今回の遠征の最後はこちらです。
この公演が観たいために、遠征を月末にする事にしたのでした。

出口なし「出口なし」神奈川芸術劇場・中スタジオ 最前列
14:00開演、15:25終演
作・演出:白井晃
出演首藤康之、中村恩恵、秋山菜津子
【あらすじ】
あの世で一室に閉じ込められた死者ガルサン、イネス、エステル。ガルサンは徴兵忌避の罪で銃殺され、イネスは同性愛の相手とガス心中し、エステルは嬰児殺しを犯し、肺炎で死んだのだった。わけありの過去を語り合いながらも、理解し合えない彼らは、死ぬこともできず、出口のない密室でお互いを苦しめあう。
 

神奈川芸術劇場は過去に一度来た事がありますが、あの時は友人と
中華街で食事をし、その後劇場まで歩いたのですが、ちょっと
迷ったりした事もあり、ずいぶん遠くて大変な劇場・・という
印象が強かったので、出来れば行きたくない劇場の筆頭でした(笑)。
今回はみなとみらい線の駅を利用したので、スムーズに到着。

昨年同じ舞台を観たばかりで、その比較がしてみたかった、
というのが一番の理由ですが、本当に全く違う雰囲気でしたね。




薄暗い部屋。
正面に大きな扉があって、扉の横には呼び出しブザー。
部屋にはデザインの違う3脚の椅子があるばかり。
調度品の印象は違うものの、セットは以前観たものと同じ。
そりゃそうですけどね、脚本とも連動している訳ですから(笑)。

ストーリー自体は同じなので、割愛しますが、受ける印象は随分違います。
それは役者さんが違う事もですが、大きな要素は「ダンス」でしょう。
前回のシスカンパニーの公演とセリフ量がどれだけ違うか?は
厳密には分かりませんが、前回観た時はとにかく役者さんが
「喋りっぱなし」という印象が強かったのですが、今回は全く
そういった印象はありませんでした。
だからと言って、説明不足な印象がある訳でもなく・・・。
実際にセリフ量がどれだけ違うかというよりは、ダンスで
雰囲気など、伝わる部分が多かった、と言うのが理由かな・・と。

ガルザンの印象は、何となく大きな差が無いような気がしましたが
エステルはかなり違っていた気がします。
シスカンパニーの時は多部未華子ちゃんで、実際に若いし、
ビジュアルもお人形みたいに可愛いので、若くて無邪気で、それ故に
浅はかで残酷・・っていう印象が強かった。
ガルザンとイネスの間を行ったり来たりする事もあって、自分の利害関係で
付き合う相手や付き合い方をコロコロ変えている、というような。
でも今回は、イネスを殆ど受け入れていないというか、明確に
ガルザン寄りなんですよね。
そして、あまりフワフワしていない感じがする(今回のほうが成熟した
大人という印象)ので、そういう意味では悪女度は高かったです。

イネス、シス版のほうではもっと恋人(女性)への未練が強かった
気がしますが、今回は割とそこは淡泊だったというか。
秋山さんのイネスは割と知的というか、冷静な印象が強かったですね。

いずれも好みとしては一長一短という感じではありましたけど、
今回観た公演の方が、3人の「延々と続く絶望感」がよりひしひしと
伝わってきました。
刺しても、撃っても殺せない、死ねない。この状況から逃げ出せない。
座る椅子まで定められている。自分の意思では変えられない−。
この3人で同じ部屋で過ごさなければならないという「懲罰感」は
ひとしおでした。照明が全体に暗めだった、という事もあるかも
しれませんけど。

首藤さんは何度か拝見していますが、こんなニヒルというか、世間ずれ
した役もハマる方なんだ・・というのが新たな発見。
中村恩恵さん、この方はもう観た瞬間に「あ、バレリーナだ」と
思いましたが、やはりバレエのキャリアのある方だったんですね。
登場シーンの衣装や帽子が素敵で、また姿勢も良いですから思わず
見入ってしまいそうでした。
このお二人のように、自分の体を自分が意図している通りに動かし
そしてそれを表現に使えるって、すごいことだなぁ、と思わずには
いられません。

大好きな秋山菜津子さんもカッコよく、近くで拝見できて嬉しかった!

KAATはどうしても苦手感を持ってしまっていましたが、
今回、少し苦手感を克服できた(・・と思っているので)
またいい舞台が上演されるときは、躊躇せずに見に来たいですね。