この作品は上演期間が他の観たい作品と重ならず、ここ最近
古川健さんの作品は(恐らく)皆勤賞で追いかけ続けていた私ですが
さすがに無理だな、と諦めていたところでした。
地方公演を期待したのですが、13か所も行くのに名古屋は無いという・・。

芸人と兵隊「芸人と兵隊」東京芸術劇場シアターウェスト A列
14:00 開演  15:55 終演
作:古川健   演出:日澤雄介
出演:柴田理恵、村井國夫、カゴシマジロー、盒桐硫、向井康起、滝沢花野
【あらすじ】
日中戦争中に戦地に派遣された慰問団「わらわし隊」。昭和16年春。あるベテラン夫婦漫才師が、中国大陸への慰問の旅に出る。芸人を続けるには、戦争に協力するしか方法がなかったのだ。夫婦や芸人仲間たちは前線近くまで旅を続ける。兵士に笑いを届けることで、再び芸人としての喜びを感じていた。そんな旅も終わりに近付いたある日、慰問団は遂に戦闘に巻き込まれる......。



正直言うと、あまり強く惹かれる事も無かったんですよね。
以前同じトム・プロジェクトで上演した、古川&日澤コンビの舞台
Sing a Song」と何が違うの?って言う感じで。
(あちらも戦地慰問の歌手の話。こちらは戦地慰問の芸人の話)
戦地慰問とか、ちょっとテーマ的に苦手なんですよね。
祖父が戦争で亡くなってますし、そんな祖父の話や戦時中の話を
祖母から何度も聞かされて育っていますから。

なので、割とすぐに「今回は諦めるか」と思っていたのですが
「世界は一人」とマチソワ出来ることを知り、敗者復活で
観劇することになったのでした。







舞台があくとそこには夫婦漫才のコンビが居て、漫才のシーンから。
夫婦漫才は花畑良子(柴田理恵)と桂銀作(村井國夫)の二人です。
私は「お笑い」に興味がない(と言うか何が面白いのか分からない
事が多い)ので、この漫才が面白いのか、そうでもないのか・・
については、正直よく分かりません。
ただ花畑良子のキャラは良くも悪くも私のもつ柴田理恵さんの
イメージそのまんまです。(ただ何度も噛んでましたねぇ。)
雑な所もあるけど豪快で、オープンな性格で、人情家。
ちょっと甘ったれた話し方については、ちょっとねぇ・・でしたが。

元々は噺家だった桂銀作は、40歳を超えた時、エンタツ・アチャコに
刺激を受けて、新橋界隈で「やたら喋りの上手い芸者」として有名だった
良子をスカウトし、夫婦漫才を始めたちょっと変わった経歴を持つ男。
弟子の前では厳しい師匠だったりするけど、奥さんの前では結構
可愛い所もあったりする。
銀作と良子は舞台を降りても夫婦だったんですね。
村井さんはもっとカッコイイ役も出来る方だと思いますが、
いい塩梅に強さと頑固さ、同時に弱さ、哀しさを演じていらっしゃって
そこはもう、さすが、って言う感じです。

「戦地にいる兵隊さんを笑わそう」と気合が入って、そういう人
向けのネタばかり作っても、なかなか満足のいく反応が得られない。
対して誰もが知っている定番の噺を中心に語る柳谷亀鶴(高橋洋介)
は兵隊に大変受けている。
たまたま良子が「夕立」(日本でもやっていたネタ)をやろう、
と言い出したことをきっかけに、「自分たちが何を話したいか」
ではなく「聞いた人が何を求めているか」という視点が無かった
という事に気が付く一行。

その中で、亀鶴がなぜ慰問を続けているのか(天才的な噺家だった
弟子が戦地で亡くなり、肺が悪かったために兵役を逃れたため
生き残ってしまった自分に罪悪感を感じていた)が分かり、
慰問一団は団結していったその矢先・・・敵の襲来で、いつもは
荷台に乗っていたのに、たまたま助手席に座っていた良子が
亡くなってしまう、という悲運に見舞われてしまう。

骨壺を机に置き、無言のまま骨壺を見つめる銀作に対して、
夫婦漫才はできないと思い、慰問先では落語だけにしようとしていた
所で「漫才をやる」と言い出す銀作。
その後ろでは(亡くなった)良子がずーっと見守ってるんですよね
その様子をニコニコしながら。

まあ、なんてベタベタな展開なんでしょう(笑)。

そういうベタベタな展開は醒めてしまう事もあるんですが(何と
いっても私は天邪鬼ですから(笑))
今回は、なんか泣けてしまいました・・・。何でだろう。
村井さんが上手かった、って事かなぁ。

帰国後、銀作の家で皆が集まったとき、こっそり自分に届いた赤紙を
銀作に渡す弟子の左近。それを隠したままの会食の場。
第二次世界大戦の開戦の予感が漂っている世の中。
「戦争が憎い」
「戦争は人間を殺すんだ。二度と笑う事を出来なくするんだ」
「戦争して誰が得をするというんだ」
と語気を荒げる銀作の発言を諌める弟子たち。
「俺は大陸まで兵隊さんのために笑いを届けに行った。
 女房は戦死した。それでも俺は非国民なのか?
 戦争をするお偉方はバカばっかりだ。
 銃を持って殺し合うより、笑い合う事のほうが素晴らしい。
 そんな事も分からないなんて、バカだ」
と続ける銀作。

私は「笑い」に興味が薄いので、「そこまで笑いに全てを
注ぎ込むものか」という事に意外な思いをしたりもしたのですが
プロっていうのは、そういうモノかもしれませんね。
戦争の中で、色々なものが制約されていくことに対する反発や
作者側の想いが、この銀作のセリフに詰まってるんでしょうね。

実際に、お笑いの方が戦地慰問をする「わらわし隊」というものが
存在していたそうで、恐らくこの舞台はその「わらわし隊」が
モデルになっているんだろうな、と思われます。
実際に中国軍の攻撃を受け、漫才師である花園愛子という方が
命を落とした、という事実もあるそうで、良子のモデルになった
のではないかな、と推察されます。

私は戦争モノが嫌いという訳ではありませんが、戦地慰問とかの
話は正直言って苦手傾向ではあります。
戦地は当時の「お国の為に」死んでいくことを当たり前に強要している
場であり、その人たちを慰問する事でごまかしているというか、
そういう風潮を肯定している感じがして気持ち悪いんです。
(「兵隊さん」という表現も苦手。)
前にも書きましたが、会った事もない祖父は戦地で亡くなっていますので、
祖父もそういう場に居たのかな、と連想してしまうのも一因かもしれません。

古川さんの脚本は基本的に大好きですが、「Sing a Song」は上記のような
理由と、どうも話が薄っぺらくて、あまり好きになれず。
この作品も同じ匂いがして、同じ古川さんの作品でもすごく好き・・
と言うほどではありませんでした。
ただ、戦争という異常な状況下にあっても、家族を思う気持ちだったり
大切にしているもの(今回だと「お笑い」)について、きちんと
向き合っている感じが伝わってきたので、思ったよりも拒否感がなく
素直に観て、素直に泣けたのではないか、と思ったりもしました。