2週連続でのお江戸への観劇遠征。まずはこちらから。

パッション「パッション」新国立劇場中劇場 7列(2列目) 
13:00開演 15:30終演
脚本:ジェームス・ラパイン  演出:宮田慶子
作曲:スティーブン・ソンドハイム 
出演:井上芳雄、和音美桜、シルビア・グラブ、福井貴一、佐山陽規、藤浦功一、KENTARO、原慎一郎、中村美貴、内藤大希、伊藤達人、鈴木結加里、東山竜彦、吉永秀平、谷本充弘、一倉千夏、白石拓也、小南竜平、岩橋大、荒田至法
【あらすじ】 
19世紀のイタリア、ミラノ。騎兵隊の兵士ジョルジオは、美しいクララとの情熱的な逢瀬に夢中になっている。しかし、ほどなくして彼は、ミラノから辺鄙な田舎への転勤を命じられ、その地で上官リッチ大佐の従妹フォスカに出会う。病に冒されているフォスカは、ジョルジオを一目見て恋に落ち、執拗なまでに彼を追いかけるようになる。クララへの愛に忠誠を誓い、フォスカの愛を受け入れないばかりか、冷たくあしらうジョルジオだったが、やがて......。


新国立の演目だし、井上芳雄氏が主演だし・・と言う事で
行かない選択肢は無いですから(笑)。
新国立の中劇場のチケットがこれだけ売れる演目って、
なかなかないんですよね、さすが芳雄兄さんの集客力(笑)。

劇場に着くと、かつて見たことが無い程の人の数。
めっちゃ若い女の子ばかりで、「うわー、井上氏のファンって
こんなに若い子ばかりなの?」と思ったら、某女子大学の
学生さんたちの団体観劇が入っていたようです。
もともと井上芳雄氏のファンは日ごろ初台には来ない・・という
方も相当数いらっしゃるでしょうから、いつもの客層とは違い
驚くほど客席は若い女子ばかりになっていました。


 
 
ビジュアルイメージや、過去にトニー賞で「作品賞」「脚本賞」
「楽曲賞」等を受賞していた作品、という情報などから、勝手に
もっと格調高い作品なのかなーと想像をしていたのですが
なんか・・・昔の大映テレビのドラマみたいだな、と思いました。 
一幕が終わった時に思わず一緒に観た友人に言ったのは
「恐えぇよ・・」でしたからね(笑)。
 
幕が開くと、いきなりのベッドシーン。
これが本当に違和感がなくて、こういうシーンを違和感なく
演じられるというのは井上芳雄くんがいい意味で年齢を
重ねてきたんだろうなあと思います。 
予め芳雄氏がインタビュー等でもコメントしていましたが、
楽曲に関しては“歌い上げる”タイプのものが殆どないことと
メロディーラインを取りづらい曲が多いように思うので、歌うのも
難しいと思いますし、聴いているほうも「こういう曲があった」と
あまり耳に残らないかな。
「歌はあまり歌わずストレートプレイに近い」といったコメントも
あったと記憶していますが、そこそこ歌もあったと思います。
思い返すと東宝ミュージカルであれば当然のように起こる、
歌の後の拍手はとうとう1度もありませんでした。
もともとこの拍手が苦手だったので、集中して観られて、
私にとっては良かったのですが、その辺りの違いが「歌を聴いた」
という充実感の違いなのかもしれませんね。 

とにかく、ジョルジオがダメダメすぎでフォスカが怖すぎです(笑)。 
確かにジョルジオはフォスカに一方的に迫られて、軍医の
タンボウッリに半分嵌められたとは思いますが、結局は彼の
中途半端な優しさがねぇ・・。
いくら死にそうだからと言っても、言われるままにベッドに
一緒に横になって、一緒に寝たりとかしたらダメでしょ。
だから、どうしても私には自業自得って感じにしか思えなくて。
「クララとは結婚しないの?」と聞かれ「人妻なので」と答えた時
(クララとジョルジオの会話で想像はしていましたが)
ジョルジオに対して決定的にガッカリしました(笑)。 

そういう、一見キッチリしているけど実は情けない・・みたいな
役という事もあって、芳雄氏の王子ぶりはあまり発揮されは
しなかった気がしますが、苦悩する姿はなかなかです。
出来ればもう少し彼の歌唱力が堪能できるような、歌い上げる系
の曲を聴きたかったかな。最後の1曲ぐらいでしたものね。

じゃあ、フォスカに同情するか?と言われるとそれも無いです(笑)。
っていうか怖いし、むしろ嫌悪感を感じるぐらい。
例え、彼女にどんなに不幸な過去があっても、です。
これ、今の日本だったら完全にストーカー規制法でアウトでしょ。
何を言っても、ちゃんと「貴女を好きになる事は無い」 と言っても
怒っても、へこたれず、「恋人がいる」と言っても勝手に
「私のライバル」とか言っちゃう辺り、どういう思考なんだろう?
そこまで強い心があるなら、なんで病んでしまったんだろう?
そういう疑問からも、不気味に思えて仕方なかったです。
元々はシルビア・グラブさんはお綺麗な方なのに、よくここまで
不気味な女性を演じきったなぁ、と思います。
観客まで「恐い」って本気で思わせたんですから(笑)。

あとはクララを演じた和音美桜さんはレミゼの印象が強く、
レディ・ベスでのアン・ブーリンも印象的でしたが、やっぱり歌が
お上手ですよね。(今回は歌ウマさん揃いです)
宝塚の娘役ご出身という事もあると思いますが、気品があって
立ち居振る舞い、ドレスを“着慣れている”感がバッチリです。
クララは当時のある階層の女性一般的な姿なんでしょうね。

「愛は与えるもの」「愛は二人で思いあうもの」等と言ってフォスカ
を拒絶していたジョルジオが 「私はあなたの為になら死ねる」
「愛とは命も捨てられるもの」と言うフォスカに心動かされます。
でも・・これは個人的にどうなんだろう?と思う。
フォスカはもう命しか差し出すものが無い状態だったわけだし
結局ジョルジオは「愛する」事よりも「愛される」事を選んだ訳で、
個人的には「何だかなぁ」と思っちゃうのですよね。
ただ・・フォスカが命を落とす直前に書いた手紙を読み終えた
ジョルジオの表情がとても印象的でした。
満足しているというか、ホッとしているというか、生気が蘇った
感じと言うか。

その顔をみたら、まあ「お互いが良いなら、それでいいか」
と思った私です(爆)。

いわゆる東宝ミュージカルのような壮大な作品を好む方にとっては
こういう作品は面白みが感じられないかもしれませんね。
私は「好き」とは言えませんが、アリだとは思います。
でも好みが分かれるかもしれませんねー、新国立の作品らしいと
言えばらしい気もします。

パッション舞台模型
これが今回の舞台模型です。