雪が積もったら、与野本町から劇場まで歩くの嫌だな・・
と思っていましたが、天気が良くてよかった〜。

ヘンリー五世「ヘンリー五世」彩の国さいたま芸術劇場 B列
13:30開演、16:40終演
原作:W. シェイクスピア   演出:吉田鋼太郎
 出演:松坂桃李、吉田鋼太郎、溝端淳平、横田栄司、中河内雅貴、河内大和、間宮啓行、廣田高志 ほか
【あらすじ】
父ヘンリー四世の死とともにハル王子は新王となり、放蕩の限りを尽くした若い時代とはうって変わり才知溢れ尊敬を集めるヘンリー五世に成長した。フランス皇太子からの挑発を受けた新王は、ついにフランスへの遠征を決意する。勇猛果敢な新王のもと、意気揚々と進軍するイングランド軍。敵を迎え撃ち壊滅させようと、うずうずしているフランス軍。巻き込まれていく市民たち。"名誉“の名のもと、戦いは悲惨なものとなっていく。圧倒的な兵力で押し寄せるフランス軍に対し、瀕死の状態のイングランド軍。名君ヘンリー五世はこの窮地に何を考えるのか。どう立ち向かうのか。この大戦争は人々に何をもたらすのか―




昨年、新国立版を観ておりますので、単純にこのシリーズを観たい
と言うだけではなく、観比べてみたい・・という想いもあって。
松坂君の演じた「ヘンリー四世」も観ていますので、その
連続性も楽しみでしたしね。






舞台上には映像が映し出されます。「ん?」と思うとそれは
同じく松阪桃李君が主演した2013年上演の「ヘンリー四世」のものでした。
オープニングで舞台奥から走ってくるハル王子とフォルスタッフ。
わぁ、懐かしいなぁ・・。
その時の自分のブログを見たら「桃李クン主演で「ヘンリー5世」
やってくれないかなあ。」って書いていて「おお、叶った」と思った(笑)。
ダイジェストのように映像が流れ、そしてヘンリー四世崩御の後
ハル王子がヘンリー五世として即位する、フォルスタッフとの
決別のシーン。ああ、この斜めの行進のシーン、思い出すわぁ・・。
「ヘンリー四世」の映像から、実際の役者の演技へ移り変わり、そして
いよいよ「ヘンリー五世」のスタートです。

舞台奥には木を組んだ要塞のようなセットがあり、そこから
漏れてくる光がとてもキレイ。
すると奥から歩いてくるのはスーツ姿の吉田鋼太郎さんです。
フォルスタッフ役ではないのか?と思ったら説明役なんですねー・・。
そうか、こういう役で登場するようなポジションになったのね、
と、感慨深いというか寂しいというか。
ヘンリー五世ではイギリス−フランスと場面が良く入れ替わったり
細かい場面を省くので、分かりやすくするために度々説明役が
出てきてくるんですよね。
鋼太郎さんはちょいちょい「はい、ここは笑う所ですよ」って
ウケを狙いながら進めていく感じ。
結局、ヘンリー五世の中でフォルスタッフの登場シーンは無くて
(まあ、あっても弱って死んでいくだけだからね・・)
役者としての鋼太郎さんがあまり楽しめなかったのは残念。

とにかく、松阪桃李君のヘンリー五世のかっこいいこと!
それに尽きると言ってもいいぐらい(笑)。
個人的には浦井健治ファンなので、「浦井君の方が良かった」と
言いたいところですが(笑)、甲乙つけがたい。
でも、やっぱり雰囲気が違うのは面白いですよね。
松坂君のヘンリー五世は、まだ衝動も激情もあるけど、理性で抑え
られるようになった、という感じ。だからバードルフが処刑される
様子を見ている時の表情は痛々しくて、そのショックは新国立Verより
大きかったな、と思います。浦井君のヘンリー五世の方がもう少し
先を見ている感じがしたのに対し、松坂君のヘンリー五世はその瞬間を
全力で生きている、という感じがしました。

