ブランチを頂き、コーヒーを楽しんだ後に向かったのは渋谷です。

令嬢ジュリー「令嬢ジュリー」シアターコクーン Y列(最前列)
14:30開演、15:50終演
作:アウグスト・ストリンドベリ  上演台本・演出:小川絵梨子
出演: 小野ゆり子、城田 優、伊勢佳世

【あらすじ】 
聖ヨハネの祝日前夜(夏至祭)。この邸の気位が高い伯爵令嬢ジュリー(小野ゆり子)は、母の手で男まさりに育てられ、つい2週間ほど前には婚約を解消したばかり。夏至祭で高揚した気分のジュリーは台所に現われ、この邸の下男ジャン(城田優)をダンスに誘う。躊躇するジャンに、「祭の日には、身分の上下はない」と強引に相手をさせ、徐々にその行動は大胆な誘惑へと変わっていく。下男のジャンは、年上の料理女クリスティン(伊勢佳世)と婚約中の身だったが、「子供の頃、あなたに恋をしていた。でも、あなたは、自分がこの貧しい身分から抜け出すことは絶望的だと思い知らされる、その象徴だった」と打ち明ける。そして、2人の間を支配していた緊張感が、ほんの一瞬はじけた途端に、何かに取り憑かれたかのように激しく求め合う2人・・・。この瞬間から、この貴族と平民の男女関係の上下が逆転していく・・・



特設S席を取っていたことを忘れてましたが、舞台を囲む席の
正面一列の真ん中という特等席でございました。
アウグスト・ストリンドベリの作品は観たことが無いというのも
興味の一つでしたが、これは城田君の初ストプレなんですよね。

天窓から光が差しこんでいて、恐らく地下とかなんだろうな、
と思える所が舞台。真ん中に大きな作業台があって、奥には
かまどなどがあり、クリスティン(伊勢佳世)が立ち働く。
下手には上から降りてこられるような、階段があるセットです。
豪華ではないけれども、何だか絵になるなぁ、と思うセット。
窓から差し込む光がキレイで印象的だと思っていたら、
照明は原田保さんだったんですね。



 
クリスティンが働いている所に、ジャン(城田優)が降りてきて
ひとしきり文句を言います。ジュリーお嬢さま(小野ゆり子)の
ワガママで踊りの相手を強制されたこと、踊り方がとてもじゃないが
貴族のお嬢様とは思えないほど、ハメを外していたという事。
まあ、なーんとなく都合の悪いシーンを見られた男が、彼女に
言い訳するような、そんな感じもある場面です。

そんなの、ハッキリ断ればいいじゃん・・と思う私は甘くって(笑)
その後ジュリーお嬢さまが降りてきて、ジャンに踊りの相手を
強要する様子を観ていると、主従関係もあるから、簡単に
断れるものじゃないと分かるし、ジュリーもそれをうまく利用して
断れない状況に追い詰めているという事が分かってきます。

ジュリーはジャンが好きなのか?それとも婚約破棄をされた
腹いせで、無理難題をふっかけているのか?誰も相手をして
くれないのか?単に気が強くて、意思を曲げないだけなのか?

クリスティンが部屋に戻って二人きりになった後、ジュリーは
実は幼い頃からジュリーに恋していたことを告白。
2人の距離はぐっと近まります。この時のジュリーったら
先ほどまでの高慢な表情がなりを潜め、乙女になっていて
ああ、女の子として構ってほしかったのかなぁ、なんて思います。

その後、大挙して押し寄せる使用人たちから身を隠すために
(このアンサンブルさん達、迫力あったし、いいアクセントでした)
ジャンの部屋に二人で入ったのですが、翌朝姿を見せたジュリーの
ちょっと上気したしたような表情で「ああ・・そういうことね」と
分かっちゃうあたり、小野さん凄いと思います。
そして、白タイツを履いていない足って、色っぽいんだな・・と
改めて思ったりしたのです。生足なんて普段は何とも思わないのに。

しかし、一度寝ると男はこうも変わるのか?と思うぐらいに
ジャンの態度は一変。かなりゲス男なんですよ。自分がイケメンだと
分かっていて(そういう口ぶりだった)、相手の気を引くために
幼いころの話を盛ってしまう。そして、寝た後には、ため口で
声を荒げたり、金を持ってこいと要求したり・・・。
ただ「金持ちになる、ホテルを経営する」という大望を抱いていた
ジャンなので、このままうまくいけばジュリーをつかって、
夢がかなう・・という思いが強すぎたのかな、悪気なく。
もしかしたら、意識下には貴族に対しての恨みもあったのかも。
にもかかわらず、主人である伯爵の前では、従順な下男にしか
なれない、半ば刷り込まれた状態でもあるんですよね。

それに対して、急に女らしくなるジュリーだけど、結局自分が
ジャンの夢の為に利用されていたと知った時の怒り、取り返しの
つかない事をしてしまった、ますます自分が袋小路に追い込まれて
いくという絶望感。
高圧的な態度から、後悔、困惑、懇願・・と、様々な表情を見せます。
最初は小憎たらしいと思ったジュリーだけど、この人も優しい
貴族の父親と、前衛的なフェミニストだった母親の呪縛との
間で苦しんでいる事が分かって、気の毒にすらなってしまいました。
男性を愛したい気持ちも、すがりたい気持ちもあるのだけど、
無意識に男性を憎み、蔑んでしまう。

ジャンとジュリーが全く違う世界の狭間で苦しむのに対して
クリスティンは明快で、悩まない。
信仰という強い柱があり、あるべき姿が揺るがない。
それがとても対比されていましたね、地味な役ではありましたが。

最後、ジャンから手渡された剃刀を持ち、何かを囁かれた後
ジュリーは今までにない穏やかな顔で納屋に向かっていき、幕。
ジュリーはクリスティに対して「私も信仰心があったら」という
だけに、自殺でも出来ちゃうんだろうな・・なんて思いました。


城田君は本当に見目麗しくて、見惚れてしまいますね、どんなに
ゲスなセリフを吐いても(笑)。
初めてのストプレと言う事だそうですが、癖も無くて、とても
良かったと思います。

小野ゆり子さん、失礼な言い方になってしまうのですが、
「絶世の美女」っていう感じというか、そういうオーラじゃない
んですよね・・・。なので、見た目は普通なんだけど、だからこそ
気位が無駄に高くて、めんどくさいお嬢さま、っていう感じに
なっていたかな。

書かれだのも、舞台も19世紀末と言う事なので、まだ階級社会だった頃。
欧米での階級社会というものが知識としてしか分からない私には
なるほど、そういうものか・・と思う所も多々ありましたが、
何とも窮屈な世界だったのでしょうね。
この作品が描かれた頃、欧米で上演された時はきっともっと衝撃の
ある作品だったんだろうな、と思いました。