東京では大人気公演なのにも関わらず、「名古屋だけはチケットが
たんまり残っている」とケラさんにツイートされるわ、ミリオン座では
CMが流れるわ・・・で、チケット販売に苦戦していた様子の名古屋公演。
だから名古屋公演が無くなるんだよ・・・と歯がゆい思いでしたが、
割と客席が埋まっていたようで一安心でした。

キネマと恋人「キネマと恋人」名古屋市芸術創造センター 2列
19:00開演、22:20終演
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:妻夫木聡、緒川たまき、ともさかりえ、三上市朗、佐藤誓、橋本淳、尾方宣久、廣川三憲、村岡希美、崎山莉奈、王下貴司、仁科幸、北川結、片山敦郎

【あらすじ】 
妻のハルコはカフェの女給をして、失業中の夫との生活を支えている。彼女が貧しい生活と暴力的な夫から現実逃避が出来るのが唯一映画を観に行く事だった。現在上映されているのは彼女の好きな「月之輪半次郎」。お気に入りは脇役の高木高助だ。ある日また「月之輪半次郎」を観に行くとスクリーンの中の間坂寅蔵がハルコに声を掛けてくる。そして現実の世界に現れ、ハルコを連れて逃げてしまったのだ。スクリーンから飛び出した間坂を説得するため、間坂を演じた俳優の高木もやってきて、ハルコとの奇妙な三角関係となる。夫との生活を抑圧された生活に別れを告げて家を出たハルコを待つものは−。



19時開演だからせいぜい2時間ぐらいの上演時間だと思ったら
余裕の3時間オーバー。私は地元なので構いませんが、カーテンコールも
そこそこにダッシュで席を立つ方も多く、開演時間の設定というのは
難しいものだな、とも思いました。
.
開演前に「これはカイロの紫のバラ」の翻案だよ」と友人に話すと
「それ見たことがある」とのこと。
観劇後に感想を聞きましたが、「基本的に映画の内容はそのまま」
だったそうです。ハルコの妹と、主役の嵐山はこの舞台の為に作られた
オリジナルキャストだったみたいですね。






 

 
世の中の評判が高いのは知っていましたが、そりゃそうだよね・・
と思える1本でした。

まずは演出がすごいです。
映像はいつもの上田大樹さんで、映像そのものも素晴らしいのですが
その映像を映し出すパネルを人が持って、動かしながら色々な
フォーメーションを作り、そこに映像を映し出す。見事ったらないです。
そこに俳優さんも絡んでいて、映画の中から人間が飛び出してくるとか
人間が映画の中に入り込むとかいう、映像とリアルの境目が
オープニングの映像などでもいい感じに曖昧になっていました。
また、白いゴムを広げて、部屋の形にして、その形を変える事で
視点の違いを表現する演出もすごいなあ・・と思います。 

妻夫木聡さんは、俳優の高木と、演じている役の間坂の2役で
2人が出会うシーンもあって、どう切り抜けるんだろう?と思ったのですが
歌舞伎的な解決方法でしたね。
とはいえ、妻夫木君のライフマスクを作って、それを被るので
パッと見だと「ん?」と思うぐらいには似せられていますしね。

この作品の主役が緒川たまきさんだというのが、とても良かった。
緒川さんって和服が似合うし、“昭和の女性”が似合います。
健気で、素直で、可愛らしかったー。
ケラさんオリジナルの方言も、緒川さんが話すととにかく可愛くて
思わず観終わった後に真似してしまいましたから。
ケラさんは映画好きなのかな。
同じ映画を何本も観たり、自分の好みが確率していて、
主役よりも個性的な脇役に目をつけ、その人の出演作を追う。
ハルコはまさにそんな映画好きの典型、って感じです。
そういうのを理屈をこねて論じる映画好きには嫌悪感があるのですが
本当に映画が好き、っていうのが伝わるんですよ。

後は何と言っても終盤ですね。
ダンナに啖呵をきるときも良かった。でも何と言っても最後の
映画館での表情の移り変わりです。
妹との関係性が修復していく様子、現実を受け入れて行く様子が
表情だけで読み取れます。セリフが無くても伝わるって、まさに
こういう事だよねーって。

また、高木高助も典型的なたたき上げの俳優ではあります。
世の中の評価を気にせず、自分のやりたい事を貫く姿勢は
売れれば美談、売れなければ独りよがり。
そんな所が、コミカルに、そしてシニカルに描かれていて、
それだけだと単純な話になりかねないのに、原作にはない
ハルコの妹と主役の嵐山の二人が出ている事で、話の深みが
増していたように感じます。(その分少し上演時間が長かったけど・・)

でも脇も豪華なんですよ。というかキャスティングが上手い。
スクリーンの中に残された俳優さんたちのやさぐれ具合が抜群(笑)。
DVダンナの三上さんも良かったなぁ。
尾方さんをMONO以外で拝見するのは珍しいのですが
いい味を出していらっしゃいました。

演劇と映画の幸せな出会い、って言う感じの作品かな。
年の最後の観劇に締めくくるには、とてもいい作品でした。
場所は少々面倒だけど、芸創センターも悪くないので
今後是非、ここでの公演も検討して頂きたいものです。