今回の遠征の〆であり、かつ2015年の観劇納めはこちら。

ラインの向こう 劇団チョコレートケーキ with バンダ・ラ・コンチャン
「ライン(国境)の向こう」東京芸術劇場シアターウエスト C列
14:05開演、16:20終演 
脚本:古川健   演出:日澤雄介
出演:戸田恵子、高田聖子(劇団☆新感線)、小野賢章、清野菜名、浅井伸治、岡本篤、西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)、谷仲恵輔(JACROW)、寺十吾(tsumazuki no ishi)、近藤芳正(バンダ・ラ・コンチャン)

【あらすじ】 
 とある山奥のその集落は、何故か国境線で二つに区切られた。敗戦の結果日本列島は、日本国と日本人民共和国に分断された。某県の山中、ごく小さな集落にも国境線があった。しかし、村人たちが気になるのは今年の農作業と収穫のことばかり。冷戦の最前線で営まれる、ごくごくささやかな生活。だが、歴史の波がじわじわと集落に忍び寄る・・・


第二次大戦の敗戦後、日本が東北以北及び北海道は
「日本人民共和国」という名前でソビエトの支配下におかれ、
社会主義国家になり、それ以南の本州及び九州・四国は
「日本国」としてアメリカより独立、民主主義国家になり日本は
二つに分断していた、そんな世界のお話。
凄い発想だなーと最初は思ったのだけど、実際問題として
朝鮮半島は南北で分断されているし、戦後処理の如何によっては
そういう状況になっていても不思議ではない・・とも思う。

でも、このお話の舞台はそんな壮大なスケールではなくて。
親戚関係にある2つの家族が県境を挟んで住んでいたのだけど
戦後、県境を国境と定めてしまったが故に、南北に分かれて
しまった家族のお話です。


戸田恵子さん、高田聖子さん、近藤芳正さんという魅力的なキャストが
チケットを押さえた一番の理由ですが、「追憶のアリラン」とか
「親愛なる我が総統」の頃から気になっていた劇団なんです、
劇団チョコレートケーキって。
でも遠征時はいつも予定がパツパツで、なかなか観れなかった
ということもあって、今回は「いい機会だ!」と。 
厳密には、劇団チョコレートケーキとパンダ・ラ・コンチャンの合同企画
なので、純粋な劇団公演という訳ではなさそうなのですが。

芸劇には何度も来ていますが、シアターウエストでの観劇は
多分これが初めてです。シアターイーストばかりだったから。
何が違うのか・・と思っていましたが、劇場に入っちゃったら
変わらなかったですね(爆)。

そうそう、写真を見ると全くそう思わないのですが、芝居を観ていると
浅井伸治さんは松坂桃季クンに似ていて、小野賢章さんは
昔イキウメにいた窪田君に似ているなあ、なんて思っちゃいました(笑)。



 
戦後ずいぶん経つし、何せ人口の少ない山間部。
南北の国境警備兵もユルくて、南日本軍の兵士は北日本軍の
兵士にタバコをあげたり、ごく普通の日常会話を交わす。
分断された両家族も、田植えや稲刈りなど人手が必要な時は
以前と変わらず国境をまたいで行き来をし、国境警備兵も
それ位の事は見逃していた。
つまり、全くと言っていいほど影響を受けずに生活していたということ。

でも、そんな中で小さな綻びは出てきます。
村上家(北日本側)の長女は学校行事の一環で受けた思想教育で
視野が狭くなってしまい、攻撃的になっていたり、高梨家(南日本側)
の次郎(家長の弟)はやたら「アカ(社会主義者)」を連呼する。
そして村上家の長男が軍隊を脱走して戻ってきてしまう・・。

そして、戦争が始まります。

北日本が攻め込んだようですが、国内では「南日本が攻めてきた」
と言っているよう。最初は北日本が優勢で東京を陥落させます。
その後、盛り返していき国境線は北上していく事になるのですが
「国境なんか関係ない」と言っていた村上家と高梨家の関係性も
戦争の状況により微妙な変化を見せるようになり、最終的には
大げんかをして決裂してしまう・・・。
あれだけ助け合っていた2家族だったのに・・。
お互いの助けが無ければやっていけないという事も分かっているのに。

南北の国境警備兵もイデオロギーとは無縁のようなユルい生き方を
しているように見えたけど、それはそれで思うところがあって
国について考えていた事も分かる。
でも・・・でも結局は「俺の家族はアメリカに殺された」とか
個人レベルの経験や想いがベースなんだろうな。“思想”とかではなく。

お互いの言っている事、主張はそれだけを聞けば間違っていない
とは思うんです。
でも、どうしてそうなっちゃうの?
どうして、そこで相手の事を全く考えられなくなっちゃうの?
そう思うと、この家族が決裂していく様子が哀しくて仕方ないし
なんか近い将来、現実でもこんな事が起こるんじゃないか?と
恐くなってもくる。
たぶん、同じ民族だからこそ、一旦分断されてしまうとその時の
しこりがあとあとまで大きな障壁になるだな・・と。

これ以上国境警備だけをしている訳にはいかず、本隊に戻る
決意をした南北の警備兵2名。
今まで見逃していた脱走兵を逮捕しようと住人に銃を向ける
北軍の警備兵。今まであんなに親しくしていたのになぜ?と
最初は戸惑っていた住民たちだけど、「殺すなら私達から殺せ」と
必死で子供を守ろうと銃の前に飛び出す大人たち。
そこに南軍の警備兵がやって来て、銃を構えて北軍兵士を狙う。
自分たちを助けてくれるかと思いきや、住民たちを盾にしようとする
南軍兵士。なんで?あんなに親しくしてきたのに・・・。
軍隊は国民を守ってくれるものじゃないの?
そんな戸惑いが兵士たちへの怒りとなり、以前のように村上家と高梨家
両方が一致団結して子どもを守ろうと必死になる。

でもね、住民に銃を向けている時の南軍の兵士(西尾友樹)の目には
涙が溜まっててね。その時に気づいたんですよね。
北軍兵士と共に「こんなにいい所は無い」って言っていたものね。
明らかにはされなかったけど、多分これは北軍兵士と南軍兵士の
仕立てた“お芝居”だったんじゃないかと思うのですよ。
戦争の愚かさや国家のいい加減さを伝えると共に、この事件を
きっかけに両家の絆を取り戻させたい、というね。

兵士が去り、子供を守りきった安堵感もあって一気に和解する両家。
あれだけ勇敢だった高梨家のお母さん(戸田恵子)さんが泣き出した
シーンで私も泣けてきてしまいました。
本当に緊張感が解けた・・良かった・・っていう涙だったんです。
でも、両家のお母さんよりもお父さん達の方が振り回されてたな(笑)。

最後のナレーションで「これが私たちの戦争でした」というフレーズが
ありました。
確かに個人レベルの話を国家に当てはめる事は無茶かもしれないけど
なにか、これがヒントになるんじゃないか、と少し希望が見れた
そんなエンディングでした。

書ききれないけど、他にも思う所の多い舞台でした。
2015年最後にすごいパンチのある舞台を観た(笑)。
追っかけたい劇団がまた増えちゃったなぁ・・・。