のんびり劇場に行こうかな・・とも思ったのですが、どうしても
受けたい先生のレッスンがあったため、筋トレこなして、
ホットヨガのレッスンを受け、猛ダッシュで身支度を整え
御園座へGO!やはり地元公演はありがたいですね。

笑う男(御園座)「笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-」御園座 13列
12:30開演 15:20終演
原作:ヴィクトル・ユゴー   脚本:ロバート・ヨハンソン
演出:上田一豪   作曲:フランク・ワイルドホーン
出演:浦井健治、衛藤美彩、朝夏まなと、宮原浩暢、石川禅、山口祐一郎、他
【あらすじ】
17世紀のイギリスが舞台。コンプラチコスという人身売買集団に誘拐され口の両端を引き裂かれたグウィンプレン。幼い彼はある日コンプラチコスから吹雪の中一人捨てられる。そして赤ん坊であったデアと出会う...。その後、興行師ウルシュスと出会いウルシュスはグウィンプレンの奇形的な笑顔と盲人であったデアの話をもとに公演を創作し流浪劇団を立ち上げる。やがて時は経ち、グウィンプレンは青年へと成長すると欧州全域で最も有名な道化師となり、妹のように育ったデアと互いに愛情を抱くようになっていた。だがある日、グウィンプレンの前に肉親を名乗る裕福な者が現われる。自分の出生の秘密を知らされたことで平和であった3人の人生に新たな危機が迫る...。



日生劇場で一度観ていますが、推しの主演でもありますし
名古屋でも一度観ておきましょう、という事で。
キャスト表
本当なら日生劇場で観たときとは違うパターンで(デア役に関してね)
観たかったのですが、一緒に観に行った同僚・元同僚は家庭があり
この公演しかタイミングが合わなかったのです。
家庭もあり、普段あまり観劇に行かない人達ではありますが、
1名は以前から劇団四季を観ていた事があるし、もう1人は
演劇業界の仕事をしていた人なので、そこそこ詳しい人達ではあります。

すると、幕間にフライヤーを観た元同僚が「あああっ!」と言うので
「どした?」と聞いたところ、知り合いが出演していたそうで・・。
厳密には彼女が演劇関係の仕事をしていた時に、同じ団体に所属
していた人だったそうで、「そうかー、ミュージカルの世界に
行きたかったんだぁ」「辞めずに続けてたんだ、偉いなー」と。
世間は広いようで狭い(笑)。
 

入場すると正面にはビジュアルがど〜ん。御園座が用意したのかな?
ロビー狭いのに・・

この右側にはこんなものも。
ジャンボグウィンプレン
この正面に物販のテーブルがあって、正面から撮れないのですよ。
でもすごく大きい。このツイートを観る限り、2メートル以上ですね。

色紙
柱には一部のキャストの方が書かれた色紙もありました。左から
浦井君、夢咲さん、朝夏さん、宇月さんの順で。


今回は13列目で、オケピがあったので実質9列目。
だけど御園座は、客席の傾斜が緩いうえに、席も千鳥になっていない
ので、観にくいシーンも結構あって、それが残念。

前回は作品そのものについて書いたので、今回は登場人物および
キャストについて書きたいと思います。







まずはグウィンプレン(浦井健治)。
グウィンプレンに関しては最初の観劇時の感想でも書きましたが
天真爛漫な、好青年って言う感じですね。
「僕だって幸せになる権利がある」「僕なら抜け出せる」って
歌っていますが、それは今までの自分の辛い境遇の中で
思い続けていた事・・と言うのではなく、若い男の子だったら
誰でも思いそうな、根拠のない自信みたいなものに思えちゃう。
ウルシュスに対して「どうして立ち向かわないんだ」って
言うけど、これもありがちな親子喧嘩に見えちゃうのよね。
それが浦井君の演技に起因するものかどうかは分からないけど・・。
ウルシュスに「デアと結婚しろ」と言われて「僕はふさわしくない」
って言うけど、その言葉の真意も色々と考えてしまう。
自分の顔を分かったうえで、アプローチしてくる金持ちの美しい
女性が居たら、そりゃあクラっと来るでしょうよ、と思いますから。

