この作品が舞台化されて、観に行きたかったんですが、なかなか
スケジュールが合わなくて断念。せめて原作でも読むか・・と
買ってそのままになっておりましたが、読書熱が上がっている
今がチャンス!と読み始めたのでした。

安楽病棟「安楽病棟」
著:帚木 蓬生
【内容】
お地蔵さんの帽子と前垂れを縫い続ける老婆、深夜になると引き出しに排尿する男性、異食症で五百円硬貨が腹に入ったままの女性、気をつけの姿勢で寝る元近衛兵、自分を二十三歳の独身だと思い込む腰の曲がった八十四歳。様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた相次ぐ患者の急死。理想の介護を模索する新任看護婦が気づいた衝撃の事実とは!?




結構ボリュームのある書籍ですね。
これだけの分量の内容を、どうやって脚本にまとめたんだろうな・・
やっぱり舞台が観たかったな。




これ、「終末期医療の現状を鮮やかに描く傑作ミステリー。」
って紹介されていたんですが、ミステリーなのか?
というか、ミステリーだと思って読み始めていると、すぐ「犯人」は
分かってしまうし、この本の主旨をミスリードしてしまいそうな
気がするんですけどね。

本の序盤は、痴呆病棟に入院するまでの老人の背景をそれぞれ
描いていて、それぞれに様々な背景があるんだな、と言う事が
丁寧に描かれています。
そして中盤以降は入院した彼らを介護する病院に勤める
新人看護師の独白のような記載になっていきます。
(後からこれは「手紙」であることが分かりますが)
大学の看護科まで進み、敢えて痴呆老人の介護の道を選んだその
背景と、病棟での介護の様子が事細かに描かれています。

老人と暮した事がある人であれば身につまされるというか
とてもリアルに描かれていて、フィクションとは思えない。
私も祖母と長年暮らしておりましたので、生前の祖母の事を
読みながら思い出しておりました。
また「安楽死」にもさまざまな種類があって、色々な考え方が
ある事を知る事も出来て、そういう面では面白い一作でした。
何が幸せなのか、についても考えさせられました。

ただ、やっぱりミステリーではないよねぇ(再)。
そして、これをどう舞台化したのか、ますます興味が
湧いてきちゃいました。