遠征2本目は新国立劇場です。
この作品、豊橋公演もあるんですが、その事を知った時には既に
チケットの申し込みをしてしまっており(豊橋の情報公開が遅い&
新国立の会員先行なので、申し込みが早い)敢えて東京での
観劇となってしまいました。

かもめ「かもめ」新国立劇場 C1列(最前列)
作:アントン・チェーホフ  英語台本:トム・ストッパード
翻訳:小川絵梨子
出演:朝海ひかる、天宮良、伊勢佳世、伊東沙保、岡本あずさ、佐藤正宏、須賀貴匡、高田賢一、俵木藤汰、中島愛子、松井ショウキ、山秀樹、渡邊りょう

【あらすじ】
ソーリン家の湖畔に女優のアルカージナと愛人の小説家トリゴーリンが滞在している。アルカージナの息子トレープレフは恋人のニーナを主役にした芝居を上演するが、アルカージナは芝居の趣向を揶揄するばかり。トレープレフは憤慨しながら席を外すが、アルカージナはニーナをトリゴーリンに引き合わせる。 ニーナは、徐々にトリゴーリンに惹かれていき、モスクワへ戻ろうとするトリゴーリンに、自分もモスクワに出て、女優になる決心をしたと告げ、二人は長いキスを交わすのだった。 2年後、トレープレフは気鋭の作家として注目を集めるようになっている一方で、ニーナはトリゴーリンと一緒になったものの、やがて捨てられ、女優としても芽が出ず、今は地方を巡業している。トレープレフの前にニーナが現れるが、再び出て行くニーナ。 絶望のなかトレープレフは・・。



「かもめ」自体は何度か観た事があります。
凄く好きな脚本、という訳でもないのですが、何となく興味があり
チケットを取っておりました。




 
いやー、驚きましたね。
同じ作品なのに、ここまで雰囲気が違いますか!?と。
現代的というか、何というか・・。
恐らく、当時のロシアの雰囲気はあまり無いんじゃないかな。

どの作品にもキーになる登場人物が居ると思いますが、この「かもめ」
に関しては、そのポジションはトリゴーリンだと思っています。
今回のトリゴーリンはまた、今までにない造形で・・。
演じたのは須賀貴匡さん。今までに何度も拝見しているはずですが
殆ど記憶が無く(すみません)・・・。
でも今回私の記憶にバッチリ刷り込まれました(笑)。
何だろう、トリゴーリンって、成功した都会の男の人で、プライドも
自信もある、ちょっとズルい大人の男って言う感じで、そういう所に
ニーナは惹かれたんだ、って思っていたんですよね。でも今回の
トリゴーリンは、良くも悪くも「普通の人」。
人の評価が気になり、すごく弱い所があって、結局流されちゃう。
薄っぺらい男って言うのは同じなんだけど、ズルさがないという感じ。
決して誠実でもないんですよ、軽いだけ。そこが現代的なのかな。
今回は下手側の最前列だったのですが、途中で目の前に須賀さんが
屈みこむシーンがあったのですが、何て整ったお顔なんでしょうと
芝居とは関係のない所でドキドキしちゃいました(笑)。

あと、今回すごく気になったのは「みんな気が強く、自分の感情を
押さえきれずに表現する女性たち」と「流されてしまい、相手の気持ちを
優先したり、自分の感情を自分でもてあましている男たち」という
対比がクッキリしている、という事でしょうか。

その中でもマーシャ(伊勢佳世)は飛び抜けてましたね・・。
何ですか、あのハイテンションな感じは(笑)。
マーシャって、もう少し秘めた思いに耐える女・・というイメージが
あったのですが、コースチャが好き、という気持ちがダダ漏れで
今にもその想いが吹き出しそうなぐらい(噴出してたな)真っ直ぐで。
だからその気持ちを分かっているであろう、彼女の母親とか、旦那が
気の毒になってきてしまうほどでした。

アルカージナ(朝海ひかる)に関してもちょっとイメージが違う。
プライドが高いけど、それなりに母性のある女性という役どころだと
思っていたのですが、母性があまり感じられない。大女優感もイマイチ。
それが意図した所なのか、そうでないのかは分からないのですが
相手が誰であれ、何歳になっても自分の欲しいものは手に入れる、という
欲望を素直に表し、実行に移す人、という感じかな。
別れたいというトリゴーリンを翻意させた後、トリゴーリンに抱きつき
ガッツポーズをする・・というのが、この朝海さんのアルカージナを
象徴している場面というような気がしました。

ニーナに関しては、1幕は頭がお花畑っぽい子だけど、割と普通、という
感じがしました。もっとぶっ飛んだ子のイメージがあったので。
2幕ではさすがに能天気さは無くなっていたけど、そこまで
エキセントリックではなくて、何となく理解できるニーナでした。
それに対して、コースチャはインパクト弱かったと思う。
ニーナとコースチャがインパクト弱めなので、誰が主役なんだっけ?
と思う所もあったりしましたが、もしかしたらそれも狙いかも
しれません。

とてもスタンダードなんじゃないのかな?と思うのは以前ケラさんが
演出した「かもめ」で、私もこの演出が一番好きだったのですが、
同じ作品がこれだけ雰囲気が違っちゃう、という事が面白くて、
つい引き込まれて観てしまいました。
幕間でも「おもしろい〜」と言っている人が周りに多くて、また
何度も笑いが起きていたのが新鮮でした。
原作が好きな方からは、評価が良くなさそうな気もします。
私も、この演出が好きか?と言われると何とも言えないのですが、
これが古典作品を観る醍醐味だよね〜とも思うので、観に行って
良かったと思います。