ただ、とうとう最後までジョシアナ侯爵にキスは許さなかった
んだよねー。

浦井君の白い衣装はもう、ファンには眼福でしかなく(笑)。
一緒に観た同僚たちも「キラキラ感ハンパない」って言ってました。
殺陣も見応えがあったし、左手で衣装の裾を押さえながら
時にはマントのようになびかせながらの立ち回りも良かったな。
デアの頭をポンポンする所とか、萌えポイントも多かったし(笑)、
ストーリー的に難があっても(こらこら)、浦井君を愛でる、
という目的は十分に達せられた気がします。

この日は東京での観劇に続いてデア役は衛藤さん。
このデアという役は目が見えないので、いわゆる世俗とは無縁の
天使のような存在、という役どころですね。ビジュアルもその辺りが
分かりやすい造形です。真っ白のふんわりドレスにロングヘア・・。
グウィンプレンの想いがどこにあったのか・・はちょっと分かり
づらい反面、デアは一筋にグウィンプレンを想ってきたんだろうな
というのが良く伝わってきました。
途中、ウルシュスがグウィンプレンの声真似をして、デアに
グウィンプレンが逮捕された事を必死に隠そう、とするシーンが
ありますが、目の見えない人は他の人以上に聴覚に敏感なはずで
騙されるわけないじゃん!と突っ込みましたよ心の中で(笑)。
歌唱力に関しては、危惧していたほどではないのですが、やはり
ミュージカルで「上手い」と思えるには程遠く、デュエット
となるとやはり残念さが目立ってしまいます。
とはいえ、彼女の声量のなさ、自信の無さそうな立ち居振る舞いは
目が見えず、周りの庇護が無ければ生きていけない、心臓の
弱い女性、という役に説得力を持たせていたと思うので、
全体としてみると、悪くは無かったな・・と思いますね。

グウィンプレンとデアを引き取るウルシュスは山口祐一郎さん。
ウルシュスのセリフは同じことを繰り返すことが非常に多い。
「自分は泣いたことが無い」をやたら繰り返すし、デアの
「この子は人より心臓が弱い」アピールが凄い。
だから、「ああ、きっと泣き上戸になるんだろうな」とか
「どうせデアは心臓病で死ぬんじゃね?」と推測できちゃう(笑)。
(まんまとその通りになりましたけど)
あとは「この世は残酷だ」「自分以外は敵だ」もよく言ってたな。
でも自分の子供じゃないけど、本当にデアやグウィンプレンを
「わが子」として育てている、優しい父親になっていましたね。
中盤、もう照明が落ちているから客席から殆ど見えない状態の中なのに、
手を振り回しながら演技をしながら走って袖中に
消えていっていて、こういう細かい演技っていいなぁと思いました。

そしてジョシアナ侯爵を演じたのは朝夏まなとさん。
宝塚出身の方だという事は存じていますが、どういう人かについては
全く存じ上げませんでした。
このジョシアナ侯爵というのは、なかなか個性的なキャラですね。
女王の腹違いの妹。美貌も地位も財産もある。
だけど、そういう満たされた生活に不満を持っていて、常になにか
刺激的な事を求めている人。
グウィンプレンに惹かれたのも、自分にはないであろう不遇な経験、
顔に醜い傷があるという、抜け出せない現状を持つ男に魅力を
覚えたからであって、グウィンプレンと言う個人に惹かれた訳じゃない。
だからグウィンプレンがクランチャリー卿の嫡出子だと分かると
急激に興味を失ってしまうんですよね。
ただ、この一連の騒動を通して「自分で強く生きていくんだ」と
未来に目が向けられた唯一の人かもしれません。
おキレイですし、ボルドーの衣装がとにかくお似合いです。
気位の高い様子もむしろ魅力的に映るぐらい。
ウルシュスの劇団に行ったとき、全く振り返ることなく
(そこにフェドロが構えているのが当たり前だと言わんばかりに)
手袋を手渡し、フェドロの腕を椅子の肘掛のように使っている
様子の手慣れた様子が貴族感満載で素敵でした。
あと、グウィンプレンを見ている間に、みるみる表情が変わって
いくのが面白かったですね。

