今回の大阪遠征の2本目はこちらです。
東京で1度観ていますが、 7月なので随分前な気がします。

阿弖流為歌舞伎NEXT 「阿弖流為」松竹座 3列目
16:30開演、20:25終演
脚本:中島かずき   演出:いのうえひでのり
出演:市川染五郎、中村勘九郎、中村七之助、坂東新悟、大谷廣太郎、中村鶴松、市村橘太郎、澤村宗之助、片岡亀蔵、市村萬次郎、坂東彌十郎
【あらすじ】
都では、蝦夷の“立烏帽子(たてえぼし)党”と名のる盗賊一味が人々を襲っていた。それを止める一人の踊り女。彼女こそ立烏帽子党の頭目だった。町を襲う盗賊が偽者であること暴くため変装していたのだ。そこに都の若き役人、坂上田村麻呂と“北の狼”と名のる男も現れ、偽立烏帽子党を捕え、2人は互いに相手に一目置くようになる。だが、北の狼と立烏帽子は、神の怒りを買い、故郷を追放された男女だった。 北の狼は、阿弖流為(アテルイ)。故郷を守るため、蝦夷の里に戻り、荒覇吐神の怒りをおさめ、帝人軍と戦う。彼の帰還を快く思わぬ蝦夷の男、蛮甲の裏切りにあいながらも、いつしか蝦夷の新しい長として一族を率いていく。 一方、田村麻呂も、帝の巫女である姉、御霊御前(みたまごぜん)や右大臣藤原稀継(ふじわらのまれつぐ)らの推挙により、蝦夷大将軍として、蝦夷との戦いに赴くことになってしまうのだった。



当初、大阪公演は来週末に1度観るだけの予定でチケットを
手配していたのですが、ふと考えると、「100万回生きたねこ」を
観た後でも間に合うぞ!と気づきました。
少し悩んだんですが、まだチケット手配も間に合った事と、
明らかに自分の好みだと分かっている舞台なんだから、ここは
わざわざ公演をしている大阪に来ていて、観ずに帰るなんて
もったいないじゃないか!と開き直り、観劇となりました。

東京公演では1階のほぼ最後列に近い位置でしたので、
前方席で観ると、きっと前回気づかなかった事等がいっぱい
分かるだろうな〜と楽しみにしていました。
感想、偏りつつ長いです(笑)。ご興味のある方だけどうぞ。 


 

今回は3列目センター。前回が後列だったので、大阪では
劇場の中ほど、前方とバランスよく観たかったのですが、
翌週に観るように手配した席がどこなのかが分からなくて、
とりあえず前の方を取ったら、次回は最前列だったという・・(爆)。
中盤より後列がいいのは、両花道が観やすいという事と、
ラストシーンの灯が見られることかな。
花道のほぼ7:3の位置だったので、二人が立ち交互に話されると、
左右にブンブン首を振らねばならず、お隣の人と至近距離で
「こんにちは」と見つめあう事になってしまい、ちょっとバツが
悪かったりします。これは想定の範囲内ですけどね。
ただ、そういう欠点を補っても余りある程の迫力と、役者さん達の
目力に圧倒された舞台でした。
 
前に観た時よりもはるかに、田村麻呂と阿弖流為の武士として
“強い者と戦う”事への熱い思いが伝わってきます。
それぞれに自分たちの大義のもとに戦っていたのだけど、最後は
田村麻呂が“胡散臭い”という「大義」の為でなく、「一武士」としての
二人に戻って戦う姿が観られて良かったな・・とつくづく。
 
そして、前方席だからこそ、細かいところまで観られて満足感高し。
阿弖流為と立烏帽子の二人が初めて出会って、アラハバキの剣を
阿弖流為に返すとき、七之助丈は剣の柄を持つのではなく、左手の
手の甲に剣を載せて添えて差し出していたのが素敵でした。

また阿弖流為に「お前は誰だ」と言われた時の七之助丈はちょうど
客席に背を向けていたのだけど、そのセリフの時にグっと背中が
一回り大きく見えたような気がしたのには私自身が驚いちゃった。

阿弖流為と田村麻呂の最後の立ち合いの時、自ら討たれた
阿弖流為の目はまさに「目が語っている」という言葉がぴったり。
というか「目が語る」というのはこういう事か!と初めて思い至った、
あの時の染五郎さんの表情ったら・・。
「これでいい」とも「後は頼んだぞ」とも「出会えてよかった」とも
言っているようで、目が離せませんでした。

そういう点では、亡くなった鈴鹿が出て田村麻呂に語り掛ける
シーンも良かったですねぇ。「お前の望みを叶えてやれなかった」
と謝る田村麻呂に、首を横に振るシーンは「いいんです、分かってます」
「ありがとうございます」といった言葉が聞こえてきそうでした。
 
とにかく前方列なので、その迫力のすごい事ったら!
アラハバキに会いに行き、18Mもあるという大きな龍神と対峙する時、
あの龍神が舞台の最前列からはみ出す程で、思わず軽くのけ反り
そうでした。こういう手法は歌舞伎ならではですが、すごく効果的です。
 
市村萬次郎丈演じる御霊御前と坂東彌十郎丈演じる藤原稀継は
今回も安定のクオリティ。
気高い女性って歌舞伎の女形の方が演じられると所作を含めて
素晴らしいです。今回ネイルアートをしていらっしゃって、左右の
ラインストーンが照明でキラキラ光ってすごくきれいでした。
左手は人差し指、右手は中指と薬指。位置も数もアシンメトリーに
なっていました。
彌十郎丈は優しい表情がとても印象的な方ですが、優しい表情
だからこそ、恐いんですよね・・。心底の悪人って言う感じで。
 
あと初回に観たときから密かに気になっていたのが、亀蔵丈演じる
蛮甲です。
本人は“生き意地が汚い”と言っていたけれども、私はどうも嫌いに
なれなくて。結局彼は“生きのびる”事を自分の第一優先事項に
しているだけなんですよね。とても人間臭い。
阿弖流為にとっては蝦夷の未来が一番だっただろうし、田村麻呂
にとっては立場上、都の平安が一番だっただけで。
前回は遠くてよく見えなかったけど、熊(熊子)の皮を上着として
身にまとい、寝間にはピンクのリボンのついた熊の頭の剥製?を
壁に掛けているなど、情に厚いところもあるんですよね。
 
前回は全く判別不能でしたが、アクションクラブの川原さんも
今回は視認できました(笑)。いったい何役を演じていらっしゃるの?
というほどですね。
そして、坂東新呉丈が逞しくなっていて(女形さんなので“たくましい”は
相応しくないかもですが、安定感が増していて)初めて拝見した
頃からは本当に雰囲気が変わったなあと思います。

本当に迫力と、勢いと、熱に溢れた舞台。
歌舞伎と、現代劇の要素が違和感なくミックスされて見応え抜群。
今回前方席で観て、圧倒されてしまいました。
この舞台を観られて本当に良かった、と改めて思ったのでした。

観られるのはあともう1回。
もう1度しか観られないのが残念ではありますが、どうせ私の
ことだから、観れば観るほど観たくなるだろうって分かっていたので
スケジュールを埋めておきました、これ以上増やせないように(笑)。
あと1回を大切に観ることにしたいと思います。