19時開演は助かるよねーと思いながら、ゆったり劇場へ。

はたらくおとこ阿佐ヶ谷スパイダースPresents
「はたらくおとこ」アートピアホール2列
19:00開演、21:30終演
作・演出:脚本 長塚圭史
出演:池田成志、中村まこと、松村武、池田鉄洋、富岡晃一郎、北浦愛、中山祐一朗、伊達暁、長塚圭史
【あらすじ】
幻のリンゴを作り出す夢も破れ、朝から晩までまんじりともせず、今やもうすることもない閑散の事務所でストーブの小さな炎を囲み、北国の大雪を見つめる男たち。雪はまるで借金のように降り積もってゆく・・・。もはや東京に帰る場所もない。そんなある日、地元の若い女が運び込んだ幸運の液体。この液体を手に、男たちは手段を選ばず暴走しはじめる。そう、すべては幻のリンゴの栽培を再開するために。運命を打開すべきチャンスが目前となったとき、トラックに乗ってアイツがやってきた!


阿佐ヶ谷スパイダースって懐かしい・・!
「はたらくおとこ」は「イヌの日」と共に昔シアターテレビジョンで
放送をしていたような気がするんですよね、阿佐スパ特集とかで。
なので実際に舞台映像は観た記憶がないのですが、この作品の
タイトルは何となく知っていました。
初演の頃はまだ舞台にハマる前だったので、今回初見です。 



 

外は雪が降る寒い地で、工場のような場所に居る数名。
会話から経営破綻した農園の園長と従業員達らしいこと、お金がなく
どうにも行き詰っているらしいことが分かります。 
 
「渋くて舌が痺れるようなリンゴを作って日本中の人に食べて貰いたい」
なんて、通常のマーケット理論からは逸脱しているし、何だかすごく
逆説的でリアリティが感じられない。
何故そんな資金難で苗木すら買えない農園に人が集まってくるのか。
何故そんなリンゴを作ろうとしているか。その経緯が分かると、すべてが
とても自然な成り行きに思えてくるようになります。
交通事故にあった奥さんが最後に買ってきたリンゴの味が渋かった。
あの味をもう一度再現したい−。
そんな茅ヶ崎(中村まこと)と、その想いを知って、力になろうとした
前田(中山祐一朗)。

突然少女で、豊蜜の妹すず(佐藤涼)、が工場にやって来て、直後に
外から投げこまれる石 やBB弾(本当にBB弾撃ち込まれてた)。
もう、何が何だか・・・の勢いで話は進んでいきます。 
 
襲撃してきたのは農協の人たち。すずの家も農家だが、禁止されている
毒性の強い農薬を使っていたため、非難されていたらしい。
やっとその話が落ち着いたかと思うと、豊蜜がその農薬を誤飲したり
農園にいきなりトラックが突っ込んで来たり、何が何だか・・Again(笑)。

どんどんと人が死んだり、居なくなるのだけど、真田三平(長塚圭史)を除く
全員が自分ではなく、全員が相手の事を考えて行動をするようになっていく
カタルシスはあります。前田望は自分の命を犠牲にしても、被害を
広げない為にトラックの荷台を内側から閉めた、前田愛(伊達暁)はそんな
兄を身の危険を厭わず荷台から出そうとするが、結局は残されてしまう
すずを守るために、その場を離れる。
周りの人の迷惑を顧みず未認可の農薬をばらまいてきた佐藤蜜雄(村松武)
は、身を挺して茅ヶ崎と共に町を守ろうとし、夏目も一旦は去ったものの、
茅ヶ崎に謝罪をするために戻ってくる。
こういった一体感がグロさを中和しているようでした。
 
前田(中山祐一朗)と茅ヶ崎(中村まこと)は苗木を罵倒して育てる
事によって「嫌な臭い」を発する「渋いリンゴ」を作ろうとしていたけど、
「渋い林檎の味」はそういった憎しみや蔑みでは再現ができなかった。
でも、思いがけないところでその味を発見するんですよね。
毒性の高い廃棄物が拡散して他に危害が及ばないように、泣きながら
食べて処理していたときに“その味”に再会する。
渋い味=涙の味だったという事なのかな。
周りの人を守ろうとした時に、その味と再会したのであれば、
もしかしたら奥さんは子供をかばって死んだのかもしれない等と
思いをめぐらしてみたりもしてみて。
 
夏目がなぜやってきたのか言わないまま去るから、「おいっ!」と思ったら
ちゃんと戻ってきていました。目にいっぱい涙をためた成志さんは
素敵でしたねぇ。 
最終的には夢オチっぽかったけど、茅ヶ崎は最初から夏目の素性を
分かっていたんでしょうね。
友人には「すごい妄想」って言われちゃったけど、そもそも、あれは単なる
夢オチではなく、茅ヶ崎たちリンゴ園の全員が夏目に対して仕組んだ
芝居だったんじゃないか、夏目に謝罪するように仕向けるために。
と思えて仕方なかった私でございました。 

結局「赦し」の作品だったんだよね。
 
しかし、あのトラックが突っ込んでくるシーンはビックリ。
本物そっくりだし。よく11階のホールまで運んだな、なんて思ったり(笑)。
またすず役以外は初演と同じキャストで観られる幸せ。
皆さん手練れの俳優さんですから、笑わせたり、色々な間が絶妙です。
伊達さんを久しぶりに拝見出来て嬉しかったな。最初は映像では
伊達さんだとは分からなかったですが、バカっぽい感じがお上手でした。
久しぶりに拝見するトミーはめっちゃ太った・・と思ったら、肉襦袢(笑)。
そういえばイケテツも、拝見するのは久しぶりかもしれません。

高濃度放射性廃棄物を連想させるような物だったり、テレビじゃ絶対に
放送できなさそうな差別用語の連発で、今だったらこの作品は
出来なかったかも?と思わせられる1本でした。

 
阿佐ヶ谷スパイダースって、私は「グロい」イメージが強かったんですよね。
血が噴き出すとか、チェーンソーで人間を殺すとか、生首が飛ぶとか、
内臓を引き出すとか(笑)。でもその辺りをすっかり忘れてしまっていて、
今回「ああ、そうだったね、阿佐スパってこういうシーンが多かったわ」と
懐かしい気持ちになりました(笑)。
阿佐スパにしては全然マイルドな方だと思いますが(笑)、今考えると、
ここの作風ってちょっと特異だったのかも。
 
最近の長塚さんの作品は少しアカデミックというか、難しいものも
多いので、また阿佐スパらしい作品も定期的に上演して欲しいなと思います。