1回目は「どうなのよ?」と思う内容だったので、私のテンションも
低かったのですが、「次こそは」と言う思いもあって、仕事を
フレックスで早上がりして豊橋までやってきました。

2回目
シリーズ『古典遊学』 西洋古典学び塾
2018年11月22日 18:30〜20:00
講師:鵜山仁
穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース


貼り出してあったポスターにも「日程2 11月22日 ギリシャ悲劇」と
書かれていて、よくも恥ずかしげもなくそのまま貼り出せるよな・・と
思いながら受付に行くと「前回の資料持っていらっしゃいましたか?」と。
前回の資料が要るのなら「持ってくるように」って言ってよ!
「次回に使う資料は配布していません」って言っていたから、今日は
別に用意してあると思うじゃん!
「お持ちでない方はこちらをどうぞ」と前回の資料も用意がありましたが
何か…釈然としない。

前回の終わり「次は18時から始めましょうか、18時30分に来てもいいですけど」
みたいな訳のわからないアナウンスをされ、何時に行ったらいいんだよ、と
思っていましたが、平日ですので行ける時間に限界はあります。
18時過ぎに会場に入ると、今回はシニアプアロデューサーの中島さんと
鵜山さんが出迎えて(?)くださいました。
で、結局開始は予定通り18時30分。
そりゃ告知してあるんだから、そうでしょうよ、とは思いますが
前回あんなこと言うから、皆正直に早く来てるじゃん。
私が着いた時には、既に8割以上は着席していました。

既に「色々と段取りが悪いわっ!」とかなりテンション低くなった私。
でも、講座内容は前回とは違って、とても面白いお話がいろいろ聞けました。
自分の書いたメモが読めず(笑)、内容は記憶に頼っておりますし
偏っていると思いますが、それでもよろしければ、追記でどうぞ。






【シェイクスピアの歴史劇と英仏の歴史】
シェイクスピア作品37本のうち10本は歴史劇と言われており、そのうち
8本が英仏の100年戦争とイギリスのばら戦争にまつわる話。

前期に書かれた四部作・・・ヘンリー六世(第一部〜第三部)、リチャード三世
後記に書かれた四部作・・・リチャード二世、ヘンリー四世(第一部、第二部、
             ヘンリー五世)

歴史の流れと執筆順は違う。(まあ有名な話ですけどね)
とても若い頃に書かれているが、若い頃に書いたと思えない程奥行がある。

≪ここでランカスター家とヨーク家の家系図の説明≫

英仏100年戦争の頃はイギリスとフランスは同一視されていたので
リチャード二世からヘンリー四世が使っていた言葉は、ラテン語とか
フランス語だったと言われているらしく、「イギリスの王だ」という
意識はあまり持っていなかったらしい。
(「あれ、“ヘンリー五世”では英語を教えるシーンがあったけど?」と思ったら)
そういうイギリスの王とか英語とかのアイデンティティを明確に
持っていた最初の王がヘンリー五世と言われている、とのこと。

その後、ヘンリー五世(ハル王子)が人気がある王だったという事、
若くして亡くなり、後を継いだヘンリー六世の即位が生後9か月だった
という事と、その後の混乱など、シェイクスピア作品と絡めながら
歴史の説明をしてくださいました。


【ヘンリー六世の上演にあたって】(以下箇条書き)
・休憩を合わせると10時間ぐらい。立ち回りばかり。けが人が出ないほうが
 不思議なような作品で、新国立には整体師がスタンバイしてくれていた。
・3本連続上演すると、同じお客様と休憩ごとに何度もすれ違って面白かった。
・これだけ同じ事をやっていると、劇場に居る時間の方が長くて、歌舞伎的
 というか世界観が変わってきた。
・木場勝己さんがやったトールボットと言う役は小男なんだけど、
 ピッタリだ、と思った
・新国立で「ヘンリー六世」を上演しようと思ったのは「人はなぜ戦うのか」
 というテーマを持っていたから。でも芸術監督の時にプログラムを
 決めなければいけなくて、「ヘンリー六世」をやっちゃえば、3本
 決まる、と思ったなんて笑い話も。
・岡本君が出てくるたびに同じ曲(OverThe Rainbow)を使ったんだが
 著作権料が高くて。ビデオもキャストの事務所の関係で門外不出
 みたいになってしまって。
・ヘンリー六世の時は芸術監督だったが、無名の役者(浦井君)を
 タイトルロールに使って、しかも3部作なんてとんでもない、と
 反対された。ただ新国立ではオペラも上演していてシリーズものを
 楽しんでくれるお客さんがたくさんいて、盛況で終わったが、
 新国立でなければ無理だったかも。

