繁忙期も終わって、久しぶりの平日からの東京遠征です。
平日はコスト重視で夜行高速バスにて上京、朝風呂でシャキっとして
朝ごはんを食べたりしてから日生劇場へ向かいます。

笑う男「笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-」御園座 13列
13:00開演 15:50終演
原作:ヴィクトル・ユゴー   脚本:ロバート・ヨハンソン
演出:上田一豪   作曲:フランク・ワイルドホーン
出演:浦井健治、衛藤美彩、朝夏まなと、宮原浩暢、石川禅、山口祐一郎、他
【あらすじ】
17世紀のイギリスが舞台。コンプラチコスという人身売買集団に誘拐され口の両端を引き裂かれたグウィンプレン。幼い彼はある日コンプラチコスから吹雪の中一人捨てられる。そして赤ん坊であったデアと出会う...。その後、興行師ウルシュスと出会いウルシュスはグウィンプレンの奇形的な笑顔と盲人であったデアの話をもとに公演を創作し流浪劇団を立ち上げる。やがて時は経ち、グウィンプレンは青年へと成長すると欧州全域で最も有名な道化師となり、妹のように育ったデアと互いに愛情を抱くようになっていた。だがある日、グウィンプレンの前に肉親を名乗る裕福な者が現われる。自分の出生の秘密を知らされたことで平和であった3人の人生に新たな危機が迫る...。



ミュージカル好きのお友達からも「今年期待の1本らしい」
と言う話を聞いていたので、楽しみにしておりました。

ダブルキャストは衛藤美彩さん。私は初めて聞くお名前ですが
どこかの坂道にいらっしゃった方のようです。
キャスト

このエントリー、一度書き上げたのですが、うっかりと
別エントリーに上書きしてしまい、内容を消してしまいました。
GW中に頑張って書いたのに・・・(涙)。
思い出しつつ書き直しますが、もう当時と同じ気持ちでは
書けないのが残念です・・(今の時点でもう更に2度観ているので)

ここでは、全体の印象について書きたいと思います。




舞台の最後のシーンが終わった瞬間、一緒に観ていた友人が
隣の席で思わず吹いてました。私は吹き出しこそしませんでしたが
何だかなー・・と言う気持ち。
浦井君が主演のミュージカルって、なんかこういう気持ちになる事が
多いのは気のせいかしら。ミュージカルに詳しい方が観るとまた
違う感想になるのかなぁ・・。何せ私はミュージカルは弱いので(笑)。

レミゼを書いたヴィクトル・ユゴー原作で韓国でミュージカル化され
それが輸入されたのがこの作品と言うことですが、「こんな内容だから
日本で翻訳されて出版もされないんだよ」と悪態のひとつもつきたい
気持ちになりました。その後調べてみると2012年に映画化されており
(日本未公開/WOWOWでは放送済)この作品はその時の映画が下敷きに
なっているようです。
「バッドマン」に登場するジョーカーは、この笑う男をヒントに生まれた
という逸話もあるんだとか。まあバッドマン観ていないんで、この事
に関しては何とも感想が書けないのですが(爆)。

更に調べてみると、原作は長編小説で、歴史や宗教と絡めた作品に
なっているようで、そういった背景の部分を全部取っ払って
尺に合わせて分かりやすく、シンプルにしていったのがこの作品、
という感じのようです。
原作をご存知の方が書かれた説明を読んで、腑に落ちる点多数。
でも、それらの要素を排除してしまったが故に、話の展開が性急
に感じたり、つじつまを合わせるために登場人物の設定を単純化
してしまって、作品が軽くなってしまったんですね。

まず、なぜコンプラチコ(このコンプラチコという存在はユゴーの
オリジナル)が追われて、出航したのか・・。その辺りが全く
描かれていないのでオープニングから「ん?」となります。
※コンプラチコは全員カトリックなんだそうで、同じくカトリック
 であったジェームス二世と利権的な繋がりがあったものの、
 ジェームス二世が王座を追われ、その後に即位したプロテスタントの
 メアリー2世に国外追放に処せられた、と言う背景があるんだそうです。

凄く残忍な事をするマフィア集団かと思ったら、身なりもちゃんと
しているなぁ、と思ったのは、こういう上流階級の人達との交流も
あったから、という事なのかもしれません。

