留学から戻られた長塚氏の作品はどこか近寄りがたいものが多く
つまらない訳じゃないんですが、かといってすごく記憶に残るものが
あるかというと、そこまででもなく。なのでこの作品も最初は
どうしようかなあ、と思ったのは確かです。

TWINS「TWINS」パルコ劇場 Y列(2列目)
14:00開演、16:00終演
作・演出:長塚圭史
出演:古田新太、多部未華子、りょう、石橋けい、葉山奨之、中山祐一朗、吉田鋼太郎

【あらすじ】
美しい海辺の大きな家に暮らす家族。
海水浴を楽しみ、海産物に恵まれた穏やかな生活を送っている、ようにみえる。視界に広がるこの美しい海の景色ははたして本当の現実なのか。追憶のなかを漂う家族が幼い双子に見たものとは−。




でもやっぱりこのキャストですからねぇ、やっぱり観たくて。
それにしてもパルコ劇場はずいぶん久しぶり。(今年初めて?) 
以前は、1年で一番よく通った劇場だったんですが。

あ、これはPARCOでの舞台が面白くないという意味ではなく
PARCO製作の舞台は地方公演をしてくれることが多いので
そちらで観ることが多い、というのが理由です。

・・・感想が難しい作品だな・・・。

 
 
幕が開くと、舞台上には多部未華子ちゃん。
手はピアノの鍵盤をたたいているらしく、ピアノの旋律が流れて・・。
この時に何となく「私をはなさないで」を思い出したりもしましたが
多部ちゃんならではの空気感なのかもしれません。 

トム(中山祐一郎)やローラ(りょう)がアイランドキッチンで会話を
しています。市場で何を買ったとか、誰がジャムを作っているとか。
当たり前のように「食べる?」とパンをイラ(多部未華子)やら
タクト(葉山奨之)に勧めてくる・・・・だけの事なんですが、勧められた
2人の反応が不自然な事に気づきます。
珈琲だけを飲む事にしたイラを見つけた ハルキ(古田新太)が
猛烈にイラを叱り、ペットボトルやらシリアルっぽいものを差し出す−。

どうやら、普通の食物は″食べられない”状態のようです。
原因が何かは明確にはされませんが、恐らくは核かそれ以外の
汚染物質のせいなんでしょう。
水道水もダメ、野菜もダメ、外に行く時は必ずマスクをし、
海で泳ぐなんてできないし、海産物なんてとんでもない・・・らしい。
そしてその″汚染”は今や日本だけではなく、地球規模のものらしく
今安全と言えるのは、南半球のオーストラリアぐらいしかなく、
世界中からオーストラリアに移民が押し寄せ、ハルキも何とか
イラをオーストラリアに密航させるべく、その金策のために実家に
戻ってきていた、という事のようです。

そして、この家の住人は皆が何かしら″不穏”な空気を放っています。
いつもガウン姿で、不気味に青い「海水」(実際は違うようだけど) 
液体を飲み続け、いつか泳げるようになって、海に消えた妹を
探しに行きたいと思っているリュウゾウ(吉田鋼太郎)。
″人魚のように”泳ぐことが出来て、意識の無いダイシチの声が
聞こえるという看護師らしいローラ。
自分の子供を抱こうともしないタクトと、そんな汚染された土地でも
平気で子供を連れだすユキ(石橋けい)。
唯一トムだけが明るく、皆のバランスを取っている感じです。

何とかお金の欲しいハルキはバットを振り回し、リュウゾウと
ぶつかり合うんですが、さすがに凄い迫力です、二人とも声デカいし。
そう言えばこの二人の共演は初めて観たんじゃないかしら?
こんなに沢山舞台にご出演の二人なのに・・意外。
もっともっとこの二人のガチなぶつかり合いが観られるのかな?
と思っていたら、イラがオーストラリア行を求めていない、
という事が分かり、親として気負っていた部分が解放されたが故か
すっかり仲良くなり、コメディテイストになっていきます。
まあ・・・分からんでもないのですが、ちょっとこの唐突感は・・・。

汚染されたものを口にしたからと言って、直ぐに影響がある訳では
なさそうなので、どこまで「食べない」と決めて行動に移すか次第。
この″普通(だけど汚染されているであろう)物を食べる”事が一つの
踏絵というか、スイッチになっているようですね。
一度食べてしまえばもう気にならず、解放されたように明るくなる。
そもそも、食べて短命、食べずに長寿、どちらが幸せなのか。
もし私なら、さっさとボンゴレビアンコを食べるほうを選ぶと思うな。
ただ生命を長らえるだけでは・・・。
そのせいで短命になったとしても、美味しいものを食べて
「美味しいね」と笑って死にたいな、と思うのです。
汚染を気にして外出するより散歩をしたり、お祭りに参加したり。

そうそう、ボンゴレを作るときには普通にニンニクを炒めるいい香り
が漂ってきて、フライパンからも蒸気が上がっていました。
貝も入っていたようなので、ちゃんとボンゴレを作っていたようです。

この舞台のタイトルは「TWINS」、″双子”です。
たぶん、タクトとユキの子供たちの事ですよね。大人しくてあまり
泣いたりもしない二卵性双生児の男子と女子。
終盤でイラはこの双子を海に″流した”と言います。
「探さなきゃ」とか言う割に、「そういう事もあるよね」ぐらいのノリで
そもそもあの双子は本当に「生きて」いる「人間」だったのか?
と疑いたくなるぐらい。
最後の最後には半漁人のように成長(?)して、戻ってきて
ローラと会話している所で幕−なんですが、タイトルになっている
にしては、″双子感”があまりない・・のですよね。
海は生命の源・・って言う印象は持ちましたけどね。
きっと双子もユキも″死んだ”んではないんだろう、と。
電力が止められても、「キレイだ」と景色を楽しみながら食事をしている
一家の様子も含めて、希望が見えると言えなくもない、そんな舞台でした。

決してこういう作品が嫌いという訳じゃないんですけど、なんか
とっ散らかってしまっているというか、詰め込みすぎて整理が
出来ていないんじゃないかしら?なんて印象。
それは役者さんにも言えていて、鋼太郎さんの良さが何だかあまり
活きていない気もしたんですけど・・・ね。