1か月ぶりの遠征でございます。
今月は比較的ゆっくりしたスケジュール、のはず!

帰郷「帰郷」俳優座劇場 最前列
13:00開演、15:15終演
作・演出:入江雅人
出演:池田成志、田口浩正坂田聡尾方宣久岡本麗入江雅人
【あらすじ】
「しげちゃん、ドライヴ行くばい、、、ドライヴ」そして車は 走り出す。あの海に落ちる夕日を見るために、、。1980年、福岡。真夏の暑い夜。しげお、向井、香月、長崎、竜彦の5人は、学校のはずれの部室で秋の文化祭で上映するホラー映画を撮影していた。そこで彼らが体験する不思議な出来事とは?



これはキャストを見ると、チケット思わず取っちゃうヤツです(笑)。
ノリ的には過去に観た作品を思い出させるのですが、
改めて見ると、共通項としては、池田成志さんだけなんですね・・

私は入江さんの一人舞台を拝見したことが無いので、今まで
知りませんでしたが、「帰郷」はその一人舞台で上演されてきた
作品なんだそうですね。
今回はその作品に色々と肉付けをして、長編にしたうえでの上演
という事なんだとか。




 
舞台の上には、パイプ椅子がセンターに2列×2で並んでいるだけ。
他のは何もない素舞台の状態です。
開演前からスピーカーからは懐かしい音楽がいっぱい流れています。
バグルスの「ラジオスターの悲劇」とか(この曲を聴くと中学とか
高校の頃の深夜ラジオを思い出す(笑)。)オリビア・ニュートン=ジョンの
「カントリーロード」とか。
開演前には、「劇中で使われる方言は九州の各地の方言を使っている
ので博多弁ではありません」という注意(?)のアナウンスが流れますが
そういう細かい違いがあるとか、分かってませんので(爆)。
(作る側のこだわりって事なんでしょうね)

この椅子は車と言う設定のようです。
しげお(池田成志)と向井(入江雅人)がドライブに来ているようです。
向井が上京する前の日。上京前の最後のドライブ。

そして、時間は思いっきり遡ります。
しげお達が高校生の頃の話。自分たちで夜の学校に忍び込み、幽霊モノの
映画を撮影しています。このシーンは今回の公演で追加された部分らしい。
初日という事もあってか、何となくアドリブ感が漂っていましたね。
楽しく高校生活を送っていた事は伝わりますが、あの女の幽霊はいったい
何だったのか・・は、とうとう最後まで分かりませんでした(爆)。
あと、このシーンにここまで時間をかけなくても良くないですかね。

その後、東京に上京して役者を目指すもの、九州に残って家業の喫茶店を
継ぐ者、東京で会社員になる者・・と、様々な生活をしている2021年。
東京ではゾンビウィルスが流行っていた。らしい。
再登場して早々にゾンビになってしまい、それ以降、ほぼ出番のなかった
竜彦(尾方)は、ちょっと気の毒でございました(笑)。
ただこの「ゾンビウィルス」があまりにも唐突過ぎ。(私は一人芝居を
観ていないので)ゾンビ映画の撮影シーンで「今、ゾンビネタ大丈夫ですか」
みたいなセリフがあったけど、意味分からなかったですからね。

「ゾンビウイルス」の説明が無いものだから、どういう症状なのかとか
分からないし、結局最後までよくは分からなかったですね。
どうやら感染すると、ゾンビ化して他の人を襲い、噛んだりして感染が
拡大するという事は分かったのだけど、ゾンビ化した後どうなるのか、とか
(ゾンビ化した段階で、生物学的には死んでいるらしいのだけど、
だったら最後に「ゾンビを殺す」ってどういうこと?どうやって?と
思いますしね)
じゃあなぜ、しげおは感染したのに他の人を襲わなかったのか・・とか、
「?」が残ったままになっちゃったんですよねぇ。
その辺りの唐突さと、説明の甘さがねぇ・・・。
「ゾンビウイルス」とかって、突飛なものを出すのであれば、そこは
ちゃんと説明してもらわないと、気持ちが置いていかれちゃうんですよね。
すみませんね、理屈っぽい左脳人間なものですから。

ただ。

この舞台、中盤ぐらいまではちょっと気持ち的に距離感があったのですが
最後の数十分。ドライブのシーンがとにかく良かったのです。

ゾンビウイルスに感染して、殆ど意思表示も出来なくなったしげお。
「海がみたい。夕日をみたら殺して」という本人が書いたメモに従い
幼馴染たちが夕日を見にドライブに行く、その道中のシーンです。
目的地に着いたら、本人の希望とはいえ、幼馴染を殺さなければならない。
でも最後に楽しい時間を過ごしたい。出来るだけ平常心でいたい。
高校の頃の話をしながら、一見楽しく盛り上がる車内の様子が切なくて。
本当に何気ない会話なんですよ。
なのに、すごく伝わってくるものがある。
これって、やはり俳優さんたちの力量なんじゃないかな、と思う。
このシーン観るだけでもちょっと満足してしまう感じ。
もしも自分がしげおと同じ立場だったら、この何気ない仲間たちの
会話が聞けるって、とても救われる想いがするだろうな・・なんて。
それまで「ゾンビウィルスって何よ。」って思っていたのに、
すっかり感情移入しちゃってる自分に驚いたわ。

意思表示はできないし、しゃべらないしげおだけど、唯一カーステレオの
リモコンだけは操作出来て、曲を止めたり、次の曲にスキップしたり・・
という事で、かろうじてコミュニケーションらしいものが取れている。
「一番好きな曲をかけなよ」と言われて、しげおが選んだのが
大瀧詠一の「さよなら夏の日」。
そういえばオープニングもドライブのシーンで流れていたのも大瀧詠一
(「恋するカレン」)だったなぁ・・・。

方言を使った脚本は、どうしても聞き取りづらい事も多くて、
あまり得意ではないのだけど、今回の九州弁は分かりやすいし、何だか
とてもホッコリとあたたかいものを感じました。
全員ネイティブ(九州出身者)だったから、なのかもしれません。
舞台セットも殆どなく、小道具も殆どなく、見立てとパントマイム
という、舞台ならではの演出は、とても楽しめたと思います。

まあ、脚本で「ん?」と思う所はあったにせよ、結果的には
とても楽しめた作品だったな、と思います。観に行ってよかったな。