ウルシュス(山口祐一郎)と出会い、デアと共に引き取られた
グウィンプレンは、15年後にはその「醜い顔」を売り物にして
生計を立ててます。だからグウィンプレンは25歳前後って事でしょうか。
うん、37歳が演じても違和感ないぞ(笑)。
この一座はまるで「グレーテスト・ショウマン」ばりの見世物を
やっているのですが、目玉はデアとグウィンプレンの成長物語。
演劇としては影絵の使い方、雪を模した布の使い方などは
面白いと思いますが、これ・・・お金が取れるような演目か(笑)?
泣けるわけでも、おぞましい訳でもないし。
なので、ここの説得力はイマイチ・・かな。
そもそも私の席では、浦井君の口が裂けているようには見えないし
「醜い顔」って言うけど、醜くないもん(笑)。
ただ、「踊り熊」のアクロバットとかは単純に「すごい〜」って
観入っちゃいましたけどね。

この作品がイマイチ引っかかる所が無いままで終わったのは
フォーカスする部分が甘かったからじゃないかな、と思ったりもします。
「ー金持ちの楽園は貧乏人の地獄によって造られるー」という
フレーズから、貧富の差だったり、庶民の無力さという所をもっと
描くことも出来たと思うけど、あのラストでしょ?
じゃあ、恋愛にフォーカスするかと言うと「あれ、グウィンプレンって
デアの事をいつから恋愛対象として見ていたっけ?」という所が
いまいちハッキリしない。

顔を割かれて、笑われる事で生きてきた・・という悲惨さを描くには
グウィンプレンは天真爛漫すぎる。もっと卑屈になってもいい
生い立ちだと思うのに、ザ・好青年!だから悲壮感がねぇ・・。
これは浦井君が演じたからそうなっちゃったのか(可能性はある(笑))、
演出プランなのかは分かりませんが、冷静に考えると、ウルシュスの
一座のみんなも本当に天真爛漫で卑屈な所が全く無いんですよね・・。
(このグウィンプレンでは、バッドマンのジョーカーは生まれ
 なかったのでは?なんて思ったりします)
だから全体のアップダウンが少なく感じたっていうのかな。

浦井ファンとしては目がになるのは、2幕でクランチャリー卿として
真っ白な紳士の扮装をして衝立から出てきた瞬間(笑)。
今回は今までの姿勢の悪さも気にならず、あまりのキラキラぶりに
目を奪われてしまった私ですが、これも冷静に考えたら、貴族として
育っていないのに、いきなりあんな貴族オーラ出していいのか?と。
まあ、ここに関しては、生まれながらの血がそうさせたんだ・・と
思う事にしておきますが(笑)。

あとは、あのラストですよ(笑)。
「切ない・・」という事で好きな方も居るかもしれないんですが
私は自ら命を絶つっていうのは、基本的に好きな展開ではないんです。
ましてや、グウィンプレンが死んだと思って悲しんでいた育ての親を
(生還して)うれし泣きさせた直後に、ですよ。
「(グウィンプレンが死んだと思っていたので)二人とも連れて
行かないでください」って祈っていた、そんなウルシュスを置いて・・・
って気の毒すぎませんか?と思ってしまう。
もし、グウィンプレンがカトリックだったら、あんた達二人、死後の
世界で一緒にはなれませんが、分かってる?と突っ込みたかったね(笑)。

こうやって書いてると、どんだけ嫌いなんだ、って思われそうですが
舞台として楽しめ無かった訳ではないんです。
まず「ザ・ミュージカル」っていう豪華な雰囲気が堪能できます。
前田文子さんの衣装は本当に豪華で、素敵で、見ているだけでも
うっとりしてしまう。
布感も素敵ですが、キラキラがライトに映えて、美しかった。
セットも素敵だし、紗幕を使った演出もいいな・・と思いましたよ。
映像も思ったより多用されていましたが、あまり嫌悪感を感じるような
事もありませんでした。

そして、全体の楽曲も素敵なものが多かったです。
私は浦井君のロングトーンが好きなので、それが堪能できたのも
嬉しかったな、と思い出しております。
ハイライトライブ版のCDが発売されると聞いて、すぐに予約したよね(笑)。

「ユゴーの作品」と思って観るとちょっと・・だけど、
(そう考えるとレミゼはよく出来てると思う)おとぎ話のような
お話だ、と思って観るとちょうどいい作品だった気がします。


改めて書き直したら、最初に書いたものとずいぶん違う感じに
なっちゃったな・・と思いますが、もう最初の記事も残っていないので
仕方ないです(涙)。これからは気をつけなくちゃ。

名古屋でももう2度観ていますので、個々の俳優さんについては
そちらのエントリーで書きたいと思います!