朝イチでホットヨガに行き、身支度もそこそこに豊橋へ!
これは愛知公演がなくても観に行きたかった1本です。

アンチゴーヌ「アンチゴーヌ」穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール1列
13:00開演、15:10終演
脚本:ジャン・アヌイ  演出:栗山民也
出演:蒼井優、生瀬勝久、梅沢昌代、伊勢佳世、佐藤誓、渋谷謙人、富岡晃一郎、高橋紀恵、塚瀬香名子
【あらすじ】
古代ギリシャ・テーバイの王オイディプスは、長男エテオークル、次男ポリニス、長女イスメーヌ、次女アンチゴーヌという、4人の子を残した。長男・次男は交替で王位に就くはずであったが、王位争いで刺し違え死亡。その後、王位に就いたオイディプスの弟クレオン(生瀬勝久)は、亡くなった兄弟のうち、兄を厚く弔い、国家への反逆者として、弟の遺体を野に曝して埋葬を禁じ、背く者には死刑にするよう命じた。しかし、アンチゴーヌ(蒼井優)は、夜中に城を抜け出し、兄のポリニスの遺体に弔いの土をかけて、捕えられてしまう。クレオンは一人息子エモン(渋谷謙人)の婚約者で姪である彼女の命を助けようとする。だが、アンチゴーヌは「誰のためでもない。わたしのため」と言い、自分を死刑にするようクレオンに迫るのだった。



正統派の古典ですが、ジャン・アヌイは「ひばり」を観ても
難解な作品という印象は無かったので、純粋に楽しみでした。

通常は舞台がある位置に特設ステージを作った形。
栗山さん、十字架のセットが好きだなぁと思ったのですが
「十字架」というよりは「十字路」という事なんだとか。





私の席は一列目。ちょうどクレオンが座る王座の手前辺りです。
舞台上はもちろん、舞台の下を蒼井優ちゃんが通る事もあって
目の前でお芝居を観られる良さもありますが、横方向が長すぎて
反対側の真横で行われている芝居があまり観えない・・という
デメリットもあった座席配列だったな、と思います。

始まるとすぐに序詞役の高橋紀恵さんが人間関係など舞台の
背景を説明してくれますが、この辺りは事前に情報を入れてきたので
「ふむふむ」と思いながら。
この作品は背景が分かっていないと、ちょっと辛いかもしれないですね。

舞台は大きく分けて3つのパートに分かれています。
1.アンチゴーヌが捕らえられるまで
2.クレオンとアンチゴーヌのぶつかり合い
3.アンチゴーヌが死に、結末を迎えるまで

最初のパートでは、客席は「アンチゴーヌが法を犯している」事を
分かっています。
乳母に「涙は取っておいて、後でもっと必要になるから」と言ったり
婚約者に別れを告げたり、彼女が死刑も覚悟をしたうえで、周りの人との
身辺整理的な事をしている、という事を見守るんですよね。
アンチゴーヌ役の蒼井優ちゃんは翻訳劇が似合うなあと思いますね。
何て言うんだろう、小動物みたいだなって言う印象でしょうか。
そしてアンチゴーヌの姉であるイスメーヌは伊勢佳世ちゃん。
美人でモテる姉よりも、化粧っ気のない妹の方が先に婚約者を見つけた
という事に僻むのかと思いきや、妹思いのお姉さんです。
落ち着いた雰囲気でお姉さんっぽい。低めな声がとてもいいですね。
あとエモン役の渋谷謙人が昔の高橋一生君みたいでした(笑)。

そして、敢えて見つかるように昼間、衛兵が居るときに再度父親を
埋葬しに行くという行動をして捕まるアンチゴーヌ。
そこで伯父のクレオンと対峙する事になるのが次の場面です。
生瀬さんが素敵な俳優さんだという事は重々承知しておりますが
本当に素敵だった・・。池田成志さんもですが、ふざけた演技をする
事がある方がシリアスな作品に出たときのパンチ力って、ハンパない。

まずクレオンのビジュアルが素敵。ナイスミドルって感じ。
権力欲はなく、本来は自分の趣味を追及するのが好きで理性的なタイプ。
王座についたのも「どうやら自分がやらねばならない」という責任感からで
権力に溺れるのではなく、王と言うのは損な役回りだと割り切っている感じ。
とはいえ、威厳もあります。言葉を荒げるような事が無くても、その目チカラ
と静かな会話で威圧感を感じさせて、観ていても圧倒されてしまう。

クレオンは姪であり、息子のフィアンセであるアンチゴーヌを助けたくて
何とか「無かった事」にしようと説得します。
ただクレオンが言うように「オイディプス王の娘だから罰せられないだろう」
とアンチゴーヌは思っていないはず。
理性的で合理的なクレオンには、分からなかったのかもしれない。
父を埋葬したのは「自分のためよ」と言うアンチゴーヌ。
父親を埋葬するのは正しい事であり、そうしたいと思う自分の気持ちに
対して素直に行動に移したのだから・・と言う事なんでしょう。

何を言っても言いかえしてくるアンチゴーヌにクレオンは彼女の父親が
どういう人物だったのか(お金にだらしなく、反逆を企てていた)事や
彼女が埋葬しようとしている死体は、果たして本当の父親なのかどうか
分からない物だという事を伝え「それでも埋葬したいのか」と詰め寄ります。

アンチゴーヌの父(と思われる)死体を野ざらしにしたのも、クレオンの
本意ではなく、民衆を納得させるために必要な事だったと言う事を説く
クレオンは、自分の希望や意思よりも、どう国家を運営するか、という
視点からの行動だという事が分かります。
そんなクレオンが法を曲げてでもアンチゴーヌを助けようとしている。

それに対してアンチゴーヌは、好きじゃない物にはイヤだという、
自分軸でしか考えられないし、視野の広さは大人と子供の差がある。
2人の会話を見ていると、全く噛み合っていない。

私から見ると、クレオンはどうみても現実的で、理性的で、自分を抑え
てでも法律を重視する、公正な大人に見えるし、非難されるべき所なんて
どこにあるの?って思ってしまう。
それに対して、アンチゴーヌは正直、何言ってるのかさっぱり分からない。

クレオンに父親の死の真実を告げられて、一旦「部屋に戻る」と言ったのに
「幸せになれ」と言われたクレオンに対して「幸せになるのに私はどんな
対価を払わなければならないのか」と叫びだす。
クレオンの王座に腰かけクレオンを見下したように話す様子はまるで、
“自分だけの王国”の王として君臨しているかのようだけど・・・
反抗する事が目的?
大人が嫌なだけ?
何かをガマンするのが嫌だって事?
クレオンが何を言っても伝わらない無力感を私も充分に感じながら
それは私が「大人」になってしまったから分からない、ジェネレーション
ギャップ的なものなのかなぁ・・・と考え込んでしまいました。

最後のシーンではクレオンが正しかった、死ぬのが怖いと衛兵に告白し
そして死んでいく。後を負うエモンとクレオンの妻(エモンの母)。
「眠るのはさぞ気持ちいいだろう」と言い、早く大人になりたいという
小姓に「大人なんかなるもんじゃない」と言いながら、いつもの生活を
淡々と送ろうと去るクレオンが切なかったですね。
そして、大人ってみんなそうやって折り合いをつけているものだよね・・と
思いっきりクレオンに共感してしまったのでした。

とても見応えがあって、役者さんも皆さん良くて、集中して観られた
舞台だったのですが、作者は何を伝えたかったんだろう・・と言う事が
頭の中をグルグルしてしまった終演後でした。