(番外編:進行の中島さんより)
・「ヘンリー六世」では浦井健治さんが舞台に出てきたとき、まだ若い
 浦井さんが震えているように見えて、初めて王冠をかぶった時の
 若いヘンリー六世と重なって見えた、みたいな事をおっしゃってました。


【坂東三津五郎さんとの想い出】(以下箇条書き)
・アルバイト先でのエチュードをやりましょう、となったけど、
 三津五郎さんが「アルバイトしたことが無いから分かりません」と
 言われて面白かった
・歌舞伎では数多くの役を経験しているので、実生活を参考にする
 というより、過去の役のバラエティを参考にして演じていると言っていた
・翻訳劇(マクベス)をいずれやりませんかと生前言っていた。それに対し
 三津五郎さんは「翻訳劇は敷居が高い」と言っていた。


【自分が演出をするなら】
(進行の中島さんから)
Q:「彩の国のシェイクスピアシリーズはあと3作残っています。
(『ジョン王』『ヘンリー八世』『終わりよければすべてよし』)
 鵜山さんが演出したものはありますか?
A:「無い。全部あまりやりたくない・・・」(身も蓋もない(笑))

(番外編:中島さんより)
 女性でシェイクスピア37本全部翻訳した人がいない。松岡さんが
 全部訳すと、世界初になるので、期待しているとのこと。


【小田島先生の翻訳作品が多いですが】
・昔のシェイクスピアシアターで毎月、違う演目のシェイクスピア
 作品を上演していて好きでよく観に行っていた。それが小田島
 先生の翻訳だった。(進行の中島さんもこれに出演していたらしい)
・だから、自分にとっては、シェイクスピアというと小田島先生の顔が
 思い浮かんでしまう。
・松岡さんとかほかの人の訳のものもやったことはあるんだけど・・。
 

【今後の上演について】
・新国立で「ヘンリー六世」から始まって、「ヘンリー五世」までやった
・あと1本で歴史劇8部作が完結するが、再来年その1作を上演
 することになっている。足かけ10年かかった
・この作品を全部通して上演する、と言う話が無い訳ではないのだけど
 そうすると役者を1年ぐらい拘束することになってしまうので・・


【シェイクスピアのセリフが分かりづらいと言われるが】
・話している人だけじゃなく、それを聞いている人のリアクションなど
 も含めて聞いてもらうと、分かりやすいのではないか



『リチャード三世』の一幕一場のセリフをみんなで読んでみたり、
そのセリフの演出についての鵜山さんの考え方(演出をする際に
どのような思考で演出をつけていくか)も面白かったですね。
「このセリフ(独白)は誰に向かって言っているんだろうか」
「“ようやく”という単語があるが、それはどれぐらいの期間なのか」
そういう事で言い方等も変わってくるから、そこを考えていかないと、と。
演出ってもっと直観的なものかと思っていたのですが、かなり論理的な
アプローチじゃない?と思いました。


さすがに私も観ていないシェイクスピア作品はあと4本になりました。
歴史劇の8部作も全部観ているし(鵜山さん演出の「ヘンリー六世」
だけは観ていませんが)「ホロウ・クラウン」を観たりして歴史の
全体の流れも分かるようになってきたし、「天保十二年のシェイクスピア」
等も観ているので、全体にとても面白く聞かせていただきました。

私の記憶が偏っていることもありますが、それを割り引いても
「ヘンリー六世」に関するお話が多かったです。それだけ鵜山さんに
とっても大きな作品だった、という事なのかもしれません。



再来年の上演も楽しみですが、ぜひ「ホロウ・クラウン」のように、
全編通しで観られる機会、作ってほしい。勿論今までのカンパニーで。
そんな企画、新国立でないと、難しいでしょうけど。
1回目はどうなる事か、と思いましたが、2回目の今回はとても
楽しく、充実しておりましたので、フレックスを使ってでも来た甲斐が
あったというものです。鵜山さん、ありがとうございました。


今回はアートスペース
今回は座席を全部格納したアートスペースが会場でした。


<おまけ>
前回、中島さんが「海外で女優が一度はやってみたいと思う役」を
教えてくださっていました。
1番が、レディ・マクベス。そして2番がガートルード。
どちらもシェイクスピアの登場人物なんですね。