趣味がコンサバというか、頭が固い私は、ティム・バートン作品が苦手。
そんな私が楽しめるのか?が不安だった一本です。

ビッグフィッシュ「ビッグ・フィッシュ」日生劇場 B列
脚本:ジョン・オーガスト  音楽・詞:アンドリュー・リッパ
演出:白井晃
出演:川平慈英、浦井健治、霧矢大夢、赤根那奈(夢咲ねね 改め) 他

【あらすじ】 
エドワード・ブルーム(川平慈英)は昔から、自らの体験談を現実にはあり得ないほど大げさに語り、聴く人を魅了するのが得意。自分がいつどうやって死ぬのかを、幼馴染のドン・プライス(藤井隆)と一緒に魔女(JKim)から聴いた話や、共に故郷を旅立った巨人・カール(深水元基)との友情、団長のエイモス(ROLLY)に雇われたサーカスで最愛の女性、妻・サンドラ(霧矢大夢)と出逢った話を、息子のウィル(浦井健治)に語って聞かせていた。幼い頃のウィルは父の奇想天外な話が好きだったが、大人になるにつれそれが作り話にしか思えなくなり、いつしか父親の話を素直に聴けなくなっていた。そしてある出来事をきっかけに親子の溝は決定的なものとなっていた。しかしある日、母サンドラから父が病で倒れたと知らせが入り、ウィルは身重の妻・ジョセフィーン(赤根那奈)と両親の家に帰る。病床でも相変わらずかつての冒険談を語るエドワード。本当の父の姿を知りたいと葛藤するウィルは、以前父の語りに出ていた地名の登記簿を見つけ、ジェニー・ヒル(鈴木蘭々)という女性に出会う。そしてウィルは、父が本当に伝えたいことを知るのだった−。



まあ、ティム・バートンが苦手とはいっても、「ビッグ・アイズ」
みたいな作品もある訳だし、観てみなければ分かりませんからね。
今回は平日ということもあってか、いいお席での観劇となりました。
学生の団体も入っていて、ロビーはとても賑やかでした。 



 


紗幕に水やら大きな魚が泳ぐ映像。
そして、気づいたら舞台の下からウィル(浦井健治)が登場し
語り始めて舞台が始まります。おー、目の前に浦井健治(笑)。 
とても優しい語り口調で、あらステキ♪
前のハル王子とは全く違う(←当然です(笑))。

ウィルは報道の仕事をしているという事もあってか、とても
合理的で現実的。
私自身はウィルと似ている所もあるので、とても彼の言動に
共感することが出来ました。
つい「で、何がいいたいの?」と思っちゃうし、仕事をしていて
後輩に相談されても「ちょっと冷静になって、何が一番の目的か
一度整理して」なんてしょっちゅう言ってる。
ふわーっとした言葉で片付けようとしようものなら、すかさず
「その言葉の定義は?」って後輩に聞いちゃうしね(笑)。
なので、エドワードの話は、私もウィルと同じように
半ば呆れ気味で聴いていた感じかな(笑)。

そして、主役のエドワードは川平慈英さん。
川平さん自身がエドワードそのものなんじゃないの?と思えるほど
ピッタリだったなあ。
いい意味でKYで、天真爛漫で、エネルギッシュで。
でもとても純粋な感じが伝わってきます。
「不倫してたんじゃないか」とウィルが疑っても「んー、なんか
別の理由があったんじゃない?」と思って観られるような。
若いころから亡くなるまでを全て川平さんが演じていましたが
違和感なかったですしね。というか、歳をとっても変わらない・・
というのがよく表れていました。
でも、個人的には現実にこういう人が居たら苦手だけど(笑)。 

ストーリーは、エドワードが話す「ほら話」と、現実とを
行ったり来たりする構成です。
その「ほら話」シーンは映画ではきっとティム・バートンらしさが
全開だったんだろうな、と想像が出来て、そここそが
私の苦手な所なんですけど(笑)、舞台で観るとあまり違和感がない
というか、普通に楽しめたので、こういうフィクションの世界は
ミュージカルと親和性が高いのかな、と思います。
ただちょっと気になるのが、そのほら話を聴く(観ている)
ウィルの表情。何だかとても楽しそうなんですよね。
私だったら「また言ってるよ・・」と醒めた表情になったり
眉間にしわが寄ったりしそうなものなんですけどねぇ・・・。
実は父親の話が好きだったという事を表しているでしょうか。

後ステキだったのがサンドラ(霧矢大夢)とエドワードの関係性かな。
まあ、なんでサンドラがドン(藤井隆)と婚約したんだ?って
いうのが疑問に残りますけど(笑)、ウィルが何と言っても
めんどくさいエドワードの全てを理解して、寄り添っている雰囲気が
とても良かったな。

最後、エドワードの葬儀に集まってきた人たちは、全て
エドワードの“ほら話”に出てきた登場人物。
エドワードが言っていたほど背が高くないとか、魔女っぽいけど
普通の人間・・・とか(笑)。
エドワードは「ほら話」をしていたのではなく、「話を盛って」
いただけだったんですね。

父親と息子の和解、というテーマなんでしょうが、何となく
蛙の子は蛙というか、もともとウィルにはエドワードと通じる
所があったのに、それを否定したいがために、真逆と思える
性格になったように感じます。
最後の最後に、素直になって父親と似ている事を受け入れて
ウィル自身も解放されたように感じました。

キーになる花が「水仙」。
花言葉は「うぬぼれ」「自己愛」「神秘」「尊重」だとか。
なんかピッタリですね、この作品に。
そして「ビッグ・フィッシュ」は「ほら話」という意味だとか。
私は映画を観ていませんが、映画版では水仙の意味や
「ビッグ・フィッシュ」という意味などにも触れられていた
そうで分かりやすくなっているようですが、舞台版では
特に触れられていないので、分かる人には分かる、みたいな感じかな。

楽曲も皆素敵でしたね。
とても上質な、ほのぼの、ホッコリした舞台でした。
周りの泣きっぷりはすごくって、私自身も、一緒に観た方も
特に泣いたりはしなかったので、驚いちゃいましたけど。
ヤング・ウィルの鈴木福君もかわいかったです。