先日に続いてこちらをGETし、さっそく読んでみました。

演劇プロデューサーという仕事「演劇プロデューサーという仕事」
著:細川 展裕 
【内容】
 大阪のローカル学生劇団は、なぜ70万人興行のエンタメ集団に化けたのか―。小劇場ブームを牽引した「第三舞台」出身で、現在は「劇団☆新感線」の快進撃を支える演劇プロデューサー・細川展裕による自叙伝。<演劇は興行です。興行はお金を集めます。お金は雇用を生みます。社会と演劇はそこで繋がります。したがって、演劇プロデューサーの仕事とは、「演劇を通して雇用を生み出すこと」であると信じています>(序章より)
演劇で稼ぐ――その秘訣とは? 鴻上尚史、古田新太、いのうえひでのりとの対談・鼎談も収録。



とはいえ、先日の本は私的にイマイチだったため、ちょっと
ビビってしまって、どうしようか・・と思ったのですけど、
結局買っちゃったよね(笑)。

それはやはり私が劇団☆新感線が好きだという事と、この著者
である細川さんに興味があったので。
細川さんって、ダブルのスーツを着ているイメージなんですよね。
いつだったかなあ、一時、新感線の公演が少し間隔があいた時
細川さんが介護か何かでエグゼクティブプロデューサーを降りるとか、
なんか一線を離れるという記事を読んで、「ああ、新感線は解散を
しちゃうのかな、解散は無くても変わっちゃうのかも・・」と
思ったんですよね。

でもその後の公演でも(確か「蒼の乱」だったんじゃないかなぁ)
劇場でお見かけしており、それが公演初日だったから特別?と
思っていたんですけど、それ以降もお見かけしてまして。当然ステアラでも。
なので「あれ?新感線を離れたんじゃなかったっけ?」と思っていたんです。
読めばその真相が分かるかな?というのもありまして。






この本は面白かった!

もちろん、私が新感線好きという事も大きいと思いますよ。でも
劇団のこと、公演のこと、演出家や作家さんのインタビューでは
見聞きした事があっても、プロデュース側のお話というのを聞く機会は
あまりないと思うんです。
だから、劇場使用料がどれぐらいだとか、初めての劇団員のギャラが
どれぐらいだったとか、そういった金銭面のお話って興味深いし、
キャスティングの裏話なんかめったに聞けない。
「薔薇とサムライ」は7年越しのキャスティングだったとか、
「修羅天魔」のお話を天海姉さんにした時の話とか、ね。
「SHIROH」で上川さんが「歌はゼッタイに無理」とおっしゃっていた
っていうのも、頷けちゃう。

「鋼鉄番長」で橋本じゅんさんがダウンされた時に、細川さんが
病院のじゅんさんを見舞ったら「このお金(公演中止に伴う損失)は
どうしたらいいんでしょう」とじゅんさんが聞いてきた、という話は
じゅんさんらしくて、なんだか今更ながら切なくなりましたし
三宅さんに急遽バトンタッチした経緯も書かれており、当時のことを
思い出しました。(私自身はじゅんさん版で観ていますが)

私はそれほど前から新感線の公演をリアルタイムで観ていたわけでは
ないですけど(「吉原御免状」からです)それでも自分が観てきた
公演の裏側がちょっと知れて、面白い。

もちろん細川さんはもともと第三舞台に関わっていらっしゃって、
その後新感線に移っていらっしゃった経緯とかも興味深いですが
この方、飄々と仕事をしているように書かれていますけど、
とても思い切りのいい方なんですよね。
片っ端から飲み会に参加して、消費者金融やカードローンで借りられるだけ
借金をしてでも、多めにお金を払って人脈を作ってきて、時には
バクチと言われるほどの大きな公演にも挑戦している。
なかなか真似できるものじゃないと思います。
「縁と運」とおっしゃいますが、それを呼び込むための事は
ちゃんとなさっているんだと思います。
そして、ちゃんとビジネスとして成り立たせているというのが素敵です。
それこそプロの仕事だと思いますから。
細川さんは「人たらし」と言われているようですが、それも才能ですよね。
高田聖子さんのブログを見て、私もホッコリさせていただきました。

芝居をやっていた知り合いに「新感線は演劇じゃない」と言われた
事があります。この本によればステアラでの「髑髏城の七人」は
1年2か月の間、大手の新聞に一つも劇評が出なかった、とのこと。
確かに新感線は今までに演劇賞、取ってないですよね。
(中島かずきさんは戯曲賞を取ったことはあったと記憶していますが)
多くの人を楽しませるって、難しいと思うんだけどな。
1万円以上のチケットを買う人で劇場を一杯にし続けるってすごいこと
だと思うんだけどなー。じゃあ、演劇って何?って思うよ、私は。
まあ別に新感線が演劇賞を取ろうが取るまいが、気にしませんけども、ね。

細川さん、41周年記念公演(2021年)を思いついたとのこと。
引退なんかせずに、もっと頑張っていただきたい。
対談も面白くて、あっという間に読んでしまった1冊でした。