朝イチは、どうしても避けられなかった仕事の為に出勤をして、
その後ホットヨガに行って、バタバタと駆けつけた豊橋芸術劇場。
仕事の関係でビジネススーツだったので、軽く浮いてましたな、私。

非常の階段
アマヤドリツアー2017 「非常の怪談」
穂の国とよはし芸術劇場アートスペース2列目(自由席)
14:30開演、16:40終演(終演後アフタートークあり)
作・演出:広田淳一
出演:笠井里美、倉田大輔、渡邉圭介、榊菜津美、沼田星麻、中野智恵梨、石本政晶、相葉るか、相葉りこ、一川幸恵、宮崎雄真(以上、アマヤドリ)、大島萌、須藤新之介、松ノ真司、飯田紘一朗
【あらすじ】
舞台は2014 年の日本、東京。 ある夏の日、一人の振り込め詐欺結社のメンバーの男が何者かによってさらわれた。結社 の仲間たちは彼(ダーさん)の身を案ずるとともに一時的に身を隠すことを考え、メンバ ーの一人・大庭ナイトの親戚宅に居候をすることとした。ナイトの叔父・八平とその三人 の娘たちは、素性の怪しい詐欺結社の面々を邪魔もの扱いしつつも、なんとか奇妙な共同 生活を乗り切ろうとしていく……。 一方、大庭家も揺れていた。数年前に妻を亡くした八平は東京の家を引き払って富山へ帰ることを決め、三人姉妹はそれぞれ別の新生活を始める必要に迫られていたのだ。ダーさんをさらったのは誰なのか? 



アマヤドリという劇団は今まで存じ上げませんでした。
今回豊橋での公演があったキッカケは、劇団の主宰である
広田さんが、豊橋芸術劇場で地元の高校生が出演する舞台の
演出をしたというご縁だったそうですが、その舞台も観てませんし。
ですので、当初は興味は全くなかったのです。でも普段なら地元で
観られない劇団の作品が観られる良い機会だし、もしかしたら
ものすごくハマるかもしれない。(セット券なので)チケット代も
2,500円というお手頃価格だから試してみてもいいか・・と思って、
チケットを取ってました(交通費を入れたらほぼ5000円だが。)

上記のような理由もあってか、高校生やら若者の観客が
とても多かったな、と思います。すぐ後ろの男子2人組などは
「プロの演じる舞台を観るのは初めて」なんて言っているのが
聞こえてきましたし。







この「非常の階段」は2014年が初演で、今回が再演とのこと。
また太宰治の『斜陽』がベースらしい、という事は後で知りました。
と言っても、「斜陽」も読んだ事が無いので、意味ないですね。
(ああ、もっとちゃんと文学作品を読んでおくんだった)
開演前、オープニングの音楽はクラブミュージックのような
なかなかスタイリッシュな選曲です。

オープニングは3人が出てきて、観客に話しかけていきます。
このサイズの劇場では1列目は圧迫感を感じてしまうので、概ね
2列〜3列目に陣取る事が多いのですが、1列目の人はガン観されて
語りかけられるので、ちょっと辛いだろうな(笑)。

終演後のアフタートークでもお話がありましたし、事前に配られる
人物相関図でも図式されていますが、ここには3つの「人の集まり」
があります。一つが詐欺グループ。もう一つがその詐欺グループに
属していた大庭ナイトのいる大庭家。最後が詐欺グループに居た
ダーさんにヒアリングをする調査団体。

詐欺グループについては大庭ナイトを通して、結構詳細に説明もあり
描写もされていますが、大庭家については改めて語られる事は無く
会話の内容から推測できる形になっています。
なので・・何となく詐欺集団にはあまり悪意が感じられないような
気がします。ナイトが何者でもないただの不良だったのに、
“会社”で働き(厳密には会社ではないが、自分の労働の対価として
収入を得られていたという意味で)、色々と指導をしてもらい
自分を褒めてくれて、必要だと言ってくれた場所だった、という
思い入れがフィルターになっているからなのかな、と思いますが。

それにしても「モノは言いよう」だよな、と。
オレオレ詐欺は「すぐに500万も出せるような富裕層しか狙わない」
義賊みたいな表現をするし、貯蓄資産の大半が高齢者のものだから
お金を世の中に循環させる必要がある、とか。

主役の大庭ナイトは、本当にフワフワしたヤツ。
自分の根っこになるものが無い、っていうのかな。
だから、夏の思い出も、詐欺グループの仲間との関係(幼馴染
だと言った事)も、自分の願望のようなものが作り出した、と
言えるのではないのかと。
逆に言うと、現実を直視する事が出来ないヤツでもある訳で
現実世界での恩人である叔父の大庭八兵と二人きりで話す事も
出来ないし、仲間だと思っていた詐欺グループの中でも相手の
顔色ばかりを窺って、自分自身を出すことも出来ない。
そんな現実に気づいた時に、その状況に絶望してしまう。
騙した家に電話して、謝って・・で、強烈な一言を浴びる。
「良かったわ、私の息子が貴方のような人でなくて」。
これ・・私でも「うっわー怖っ」と思わず思ってしまう程の
破壊力がある一言で。ある意味トドメになっちゃったよね。
この辺りが「斜陽」をモチーフにしている所なのかな。

大庭ナイトに何を投影しているんだろうな・・。
彼のような人を受け入れる偏狭な世の中を描きたいのかとも思うし
本当の繋がりを求めるのに、上辺だけでしか繋がれない
現代の人間関係の希薄さなのかもしれないし、どんな世の中で
どんな立場であっても、人は人との繋がりを求めており、そこに
居場所を見出そうとしている、という事なのかもしれない。
少なくとも、ナイトの死後もナイトグループは同じように
何事もなかったように活動を続けているようで、それがとても
象徴的で、かつ人間関係が人工的だなっていう感じがしたのでした。

大庭ナイトを演じた渡邊圭介さん、本当にこういうヘタレな
不良になりきれない奴って居るよね、と思うようなビジュアル。
普段はどんな人なんだろう、と思いましたが、アフタートーク
でお話される様子は、ごくごく普通の方で、少しビックリ(笑)。

あとは、武井壮みたいな人も居たし(松ノ真司)、大谷役を
演じた倉田大輔さんの足の細さが尋常じゃなくて(笑)、
足に目が釘付けだったりとか、役者さん(特に男性)が個性的
な方が多いなあ、と思いました。

「世の中には二種類の人間がいるんです。
 感動をくれるバカと、タダのバカと。」

この言葉が序盤と最後に使われていました。
アフタートークで広田さんが「揺るがないものとして、人と人の
繋がりに希望を持つところ」とおっしゃっていましたが、何となく
その言葉がとても腑に落ちるフレーズだったと思います。

他にも病気で田舎に帰る父親や、リスカを繰り返す次女、
詐欺グループのボスに恋してしまう長女、親の介護をする
調査組織の先輩調査官など、色々な要素が詰まっている作品
だったと思います。
調査官の最終報告については、ちょっと個人的には違和感を
禁じえなかったところもありましたが。
アフタートークのないように引きずれちゃっている気もしますが
やはり、人と人との繋がりについて、考えさせられる作品かな。

個人的にはコトリ会議よりもアマヤドリの作品の方が好きかな。
ただ、アマヤドリに限らず何でダンスとかを入れたがるんでしょうね。
大劇場でショーアップするなら分からないではないのですが。
それが“演劇”なんでしょうかね(これは、ちょっと苦手。)