地方公演で観るのはまずムリだろうな、と思いましたので
今年はさっさと諦め、東京で観ることに決めておりました。
それにしても、大阪公演も無くなっちゃったんですね。

リア王子どものためのシェイクスピア「リア王」あうるすぽっと J列
脚本・演出:山崎清介
出演:福井貴一、戸谷昌弘、土屋良太、佐藤あかり、若松力、加藤記生、チョウヨンホ、大井川皐月、山崎清介

【あらすじ】
ブリテンの王リアは、三人の娘に領地を分け与えようと考え、自分への愛の深さを娘たちに問う。二人の姉娘は、父の機嫌をとろうと心にもないことを言って父を喜ばせる。リアが一番愛する末娘のコーディーリアは、娘としての愛以外に何も言うことはないと答え、父の怒りをかい勘当されてしまう。王位を譲り二人の姉娘のところを行き来するリア。だが、二人は次第に父を粗末に扱うようになる。嵐の中、正気を失いさまようリア・・・。娘の愛情をはかりにかけた男の物語



「リア王」というと、私は平幹二郎さんを思い出してしまって
ちょっと切なくなってしまうのですが、どんな演出になって
いるのかなあ、というのも毎年楽しみなカンパニーです。

ソワレの舞台を一緒に観る予定の友人と一緒に朝ごはんを食べて
一旦別れる予定だったのですが、「特に予定もないので、私も
舞台を観ようかな」と言い出し、当日券を買いに行ったらC列。
普通に買った私がJ列って、なんか微妙なんだけど・・・(笑)。


 

四大悲劇のうちの1つ、「リア王」。
私は蜷川シェイクスピアで1度観た限りです。
今回は友人と直前までお茶を飲んでいた関係で、初めて
イエローヘルメッツを観そびれてしまいました、残念!

簡単に言えば、甘い言葉に惑わされて、自分を一番大切に
思ってくれる人も見抜けず、滅びていく人たちのお話ですね。
もちろんそれば、コーディリアを信じられなかったリアだけでなく、
エドガーを疑った結果、命を落とすグロスター伯でもあります。

まずはリア王を演じたのは福井貴一さん。
芸達者ですよね、福井さん。個人的に一番印象に残っているのは
ミュージカル「二都物語」のバーサット役で、同じくミュージカルの
「ジェーン・エア」での役もとても印象に残っているのですが
このカンパニーにも何度も参加なさっています。
まず、とても統治力のあった王だったんだろうし、自身もそれを
自覚しているんだろうな、と思われるようなオープニング。
「将来の争いを避けたい」と自ら現役引退宣言をして、とても冷静で
合理的でしょ、アピールをするのですが、だったらなぜ
「自分の事をどれだけ大切にしているか言ってみろ」みたいな
非合理的な方法で判断するんだよ、と突っ込みたいです(笑)。
そしてその返事の内容で相続する領土を決めるとか、客観性ゼロ。
理性的であろうとする王の行動が、全く理性的でも合理的でもない
という、この矛盾(笑)。

でもこの矛盾、劇中では少し極端ですけど、人は誰しもそういう
矛盾を抱えている事が多い訳ですから、人間臭さとも言えるかも。
リアは元々はそんな合理的、理性的な人間ではなくて、とても
直情的な人なんでしょう。

長女のゴネリル、次女のリーガンはいわゆる「悪女」キャラ。
でも、そこまでの悪女というイメージは無かったかなぁ。
だって、父親があんなに自分の城で好き放題暴れていれば、
腹も立って当たり前。
その父親を諌めたり、行動を改めさせなければ、その城の主として
部下への示しがつかないし、部下を守ってやるのはその城の主の
役目ですから、父親の自業自得感がかなりあります。
しかし、まるで子供に帰ったような無邪気さというか、自由さを
見せられているので、その後の憔悴ぶりの落差の大きさが際立ちます。
でも・・この人はとうとう、娘たちに追い出されたのは、
自分にも悪いところがあるとか、改めようといった発想が全く
無かったですねぇ。
まあ、反省したところで、欲に溺れた娘たちに追い出されてしまう
という結末は、結局は変わらないのかもしれませんけど。

