これはもともと観たいと思っており、できれば東京で他の舞台と
一緒に観たかったんですよね。この時期に平日で、かつ東海市の
公演ってキツい・・と思ったので。
ただ、東京公演は異常にチケットが取りづらいらしい、との事で
ラクにチケットが取れる地方公演に行くことにしたのでした。

チャイメリカ「チャイメリカ」東海市芸術劇場 7列
19:00 開演、 22:10 終演
脚本:ルーシー・カークウッド  演出:栗山民也
出演:田中圭、満島真之介、倉科カナ、眞島秀和、瀬戸さおり、池岡亮介、石橋徹郎、占部房子、八十川真由野、富山えり子、安藤瞳、阿岐之将一、田邉和歌子、金子由之、増子倭文江、大鷹明良
【あらすじ】
89年6月4日、民主化を求める学生を中心とした一般市民と中国政府が、天安門広場で衝突した。そこに居合わせた19歳のアメリカ人ジョーは、買い物袋を両手に下げた一人の男が戦車の前に立ちはだかる様子をカメラに収め、その写真は“戦車男=タンクマン”として世界に衝撃を与えることになった。それから23年後、中国人の旧友ヂァン・リンから、“タンクマン”にまつわる衝撃の事実を聞かされたジョーは、彼の軌跡を追い始める。



ルーシー・カークウッド&栗山民也のコンビは「チルドレン」
と同じ。「チルドレン」は残念ながら台風のせいで生の舞台は
観られなかったけど、映像でみて面白かったので楽しみに
しておりました。
しかし、いつもなら1列〜3列ぐらいが取れるのに、今回は7列目。
公演人気の高さが分かりますね、チケットもSOLD OUTでしたし。






この話が天安門事件について書かれているものだ、という事位は
知っていましたが、逆に言うとそれ位しか知りませんでした。

舞台はとうど天安門事件で戦車の前に立ちふさがる男性をある
新米ジャーナリストが撮影する・・というエピソードから始まります。
実際の写真はこちらから
この写真や映像であれば、私もリアルタイムで観ていました。
「ええっ、どうなっちゃうの、轢き殺したりしないよね」と思いながら
見つめていた事を今でもハッキリ覚えています。

必死にシャッターを押した写真が有名となり、ジャーナリストとして
足がかりを得たジョー(田中圭)。
でも、このジョーには俗物的な匂いがするというか、以前撮影した
タンクマンの写真のように、衝撃を与える写真が撮りたい、と
思っているフシはあるものの、そこの根底に何か強い信念がある・・
と言う風には感じられない。機内で「貴方は仕事をミッションではなく
キャリアと考えている」って初対面のテス(倉科カナ)に言われる
シーンがありますが、後から考えるととても言い得て妙。

そして、ジョーは中国に向かい、旧友のヂァン・リンと会う。
恐らく年齢は同じぐらいなんだけど、ジョーは心なしか上から目線。
タンクマンの話になると「お前に何が分かる」と声を荒げるリン。
ジョーは「タンクマンは生きている」と信じ、探し始める事になる。
それを見つけさえすれば、自分の陥っている迷路からは逃れられる
とでも信じているかのように・・・。

ただ、ジョーは本当の意味でヂァン・リンの友達だったんだろうか。
彼のうかつな行動でリンを危険に陥らせ、リンが電話をしてきても
自分の個人的な都合で電話に出ず、折り返しもしない。
自分が女の事よろしくやっている間に、リンが拷問を受けて
ボロボロになっている・・なんて想像も出来ないんだろうな。
自分が必至になっていれば、許されるとでも思ったのか、不法滞在の
花屋を経営していた夫妻もジョーのせいで逮捕されてしまう。
またリンが妊娠して・・と聞いたら、真っ先に「自分の子?」って
思わないかね?どんだけ自己中なんだこの男・・と(笑)。
まあ、私の中で田中圭=クズ男をやらせたらピカイチという
方程式が成り立っているのですが、今回もその例にもれず・・です(笑)。
でも悪人ではないんだよね、どちらかと言うと、いまどきの若者。
そして、ジャーナリストなのに意外と視野が狭いっていう・・ね。

事実は一つでしかない。
でも、どうやって見るか、どこから見るか・・によって見えてくる
景色は随分と変わってしまう。それはどちらも間違いではないのだけど。
ジョーはあの写真から「国の体制に抗議するヒーロー」の姿を想い
その想いに沿った事実を必死に探していく。
でも実際は、中国と言う国の思惑に利用されたりもする。
実際はそんな「抗議」をするために立っていた訳ではなく、持っていた
荷物も恋人の身に着けていた血だらけの形見の衣服だった。それが事実。
だからこそ、タンクマンをヒーローと語るジャンには、本当の事が
話せなかっただろうし、この人には理解してもらえない、という
想いもあっただろうな、と。

本当だったらそんな場所(天安門広場)に行く事を嫌がっていた恋人。
なのに、結局死ぬ事になってしまったのはその恋人であり、自分は
生き残っている。そんな罪悪感から血だらけの女性の姿が見えるのだろうし
自分の事をあまり考えていないような行動にも出てしまうのだろうな。

最後、リンの姿が写真の一部に同化したようなシーンは見事・・!
出来れば、もう一度観て、いろいろと確認したいところもある作品でした。
いやぁ、見応えありました!