何だか出かけたいと思えない、プチ引きこもり期間に突入したらしい私。
本当は朝イチで映画を観るか、ホットヨガに行こうと思っていたのに
どうしても出かける気になれずに、家でダラダラ。
のんびりと豊橋に出かけることになりました。

星回帰線「星回帰線」穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールI列
13:00開演、15:10終演
作・演出:蓬莱竜太
出演:向井理、奥貫薫、野波麻帆、高橋努、岩瀬亮、生越千晴、平田満

【あらすじ】 
かつての恩人に呼ばれ、地方にある恩人の家を訪ねる三島(向井理)。そこには天体を観測しながら、自給自足の生活を営む生活があった。美しい自然の中、社会生活に疲れた人達との共同生活。三島はそこが楽園に思えた。その中に溶け込み受け入れられる三島。しかし、そのことで施設の代表である恩人からの嫉妬を受けることになる。次第にそのひずみは顕著となり、施設に集まるそれぞれの人間関係を複雑にしていく。いつの間にか、かつての恩人と対立することになる三島。何故こうなったのか。何故そうなるのか。留まることも、去ることも許されず、「人間」に巻かれていく…。


作・演出も、キャストも決して嫌いじゃないのだけど、どうしても観たい!
と思う程の衝動には駆られない作品。
こういう作品が(豊橋とはいえ)地元で観られるのはありがたいです。
遠征してまで観るかどうかは、ちょっと微妙だなーと思っていたので。 
 
開場時間に合わせて到着すると、劇場入口には人が溢れていてビックリ。
もちろん、座席の数の人数しか集まっていない訳ですが、何故かとても
混みあっている印象です。
客層は圧倒的に女性が多くて、これはやはり向井理さんお目当ての方が
多いのかしら?なんて思ったり。


 

 
客電がついたまま、2人が舞台上に登場。
車に乗っているらしい2人の会話ではじまり、徐々に客電が落ち、
それにつれて、舞台上の2人がライトに照らされ浮き上がります。
なんかいい感じのオープニング。 
どうやら二人は「先生」と教え子のようで、「苫小牧」の語源について
話しているのだけど、どうにも会話が微妙に噛みあわない気持ち悪い間が。
到着したのは、かつての恩師(平田満)がスローライフを送る家であり、
農業をしたりビールを醸造しながら、訳アリで妊婦になった先生の姪、
暴力事件を起こした元漁師とか行き場のなくなった人を集めて、
集団生活をしている「白樺ハウス」。

三島(向井理)は父が産婦人科を開業しており、そこで勤める医師
だったようだけど「自分探し」にやって来たという。
来た当初は「幸せな感覚に包まれている」と父親に書き送っていた が
イケメンで医者、そんな三島がやってきたことで今まで微妙に保たれて
いたバランスが、徐々に崩れていき、2か月後には状況が一変。

感情的に入居者や妻を理不尽に叱りつける藤原は更年期らしい。
要領が悪くて失敗の多く、良く叱られる奥井をフォローしなければならないし
藤原の妻・久子は高ストレス状態のため、家事を手伝ったり、慰めたり
したり話し相手にならなければ、と考える三島。
伊勢崎さえは、向こうから一方的に部屋に押しかけてきた。
元漁師の木田は、まるでかつてのいじめっ子のように、突然三島には
身に覚えのない事を言ってくる−。

いくら婦人科の医師とはいえ、男性の更年期ぐらいの知識は持ってる
んじゃないのか?医師免許があるのなら。カウンセリングなど精神科の
研修だってした事があるだろう?と突っ込みたい所はありますが(笑)
ここまでは三島の目線で描かれています。
“何故か上手くいかなくなっている”、“噛み合わない”、“自分が浮いている”
ような感覚−。

もうこの辺りから蓬莱脚本の定番コース。
徐々に人の心の裏側がむき出しにされていきます、息苦しいほどに。
登場人物の別の側面が次々と暴露されていきます。

優しく接してくれた三島に久子は恋心を抱き、それを感じた藤原は
嫉妬を感じていた。でも三島は「女としては見れない」と心無い発言をして
久子を傷つける。
医師(高学歴)でイケメンである三島に藤原は劣等感を抱いているらしい。
三島はフォローしていたつもりだったけど、奥井は三島に馬鹿にされたり
する事もあると感じていた。
三島はさえの事を好きだと思っていたが、さえには別に好きな人が居た。
何より、三島は藤原の事を「宝くじで得た不労所得で分を超えた道楽をし
人助けをしたつもりになっている」と感じるようになっていた−。

冷静な人だと思っていた三島が、実は場当たり的な行動を起こす人で
思慮が浅いところがある事が浮き上がってきて、もう、ここにいる人が
全員残念な人ばっかりじゃないか!状態になってくるんですよね。
恐らく三島は「人の事を思って行動する事」の本当の意味を分からず
表面的に話を聴いたり、優しい態度を取る事を「思いやり」だと
思って生きてきたんでしょうね。そして恐ろしく他責な人で世間知らず。
三島が訴えられるような、客観的な事実があったかどうかは分からない。
そもそも、訴えの内容も多分に主観的ですから。
ただ、私も訴えた女性の言いたい事は何となく分かる気がする。
いつも同じ対応が出来ないのなら、診療後に優しく話を聴いたりとか
しちゃいけないんだよ、仕事ならばね。相手は生身の人間なんだから。
父親はちゃんと言い当てていたようですけどね。

本当は中学の時にイジメを受けており、命を救ってくれた藤原先生に
「なぜ自分を助けたんだ」としか思えなかったこと。
忙しい三島の父親の替わりに、三島をあちこち連れ出したのは、
結局は自己満足・自己陶酔でしかなかったことを告白しあう三島と藤原。
そこまで言ってしまいますか・・・とも思いましたが、自分の感情を
素直に認めて言葉に出来ない2人でしたから、すごい変化ですね。

向井理さんは生の舞台で拝見するのは初めてかな?「悼む人」は
映像でしか観ていないので。
好きでも嫌いでもない俳優さんですし、実際に拝見しても、個性が
強い方ではないとも思いますが、だからこそ、どこにでもいる青年が
似合っていた気がします。いやあ、爽やかなイケメンですね、本当に(笑)。

そして、自己矛盾を抱え、苦悩する中年を演じた平田満さん。
台詞は決して多くないし、元教師という設定から言葉遣いは丁寧
なんですが、隠しきれない嫉妬心や、溢れてくる感情がとてもよく
伝わってきます、さすがです。

奥貫薫さんは舞台で拝見するのは随分お久しぶりのような気がしますが
この役がとても似合っていました。でもこういう女性って苦手だわぁ。
無意識のうちに女の弱さを武器にしているような感じのする所が(笑)。
でも実は元ホステスだという設定で、ちょっと納得感あったかな。

この舞台で私が感じたのは「再生」。
普段は手掛けない出産を扱わなければならなくなり、父親の偉大さ
自分が避けてきたことの素晴らしさに気づき、自分の「分」を改めて
認識して再スタートを切る事を三島が決めて幕−。
統計を取った訳じゃないのですが、蓬莱さんの作品は、途中で感情を
むき出しにしすぎて、もう元には戻れないじゃん・・って思う事が多い
気がするのですが、今回は素直に皆が「やり直し」ができて、
今までより少し良くなれるんじゃないかな、と思えました。
蓬莱さんの作品は何本も観ていますが、カタルシスがある方ですね。
私は割と好きな方の1本でした。