ゴネリルとリーガンが欲に溺れていく(恋愛面でも権力面でも)
というのは、ありがちな話ですので、驚きもしませんし
むしろ自然に思えます。
なので、私にとって唯一理解が出来ないのはコーディリア。
おべっかを言えないのはいい。
正義感が強いこともよく分かる。
でも、何故もっと言葉を選べないのか。
それは自分の為でなく、父親を落胆させないために。
結局は、自分の意思を通しただけの強情な若い娘に思えてしまう
のですよね・・・。

比較的毎回、ヒーロー的なポジションを担う事が多かった
若松力さんは、今回ヒールのエドモンド。
もうちょっと悪オーラがあると良かったかな・・。
それに対して、エドガー(チョウ ヨンホ)は良かった。
蜷川シェイクスピアでは盒桐里気鵑演じていらっしゃったと
記憶していますが、いい役ですよね。
今回のエドガーはおっとりしている所があるけど、実直で、
だからこそエドモンドに騙されちゃったりするんですが、
笑いをとる所もあり、でも切ないシーンも演じ切っていらっしゃって、
個人的にはとても身近に感じる、応援したくなるキャラでした。

キャストは全く確認しないで観はじめたのですが、舞台上を何度
確認しても伊沢磨紀さんが居ない。えー、出演していないの?と。
他の女優さんがどうこう・・という事は全くないんです。
佐藤あかりさんの色っぽさはリーガンに合っていたし、
ゴネリル役の方のコメディエンヌ要素や、「寸足らず」と
言われちゃうくだりの息の合った感じとか、良かったんです。
ただ、伊沢さんがいらっしゃらないのが不思議というか、
違和感というか、寂しいというか。


私は「リア王」のスタンダードが何たるか、が分かっていないので
比較のしようがないのですが、この「リア王」はそれに近かった
のではないか、という印象を受けました。
この子供のためのシェイクスピアシリーズは、原作に忠実で
ありながら、ちょっと違う視点での演出が面白かったりするので
今回はどんな感じになるのかな・・と思っていたんですけどね。
後から調べてみると、今回は比較的台本に忠実に上演されているらしいので
あながち私の印象も的外れではなかったのかもしれません。

改めて、この作品は悲劇と言われるだけの作品だなぁと。
追い出されたリアはコーディリアに救われるけど、
コーディリア(フランス軍)は結局エドモンド達に敗れて
投獄され死亡、リアも嘆き死んでしまう。
かといってエドモンドも殺されてしまうし、グロスター伯も
亡くなってしまって、誰が残ったんだ?って話ですよね。
前回、ちゃんと観ていなかったなぁ、と恥ずかしくなる思いです。

でもその中で特徴的だな、と思うのはエンディングです。
毎回どんなエンディングだろう・・と楽しみだったりするのですが
今回の、死者たちが見守るシーンは印象的でした。

私がこのカンパニーを観はじめたころは、立ち回りのシーンはこんなに
スピード感があるものではなかったよな・・とか、昔はもっと
クラッピングが多かったよな、とか、最後は皆で手を振りながら
行列になって捌けていったよな、とか、思う所も多々あって、
同じカンパニーでも、残すところは残しつつも少しずつ変化して
いっているんだな、という事も改めて気づいたりしたのでした。

今回、重厚だった分、内容も濃くて、大人の私でも結構疲れました。
東京の会場は(土曜日の昼公演という事もあってか)お子様が
少なからず観劇されていました。
終演後「面白かったー!」と小学校低学年ぐらいの男の子が
お父さんと思われる男性に話しかけていましたが「本当かっ?」
と言いたくなっちゃいましたよ(笑)。

来年は「冬物語」らしい。
これは、前回上演された時にとても観たかったのですが、試験の
前日だか、2日前だかで、さすがに断念した作品です。
だから嬉しいな、出来れば伊沢さんも復活した状態で観たいものです。