今月の遠征は新国立から。

城塞「城塞」新国立劇場 小劇場 B3列(3列目)
13:00開演、15:25終演
脚本:安部公房    演出:上村聡史
出演:山西惇、椿真由美、松岡依都美、たかお鷹、辻萬長
【あらすじ】 
とある家の広間。爆音が響く。電燈が尾を引いて消える。どうやら戦時下のようである。「和彦」と呼ばれる男とその父が言い争っていた。父は「和彦」とともに内地に脱出しようとするのだが、「和彦」は母と妹を見捨てるのか、と父を詰る。しかし、それは「和彦」と呼ばれる男が、父に対して仕掛けた、ある"ごっこ"だった......。


これはシーズン券で取っていました。ただ「王家の紋章」も
間違えて同じ日時でチケットを取ってしまっており、かつ
なかなか引き取り手が見つからなかった為、危うく観られなく
なってしまう所でした。。
帝国劇場もワクワクする素敵な劇場ですけど、私はやっぱり
新国立の小劇場みたいな空間の方が落ち着きます(笑)。



 
舞台の中央には2段ほど高くなったステージ上のものがあり、
奥には赤いカーテンが。そして舞台上には燭台が2台ほどあります。
何だろう、この倉庫のように薄汚れた感じのする場所なのに
調度品は骨董みたいな、凝ったデザインでアンバランスなのは・・。

父(辻萬長)と息子(山西惇)の言い争う様子からスタートです。
どうやら戦争中らしく、国外に居るらしく、内地に戻る飛行機に
2席だけ空席ができ、自分と息子の二人でその席を使おうと父は考え
息子は、母と妹を見捨てるのかと迫る。
価値観が、いわゆる戦時中っていうんですかね・・・。
息子は妹を代わりに乗せようと乗せようと主張するものの、結局
父は妹を服薬自殺に追い込んでしまう。
でも、待てど暮らせど頼みの飛行機流行ってくる気配がなく、
父親は錯乱状態になり・・・どうなる事かと思ったら、実はこれは
「ごっこ」だったという事が判明する。

ふー凄い迫力だった。「でも一体、これは何のために?」という事が
ここから徐々に明らかになっていきます。
「ごっこ」の中のような戦争はとうの昔に終っているし、この一家は
日本に住んでいるのだけど、父親は精神を病んでいるようで、
ステージに見えた部分から降りた地下の部分に、閉じ込められて
“発作”が起きるたびに、このような「ごっこ」を繰り返している。
そうでない時は、まるで幼児のようになり、排泄すらトイレで
出来なくなる寸前。
そんな状態での「ごっこ」に嫌気のさした妻は「妹役」を降りて
父親を精神病院に入れる事を強要してくる。

病院に入れる前に、何とかもう一度「ごっこ」をしようと
画策する息子。
普段は会話もままならない父と、「ごっこ」の間は会話ができる
ので、何とかまた父親と会話をしたいと思ったのかな・・と考えた
のですけど、どうやらそんな、ハートウォーミングな話では
無い感じでしたね。
父親はそうとうえげつない儲け方をしたみたいだし、でも結局
自分もそんな親に育てられたわけで、そんなやり場のない思いが
痛々しくさえありました。

そして最後に、踊り子が振り向いたらいきなりブラをはぎ取り
投げ捨てて踊り出す・・という。
それ以前にも「何故あんなに体に合わない下着を身につけて
いるんだろう」と思っていたのですが、この為だったのか!と。
体にピッタリ合いすぎると、下着の跡がクッキリ背中に残って
しまいますからね。
ある意味、彼女の踊りは「性」というより「生」の象徴のようで
それを既に人として成り立たなくなりつつある父親に、突きつけて
居るようにも見えました。

松岡さん、天晴な脱ぎっぷりですね(笑)。

しかし、この作品からは痛いほどの作者の怒りのようなものが
伝わってきます。ただ私にはそれを受け止めるだけの知識や
バックボーン、読み取るスキルが不足していたな、と思います。