遠征の3本目はこちらです。「奇跡の人」は2006年に最初に観劇。
すっかり気に入ってしまい、名古屋公演が無くなってからも、
遠征して観つづけておりました。なので、今回についても迷いなく
チケットGET。これで4回目になるのかな。

奇跡の人「奇跡の人」東京芸術劇場 プレイハウス K列
12:30開演、15:45終演
脚本:ウィリアム・ギブソン  演出:森新太郎
出演:高畑充希、鈴木梨央、江口のりこ、須賀健太、久保田磨希、青山勝、増子倭文江、原康義、益岡徹、他
【あらすじ】
アラバマのケラー家。アーサー・ケラー大尉(益岡徹)とその妻ケイト(江口のりこ)がベビー・ベッドを心配そうに覗き込んでいる。1歳半の娘ヘレン・ケラー(鈴木梨央)が熱を出したのだ。やっと熱が下がり安心したのも束の間、ヘレンは音にも光にも全く反応しなくなっていた……。
それから5年。ヘレンは見えない、聞こえない、しゃべれない世界を生きているが、甘やかされて育てられたヘレンは、わがまま放題で家族はどうすることもできない。そんな折、ボストン・パーキンス盲学校の生徒アニー・サリヴァン(高畑充希)の元に、ヘレンの家庭教師の話が舞い込んでくる。誰もがお手上げの仕事ではあったが、アニーは初めて得た仕事に果敢に挑戦しようとする。そして、アニーとヘレンの初対面の時。ヘレンはアニーに近づき、その全身を手で探る。それはふたりの闘いのはじまりだった……



2006年版:田畑智子×石原さとみ(鈴木裕美演出)
2009年版:鈴木杏×高畑充希(鈴木裕美演出)←高畑さん幼い!
2014年版:木南晴夏×高畑充希(森新太郎演出)
    (※アニー・サリバン×ヘレン・ケラーの順で記載)

過去2回連続でヘレンを演じていた高畑さんが、サリバン先生へ。
鈴木杏さんも、(私は観ていませんが)ヘレン役を演じた後に
サリバン先生を演じた事がありますので、役者さんの成長と共に
上演されている作品なんだな、と思います。
今回、小さなお子さんも、何名もご覧になっていたようです。
(お子さんには時間を区切った3幕ものって、いいと思う)



 



今回は前回に引き続き、森新太郎さん演出によるもの。
セットも、2014年版を踏襲している感じでした。
ケラー家で飼われている犬がパペットなのも、森演出ならでは。
(鈴木裕美さんが演出の頃はリアルな犬が出演してましたよね)
本当にこのパペットの動きが素晴らしくて、観ていると、亡くなった
自宅のゴールデンレトリバーを思い出してしまいます。
カーテンコールで並んでいる間のしっぽの動きも絶妙で(笑)。
リアルな犬が出てくると、犬好きにはたまらないのですが、予測不能の
動きをするため、どうしても犬に意識が向いちゃうので、パペットの方が
良いのかも、とも思います。

脚本も演出も基本的は前回と変わっていないと思います。
ある意味、ストレートで分かりやすい鈴木裕美演出は最初の盲学校で
アニーが出発するシーンで泣けちゃったのですが、森演出はそこでは
全く泣けない。
「ずっと一緒に居て」と言っていた弟の希望を叶えられなかった、という
トラウマをアニーが乗り越える、というテーマもあって、何というか
抽象的な所もあるのが、少し大人向き。
セットの内・外の使い方、1階・2階の使い分け方も前と同じですが
上手いなぁ・・と思わずにはいられません。
なので変わったのは、役者さんが変わったことによる雰囲気の違い、かな。

まず、タイトルロールでもあるアニー・サリバンを演じたのは
高畑充希さん。(「奇跡の人」はヘレンを表すのではなく、
サリバン先生を表しているんですよね。原題は「The Miracle Worker」)
今まで観たアニーの中で、一番個性を感じたかもしれません。
それが良いか悪いかは別として。
ただ、私たちは勝手に「サリバン先生」に教育者としての理想像を
求めている所がある気がするのですが、この高畑さんのアニーって
とてもリアルな気がします。
貧しく、貧窮院の劣悪な環境で唯一の肉親である弟を亡くす経験をし
自分も失明同然だったという経験を買われ(?)ケラー家に行く事に
なっても、まだ21歳。教育者としての経験も殆ど無い中、一人で
アラバマまで行かなければならない。頼る人も無く、もしうまく
行かなくても、戻る場所もない。

そんな中、いきなり動物みたいな、自分に懐かない子供を「愛せ」
と言われたって、そんなの無理と思いますもん。
ケラー家の人達に突っ張ってないと、負けちゃいそうになるでしょうし。
初めて観たときからこの作品は、ヘレンだけでなく、ケラー家全員
そしてサリバン先生の成長の物語だと思って観ていましたけど、
今回は特にサリバン先生の成長・・という所を実感できた作品でした。

あと、特に印象に残っているのが、須賀健太さん演じる、ヘレンの
腹違いのお兄さん。この子が痛々しくてね・・。歴代のジェイムズの中で
一番幼く感じたんですが、だからこそ自分に振り向いてほしくてつい
憎まれ口を叩いてしまったり、義母に「友達になって」と言ったり・・
というのが痛々しくて。そういう痛々しさの後に「父さんは間違ってる!」
と全身で吐き出す姿が印象的でした。

ヘレンのお母さん役は江口のりこさん。ご自身も母親になって
思う所があったのかしら・・なんて思いながら観ておりました。
もともと、とてもお上手な女優さんですが、弱いけど、優しくヘレンを
包み込む母親・・というイメージが無くて、また事前にキャストを確認せずに
行ったので「ええっ」と思っちゃいました。
勿論お上手なんですが、ただ彼女のニンでは無いなぁ・・というのは
正直な気持ちです。話し方がね、どうもアンニュイなのですよね・・。
静かな意思の強さは、良かったと思いますが。

そうそう、ヘレン役は鈴木梨央さん。初舞台だそうですね。
舞台にお出になっていないと、私は全く存じ上げない方になって
しまうのですが、本当に10歳ぐらいの子供に見えました。
カーテンコールではもっと大人っぽく見えたのですが、実際は14歳とか。
どうしても前回の高畑さんのヘレンが素晴らしかったので、
クライマックスの井戸のシーンは、期待過多になってしまったのですが
決して悪く無かったです。地頭のいい悪魔って感じだったかな(笑)。
色んな事、実は分かってて大人たちを困らせている・・という雰囲気。
カーテンコールでおどおどしている感じが、初舞台なんだなぁ・・と
いう感じでした。

定番だけど、やっぱり好きなんですよね、この舞台(笑)。
次に上演されても、きっとまた観に行くと思います(^-^;。