三軒茶屋から移動して、今回の遠征最後の観劇はこちら。

red「RED レッド」新国立劇場 小劇場 C2列(6列目)
19:00開演、20:30終演
脚本:ジョン・ローガン  翻訳・演出:小川絵梨子
出演:小栗旬、田中哲司
【あらすじ】
1958年のある日。20世紀を代表する表現主義派の画家として、名声を手中にしていたマーク・ロスコ(田中哲司)のアトリエに、1人の画家志望の青年が訪ねてくる。NYの有名レストランに巨大な壁画を描くという大きな仕事のオファーを受けたロスコが雇った助手のケン(小栗旬)であった。まずロスコがケンに要求したのは、毎日朝から晩まで、キャンバスを張ったり、絵の具を混ぜたり、絵筆を洗ったり、画架を立てたり、下地の色を塗ったり、と実際に「絵を描くこと」とは無縁な「作業」ばかり。しかし、その作業を通じ、ロスコの妥協知らずの創作美学を容赦なく浴びせられ、追いつめられていくケンと、己の芸術的視点に迷い、社会の評価への怒りや疑問にいきり立つことで、創作エネルギーをかき立てていくロスコは、時に反発し、対立しながらも、いつの間にか共に絶妙のタイミングで「作業」を重ね合わせていく・・・。苦悩と葛藤の果てに、2人は理想の<赤>を追い求められるのだろうか?!最後に2人が導かれていくのは、崇高な芸術的な高みなのか?はたまた、理想に裏切られた絶望の淵なのか? 


美術、ましてや抽象表現主義の画家であるマーク・ロスコの事は
全く知らず完全にキャスト狙いでの観劇でした。
観終わってからマーク・ロスコの事を調べたのですが、
事前にもう少し知識があっても良かったかなあ。
でも、何も知らずに観ても十分楽しめましたけどね。

感想は追記にて





 
この作品に出てくるマーク・ロスコのエピソードは殆ど史実に
基づいているようですね。ユダヤ人である事、ポートランドに移住した事
人の作品と並べられることを嫌う事、レストランの壁画のオーダーを受け
作製したものの料金を返して、辞退した事。 

この作品に出てくるケンはフィクションの人物であり、特にモデルも無い
と言う事ですが、このケンが居るからこそ、彼との会話や行動を通して
ロスコの人となりが分かり易くなっていたのが面白かったですね。

ロスコはいわゆる私の持つ“芸術家”のイメージそのまんまという
印象でした。理屈っぽくて、理解しようとする人を拒絶するし、
自意識も過剰で、他人を認めることが苦手だけど繊細な所もある。 
平たく言えば、不器用で頑固なんです。

ケンはロスコの理解者でもあるけど、実は芸術家ではないのだな、
と思うところがありました。
アンディ・ウォーホール等の台頭についてまくしたてるロスコに
「そういう絵を、人は見たい事もある」みたいな事を言うシーンが
ありましたが、そもそも人(クライアント)が求める絵を描く、
と言う事自体が既に“サービス”であって“芸術”ではないんじゃないの? 
“芸術”は見る人の好みとは関係なく、作者が表現したいものを
表現するというものではないの? と。
コマーシャリズムとアートの関係はよく語られる所ですけどね。

ただ、ケンがロスコの理解者であったことは間違いが無いと思うし
あくまで“芸術家”であるロスコをケンがリスペクトしていたのも
間違いないと思います。
でなければ、とっくにロスコの元を去っていただろうし、レストランの
仕事を断ったロスコに「そうでなくちゃ」とケンは言った訳だし。
またロスコもケンを認めている部分があったと思うんですよね。
最初は「話すな!」と言ったりしていたけど、ちゃんと意見を
聞くようになっていますから。
ロスコは最期に突き放すような形でアトリエを追い出したけど
自分とは進む道が違う、新しい時代がケンの前に開けている
と言う事が分かってとった、不器用なロスコらしい親心に溢れる
言動だなあ、と思います。そしてそれを受け止めて一礼をして
アトリエを去ったケンを観て、二人の関係を見た気がしました。
少なくとも“絵画”が二人の共通言語だったんですよね。

印象に残ったのは、下絵を作製し、後片付けをしながら語った
ケンの生い立ちと、「血は乾くと色が変わる」というセリフ、
そしてその下絵が(照明の関係で)どんどんとどす黒い色に
見えて、血を連想させたことです。
あの色の絵の具をつけて倒れているロスコを見つけて
「血じゃないか」とケンも慌てていましたからね。
その前に自殺をほのめかしていたので、私も一瞬自殺したか?
と思いましたが(笑)。でも、ロスコは本当にその後自殺で
生涯を終えたと知って、溜息が出てしまいました。
芸術家を扱った作品を観るたびに思いますが、芸術家と言うのは
本当に生きにくいものですね。

舞台での小栗旬君は元々「間違の喜劇」「タイタス・アンドロニカス」
の頃から好きで、殆どの舞台を観ています。
今回は久しぶりに「おおっ」と思わされました。
最近は悪くは無いけど印象に残る作品も無かったなあ(というか
どれも似ている)というのが正直な感想だったので。

膨大なセリフをものともせず、テイクアウトフードを飛び散らせ
ながらの田中哲司さん、さすがでした。
台詞中心の現代の翻訳劇は難しい・・と感じるものも多いのですが
この作品は最後まで緊張感をもって、集中して観ることが出来ました
台詞の量自体は多かったんですけどね。役者さんとセリフが
合っていたからなのかなー。訳も良かったのかもしれませんが。

DIC川村記念美術館には、マーク・ロスコ専用の「ロスコ・ルーム」が
用意されていて、7点のシーグラム壁画が見ることが出来るとか。
行ってみたいんだけど、千葉県かあ・・・遠いなぁ・・・。

ちなみに私にとっての赤は「スカーレット」と「クリムゾン」かな。