そして、原作からはかけ離れた人物設定にさせられてしまったのが
デヴィッド・ディリー・ムーア卿(宮原浩暢)。
この作品では「博打好きの女好き、借金まみれのバカ貴族」に
なっちゃってるんですよね。
※原作ではジェームス二世に可愛がられ(彼の母親が王の寵愛を
 受けていた)家も栄えている、バリバリのエリートらしい。
 グウィンプレンの父親であるクランチャリー卿はこのジェームス二世
 と対立し処刑され、その結果グウィンプレンが売り飛ばされていて
 デヴィッドが出世欲にかられて、密かに売り飛ばしたわけではない
仕方ない部分もあるとはいえ、単純な悪役という設定にしたことが
この作品が薄っぺらくしてしまった一因でもある気がするし、この
デヴィッド・ディリー・ムーア卿と言う役に魅力が無くなってしまった
要因でしょうね。
演じている宮原さんは「グランド・ホテル」で拝見した事があり
その時とてもいい印象があったので、楽しみにしていました。
このヘタレ男を熱演されていたとは思いますが、もっと歌が聴きごたえ
あった気がするんだけど・・・。東京藝大の声楽家で大学院まで出て
いらっしゃるんですけど、何だかあまり刺さらなかったのが残念。

恐らくこの作品の中で一番の要になるのが、フェドロ(石川禅)でしょう。
狂言回し的な役でもあるこの人、とうとう謎な人のままだった。
王宮にも、ジョシアナ侯爵の家にも、クランチャリー卿の屋敷にも
あちこち自由に出入りしていて、誰の家来なんだ?という事がよく
分からなくなったんですよね。
「王宮の使用人」とクレジットされてはいたんですが。

フェドロはグウィンプレンの出自(というかクランチャリー卿の
嫡出子の行方)について感づいていたからこそ、「瓶の開封官」を
志願したんだろうし、少なくともグウィンプレンを本来の地位に
据える事でデヴィットを追い出したかったんだとは思います。
でもそれは「正義感」からの行動とは思えない。
半笑いで「生まれ持ったの星には逆らえない」って言っているのは、
デヴィット卿が追い出されたことだけではなく、グウィンプレンが
いずれ飛び出していくであろう、という事も想定していたのかな。
(グウィンプレンが出ていった事に、全く焦っていないしね)
だとしたら、フェドロの目的は何だったんだろう。
ジョシアナがフェドロに「裏切り者!」と言ったけど、具体的には
何に対してなんだろうな・・と、思わずにはいられません。

あ、貴族院でフェドロがグウィンプレンに「会釈」を教えるシーン。
あそこ、浦井君が結構ふざけてるんですよね。
禅さんは「ああ、はいはい」と言ったり「もう、それでいいです」
と言ったり「はいはい、よく出来ました」と言ったり、日によって
セリフが違っていて、楽しかったですね。あの突き放したような
飽きれたような言い方も良かったです(笑)。

アンサンブルさんも歌のお上手な方が多かったな〜。
フィーヴィー(宇月楓)とヴィーナス(清水彩花)の二人は
本当にお上手でした。宇月さんは宝塚のご出身、清水さんは
レミゼでコゼットを経験している女優さんらしいです。
アン女王を演じた内田さんも凄い!と思っていたら、この方も
東京藝大の独唱科で修士まで修められた方なんだとか。
ちなみにこの女王は、最近公開された「女王陛下のお気に入り」
の中の女王と同一人物ですね。
デフォルメしてはいますが、アン女王の雰囲気をけっこう
ちゃんと捕えているような気がしました。
衣装も10キロ以上あるとかで、歩くのも結構大変だったでしょうね。

前回のエントリーでは結構ディスった内容を書きましたけど(笑)
2度観て理解出来たところもありますし、単純に楽しめました。
まあ、一緒に観た元同僚がエンディングで「えっ?」と
前回友人が見せたのと同じような反応だったのは笑えましたが(^_^;)。