女も本当に凄い、いっぱい笑ったわ(笑)。
当然、全然子どもではないのに、子供に見えてくるんだもの。
スカートをまくりあげて顔を隠したりとか、もう可愛くって。
だから最後のシーンで、ぬいぐるみを父親に渡すシーンはちょっと
じーんとしちゃったりもしました。

緒川たまきさん、今回は結構チャキチャキしたお役でしたが
私は彼女のこういう演技が結構好きなので、満足満足。

主役の田島を演じたのは仲村トオルさん。
自意識過剰で、優しいけど情けない。でもそういうダメな所があるから
逆に女性たちにモテるのかもしれないな、と思える人。
彼から愛人に「グッドバイ」と言って回るはずだったのに
片っ端から愛人、妻からも「グッドバイ」と言われちゃう田島。
でも憎めないんですよね。

山崎一さんの飄々とした感じも含めて、テンポが良くて
個性が活きていて、役者さんたちがみなさん楽しそうに演じてて
そして幸せな気分で幕になる作品。
チケ取りの段階では悩んだけど、パスしないで観に行って
本当に良かったです。