本をよく読む友人が「読んでみる?」と貸してくれていた本です。
“大人の目”なので、なかなか本に手が伸びない今日この頃ですが
借りたら返さなければ・・・早く読まなければ・・・と思い
Kindleでダウンロードしたものも、Prime Readingでダウンロード
したものも、書籍で買ったものも数多く残っていましたが
まずはこちらを読んでみる事にしました。

永い言い訳「永い言い訳」
著:西川美和
【内容】
人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。悲劇の主人公を装うことしかできない幸夫は、妻の親友の夫・陽一に、子供たちの世話を申し出た。妻を亡くした男と、母を亡くした子供たち。その不思議な出会いから、「新しい家族」の物語が動きはじめる。




著者の西川美和さんは映画監督として有名な方だとは知っていますし
彼女の監督作品は何本か観た事があります。
そしてこの作品が映画化され、本木さんが主演していた事ぐらいは
知っていました。





奥さんが事故で亡くなっていた時に浮気をしていたゲス男の話だ
と言う事ぐらいは知っていて、なんだか微妙な話なのかなぁ・・
と思って読み始めましたが、あっという間に読了です。
面白かった・・。

主人公の有名作家の男の、「人」としての再生物語、という感じかな。
でも「再生」というと、もともとちゃんとしていた事があった
みたいなので、適切な単語ではない気もします。
いい大人が、妻を突然失うという事件をきっかけに、人として
当たり前に持っているであろう(持っているべき)人に対する感情や、
人との付き合い方を身につけて、自分自身や自分と妻との関係を
振り返っていく話、ってとこかな。

文中にも出てくるけど、この主人公は自己愛が強いとか、
自意識過剰なんだろうな、と思います。
以前、男性で「一人で映画を観に行けない」人に理由を聞いた時
「アイツ、一人で映画観にきてる寂しいヤツ、みたいに思われたくない」
と言うようなニュアンスの事を言っていて、全く理解不能だったけど
恐らくそれは、その人にとっては切実な感覚なんだろうなぁ・・と
思った事を、何となく思い出しました。
でもそれは、この主人公に対しても言える事だけど、「こうしたい」
「こうありたい」という自分の意思というか、自分の物差しがない
と言う事の裏返しにも思えるんですよね。

ただ、この歳まで結婚もせず独り身で居るからこそ、自分の感情を
ストレートにぶつけてくる人が眩しかったり、ウザく感じたり、
ひねくれてみたくなったり、ちゃんとしている人に対して劣等感を
感じたり、という所については、少なからず共感したりもしました。

そんな「幸夫くん」がどんどん変わっていき、真平の受験結果に
泣いちゃう所とか、最後の奥さんへの手紙だとかを読んでいたら、
思いがけずこちらまで泣けてきてしまって、幸夫も陽一の一家も、
どうか幸せになって欲しいな、とホッコリした気持ちになりました。

本が良かったので敢えて映像までは観なくていい、というか観たくない
気分ですが、ブックレビューを観る限りでは、映画版も良かったらしいですね。
自分ではまず買わない本だったのが読めるのは、友人が貸してくれる
からこそ。自分で買うとどうしても偏りますからね。
あともう1冊借りているので、早く読みたいのですが、会社のデスクの
中に忘れてきちゃったよ・・・(涙)。