仕事を18時ピッタリに終えて、金山に向かいました。
フレックスだから、無理に18時に合わせなくてもいいんですけどね(笑)。

大人のけんかが終わるまで「大人のけんかが終わるまで」名古屋市民会館あ列
18:30開演、20:15終演
作:ヤスミナ・レザ  上演台本:岩松了
演出:上村聡史
出演:鈴木京香、北村有起哉、板谷由夏、藤井隆、麻実れい

【あらすじ】
不倫関係にあるアンドレアとボリスは、ある夜、レストランの駐輪場に車を止めたまま、揉めていた。ボリスが妻から推薦されたレストランに連れてきたことを、アンドレアは「デリカシーがない」と非難する。嫌気がさしたボリスが車を発進させると、駐車場にいた老女・イヴォンヌを轢いてしまい……。



 
ヤスミナ・レザと言えば、「大人はかく戦えり」の印象が強くて
期待値が上がっちゃう感じです。






舞台の中央には車が置いてあり、盆が回って1回転すると、車の所に
パンプスにミニスカート、ショートヘアの女性・アンドレアが現われます。
最初は「ん、誰だ?」と思ったのですが、鈴木京香さんでした。
ここで何故か拍手が起きていた・・歌舞伎かよ(笑)?!

車には男・ボリス(北村有起哉)も乗っており、ドライブをしている様子。
到着したのはレストランだけど、不機嫌そうにタバコをふかすアンドレア。
どうやら2人は不倫関係で、男が女を喜ばすためにオシャレなレストランに
連れてきたのだが、そのお店の情報を自分の妻から聞いた、と言う事が
原因で喧嘩になったらしい。
私は自分自身が気が短くて、合理的なタイプだと思っているものですから
アンドレアの発言や態度がまぁイラつくったら、ない。振り回される
ボリスが気の毒だし、一体この女の何が良くて付き合っているんだ?
と思わず首をかしげてしまいます。・・それとも、別れる寸前なのか?

結局、食事はせずに戻る途中で、女性を轢いてしまった!と思い
慌てて車から降りてくるのですが、轢いてしまったと思った老女の
イヴォンヌ(麻実れい)には怪我はなくて一安心。
ただ、一緒に居たフランソワーズ(板谷由夏)はボリスの妻の友人で
気まずい雰囲気。さっさとその場を離れたいボリスに対して、ボリスや
その妻への反抗心から、イヴォンヌの誕生日のお祝いをするから、
一緒に乾杯しましょう、という誘いに積極的に乗るアンドレア。結局、
断るに断れなくなってしまうボリス。・・・というのが、この舞台の背景。

あとはずっと、そのレストランでの会話劇です。

イヴォンヌは認知症のようで、自分の鞄を肌身離さず持っており
常に手帳に何かを書きつけている。
バツイチのフランソワーズはアンドレアを当然ながら目の仇にして攻撃。
上品なフランソワーズとアンドレアは服のセンスから全く違う。
フランソワーズと事実婚状態のエリック(藤井隆)は人はいいけど
若干空気が読めず、優柔不断。
アンドレアもバツイチ子持ち。鎮静剤のような薬物を常用しており
情緒不安定。
ボリスは多角化経営で事業拡大をしたところ、大きな負債を抱えてしまい
せめてアンドレアには優しく接して欲しいのに、振り回されてばかり・・。

フランソワーズはイヴォンヌに尽そうとしているが、イヴォンヌは
自由奔放で裏表のないいアンドレアの方が波長が合うらしい。
ボリスはアンドレアの気を引こうとするけど、アンドレアには
ことごとく拒否されてしまう。
牡蠣が食べたいという母親の希望を叶えようとレストランに連れて来て
母親のバースデーディナーを滞りなく進めたいエリックなのに、
みんなは勝手な事ばかり・・・。

とにかく、全く噛み合わない。観ていてイライラするぐらい(笑)。
もちろん、会話は笑える所もあるし、場面場面では、ボリスや
フランソワーズ、エリックなど共感できる所もあります。
アンドレアですら、滅多に会えない恋人に会うために、高価な新しい靴を
買って(敢えて「服」ではなく「靴」というのが、さもありなんというか)
楽しみにする所なんかは、とても共感出来たりするんですけどね。

そう言えば「大人のけんか」って何なんでしょうね。
「喧嘩」をしているというよりも、自分の主張をぶつけているだけ・・
と言う風に見えるんですけどね。
それに言い争っていても、お互いの共通点が見つかったりして、
何となく親近感を感じあうフランソワーズにアンドレア。
「本音で話さない」とフランソワーズに冷たかったイヴォンヌも
「私はあなた(フランソワーズ)が大好きよ」と言う事で、お互いの
距離感がぐっと近づく嫁・姑。
そればかりか、エリックも含め3人で馬鹿笑いして「楽しい誕生日だった」
と言うイヴォンヌ。
この二人、一緒に居ても絶対にプラスにならないんじゃない?と思う
アンドレアとボリスだけど、本当にダメになったらまた会いに来れば
と言って去っていくアンドレア。
今までは「まだ居たの?」と言われるぐらい、動かなかった2人と比べると
最後のシーンはとても象徴的でしたね。

大人って、子供よりも立体的なんですよね、いろんな面があって。
そして、相手の事がどうこう・・ではなく、自分の主張を相手にぶつける
と言う事が「大人のけんか」なのであれば、相手を認めたり、
受け入れるのが「大人のけんかが終わる時」なのかな。

今回は一番インパクトが大きかったのは、麻実れいさん。
今まではどちらかと言うと「怖い役」が多かった気がしますので
こういうキュートな役は新鮮で、存在感も大きくて、さすが、と思います。

有起哉さんの髪毛と服装が乱れていくのと、振り回され度が比例していて
情けなくて、切羽詰っている男っていうのが、ピッタリでもありました。

私の先入観もあると思うのですが、麻実れいさんと、北村有起哉さんは
とても魅力的で、活き活きと演じていらっしゃったなぁという印象が強く、
藤井隆さん、板谷由夏さん、鈴木京香さんはお上手なんですけど、全体に
こじんまりしている、という印象が拭えなかったな・・。
面白くないとは言いませんが、「大人はかく戦えり」が面白かった
という印象が強くて、無駄にハードルを上げてしまっていたかもしれません。
やっぱり現代の翻訳劇って、難しいなぁ・・と言う事を再確認した
舞台だった気がします。