この公演を知ったのは、新国立の「東海道四谷怪談」の際に
折り込まれていたフライヤー。その時から「行きたいっ!」と思っていました。

四谷怪談「通し狂言 東海道四谷怪談」国立劇場 14列
12:00開演 16:45終演
出演:松本幸四郎、中村錦之助、市川染五郎、市川高麗蔵、中村松江、坂東新悟、大谷廣太郎、中村米吉、中村隼人、澤村宗之助、松本錦吾、大谷桂三、片岡亀蔵、市村萬次郎、坂東彌十郎、大谷友右衛門ほか








発端:鎌倉足利館門前の場
序幕
 第一場:浅草観世音額堂の場
 第二場:浅草田圃地蔵前の場
 第三場:同 裏田圃の場 
二幕目
 第一場:雑司ヶ谷四谷町民谷伊右衛門浪宅の場
 第二場:     同       伊藤喜兵衛宅の場
 第三場:元の伊右衛門浪宅の場
大詰
 第一場:本所砂村隠亡堀の場
 第二場:深川寺町小汐田又之丞隠れ家の場
 第三場:本所蛇山庵室の場
 第四場:鎌倉高師直館夜討の場



″怪談”というと夏のイメージがありますが、今回は12月に
上演する事が“必然”だったんだー・・という事が観て分かりました。
私のように、歌舞伎や歴史に詳しくない者にとっては、とても
興味深く観られる企画でしたね。

舞台の両袖には黒地の「だんだら模様」の幕が張ってあります。
この模様と言えば、忠臣蔵・・・。

 
 
 
「東海道四谷怪談」については、今年新国立でも上演されましたし
何となく知っている・・・つもりではいました。
(コクーン歌舞伎は観てないんですよね〜・・・)
また、忠臣蔵と関連がある、という程度の事は知識として
知ってはいましたが、逆に言うとその程度だった訳です。

開演になると、スッポンから染五郎さんが登場です。
え?スッポンから?誰(の役)なの?と思っていると「鶴屋南北です」
とのこと。元々は仮名手本忠臣蔵と東海道四谷怪談はセットで上演
されていたモノだという事などを説明してくれます。
その後、鎌倉足利館門前の場の後で再度登場して「市川染五郎 から
上演許可の手紙を貰った」等との導入に、笑わせてもらいました。
この鶴屋南北のおかげで、少なくとも私にとっては分かり易くなった
と思います。ちょっとシャレも効いてますしね。

今回は最初と最初が「忠臣蔵」のエピソードになっています。
こちらも「仮名手本忠臣蔵」と関連があるんだ、という心構えで
観ていますので、伊藤家と伊右衛門の関係は塩谷と師直の関係
も加味しなければいけないという事など、既に知識としては
知ってはいても四谷怪談だけを観ていると、つい置いてきぼりに
してしまいがちな部分にも意識が向き、より楽しめたと思います。
そもそも「鎌倉足利館門前の場」はこの作品の為に書かれた
もののようですが、このおかげで 後半で小仏小平に感情移入が
出来たな、とも思います。

染五郎さんは何役も演じていらっしゃり、さらに早替わりもあって
見応えもバッチリ。
私はあまり染五郎さんの女形を拝見する機会がなかったので、
それだけでもちょっとお得感がありました。
お歯黒を塗るシーンについては、新国立で演じた秋山菜津子さん
の方が断然に怖かったんですけど(笑)、貰った薬を大切に飲んだり
立ち上がってフラつくシーンなどは、よく観察してるなーなんて
思ったり(笑)。
でも髪を梳いて、顔を上げたときの怖い事ったら・・・(笑)。

そして、出かけるときに羽織をさっと伊右衛門に着せたり、
貧しくなっても羽織は質に入れなかったり、と、お岩はプライドの高い
良妻ぶりもみせますが「敵討ちは?」と伊右衛門に催促するような事も
無かったです。
そういう意味では、あまり依存心を見せない女性って感じでした。
だから、伊右衛門がお梅と夫婦になると決心したのは、
お岩にウンザリしたと言うよりは、伊右衛門の欲の方が大きいんだな
という印象を受けましたね。
幸四郎丈の伊右衛門は、あまり「色悪」という感じに思えなかったので
そういう意味で、ちょうどいい塩梅だったかな、と。
なんか・・色気っていうより、本当に心根が腐ってる感じがするの(笑)。

戸板返しとか、提灯抜けとか、早替わりなどの見所もあるし、
宙乗りのお岩が、首に手ぬぐいを掛けて引き上げ、縊れ殺すシーンは
思わず「おおっ」と言ってしまったし、真っ暗で背後からいきなり大きな
声を出されてビクぅっとしたり、エンタメとして楽しむこともできました。
(2階ではキャーとか声が上がってたので、何かあったんでしょうね。
 14列目だと2階は全く見えなかったので、分かりませんけど)

彌十郎さんの憎たらしい役と老け役もいいし、隼人くんの目力も
14列目からでも堪能できたし、米吉君のお梅はカワイイし、新悟くんの
お袖は綺麗だけどプライドもあってとても良かったし、
あ、萬次郎さんの小憎たらしい感じも良かったしな〜。

お袖ちゃんの扱いが少なくて、一緒に観た友人は歌舞伎を殆ど
知らないので「で、妹はどうなった訳?」と疑問に残ったようですが。
今回の企画で、「東海道四谷怪談」が3Dで楽しむことが出来た。
そんな感じの舞台になりました。
いやー観て良かった。

・・・そう考えると、新国立で観た「東海道四谷怪談」は何だかなぁ・・。