終盤の求婚シーン。これは浦井君の時にも思いましたけど
「女にモテそうもないこんな顔」とかイケメンの俳優が言っても、
そんなの説得力がある訳ないじゃん(笑)。
私は別に松阪桃李ファンではないけど、無理やりキャサリンの唇を
奪うシーンではキュン♪としてしまう程の素敵でしたよ。
ここは正直、浦井Verよりも萌えました(笑)。
新国立版ではキャサリンは怯えていたのですが、さい芸版では
どちらかと言うと、ヘンリー五世に惹かれているような所も見え隠れ。
私はこっちの解釈の方が好きかな。
ちなみに、女中役の女優さんが滑って転んじゃってました(笑)。

そして、声もいいし、ガタイのいいイケメンがフランスの皇太子を
演じていて、これ誰?と思っていら溝端淳平君でした。ごめんなさい。
溝端君って、にこやかな人っていう印象だったので、怒ったり
ニヒルな顔を見るのが新鮮でした。
プライドが高いだけの、調子にのったバカ王子っぽくする事も
出来るんでしょうが、それだけではない無骨さもありましたね。
でも、終盤のシーンで包帯だらけで車椅子に座って無表情のまま、
包帯をしていない右手でテニスボールを弄んでいて、それが
皇太子の無念を表しつつ、これからのイギリスとフランスの関係を
予言しているようでもあり、忘れられないシーンになりました。

横田栄司さん、新国立のほうにも、こちらにも両方ともご出演です。
新国立版ではフルエリンを演じて笑わせてくれていましたけど
今回はフランス国王。どちらも問題なく演じられてて、さすがです。
威厳はあるけど、どこか頼りなさも感じるような優しい王でした。

こちらのフルエリンは河内大和さん。やっぱり「さしすせそ」を
「しゃしぃしゅしぇしょ」にするのは同じなのね(笑)。
でも河内さんもさすが!です。

つい先日「ジャージー・ボーイズ」で観たばかりの中河内雅貴さんも
ピストル役でご出演でした。ご本人としてはミュージカルでも古典
作品は、チャレンジだったらしいですが、良かったと思います。
ミュージカル仲間が観に来ない・・ってツイートしてたけど(笑)
観る観客側だけじゃなく、演じる側にもミュージカルとストプレって
何か垣根があるのね・・なんて思っちゃいました。

戦闘シーンも凄かったですね。誰だったか忘れてしまいましたが
取材記事で「今回は殺陣が新感線よりもすごい」ってコメントして
いたのを覚えています。でもねー、実際に観たけど、それは違うと思うの。
新感線の殺陣って、私はある意味ダンスと同じという感覚。
(だから何度斬られても死なないし、あんな斬り方で死ぬ?っていう
立ち回りもある)
さい芸の殺陣はそうじゃなくて、結構ガチな感じで、役者さんたちの
全力感も凄い。ヘンリー五世がフランスの伝令官がヘンリー五世に
「勝利は貴殿のものです」と言った時の安堵感と言ったらない。
汗だくの役者さんがへたり込む様もリアルですし、比べる対象が
違うでしょ、と思うんですよね。

新国立の「ヘンリー五世」も面白かったのですが、こちらも
負けず劣らず面白かった。どちらかというと、さい芸の方が
より分かりやすく、エンタメ性が高かった感じがします。
出演者皆さんのセリフがとにかく聞き取りやすかったのも良かった。
聖クリスピアンの演説がばっさりカットされてて「うおお」と思ったり
キャサリンの英語を勉強するシーンもほぼ無くなっていたり・・と
シェイクスピア好きには残念な所もありましたが、そうではない
人から見ると、長々とした演説シーンや、英語・フランス語の違い
がベースになっているエピソードを日本語で観る事って、難しいと
感じるかもしれませんから、良し悪しは別として、商業演劇としては
アリなのかもしれません。
またネギに関するやり取りも、ギャグみたいになっていましたからね。
(舞台上は飛び散ったネギの破片で大変な事になってましたが)
ちなみに新国立では「ニラ」と訳されていたけど、松岡版では
「ネギ」だったんですね。(ポロねぎ、リーキの事だと思いますが)

さい芸は次が「ヘンリー八世」、新国立が「ヘンリー二世」って事ですか。
どちらも楽しみです。
このシリーズもあと3本ですもんね、最後まで見届けないと。